成分輸血が広く行われているのはなぜ?|成分輸血のメリット
『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は成分輸血のメリットに関するQ&Aです。
江口正信
公立福生病院診療部部長
現在では必要に応じて各成分を輸血する成分輸血が広く行われているのはなぜ?
成分輸血では全血輸血に比べ輸血量が少なく、これによって輸血される患者の心臓にかかる負担の軽減と副作用を防ぐためです。
〈目次〉
輸血とは
輸血は、健康な他人の血液から調製された血液製剤を点滴投与します。外傷事故や手術に伴う大量出血や、骨髄機能が低下した血液疾患などのときに用いられます。
現在は使用目的に応じ、血球成分からなる成分輸血が広く使われています。
また、感染症のリクスから、あらかじめ輸血の必要性が予測される場合は自分の新鮮血を使用する自己血輸血を用いる場合もあります。
自己血輸血について
外科手術で輸血を必要とする出血が予測され、手術までの時間がある場合は、自分の血液を採血して保存しておく方法がとられます。それを自己血輸血とよんでおり、安全な輸血と考えられています。
しかし、貧血のある状態や菌血症の可能性のある細菌感染者などの場合は、自己血輸血はできません。
輸血時の同意書
輸血を施行する場合、医師は患者さんや家族へ目的および輸血に伴うリスクについて説明をします。その際に、必ず「血液製剤使用時の説明と同意書」をとります。輸血開始直後の急性の副作用や遅発性に起こるPT-GVHD(輸血後移植片対宿主病)のリスクがあるからです。
成分輸血のメリット
以前は血液の全成分を輸血する全血輸血が行われていましたが、現在では、患者さんが必要としている成分だけを輸血する成分輸血が広く行われています(表1)。
成分輸血では全血輸血に比べ、輸血される患者(受血者)の心臓にかかる負担を軽減することができます。またPT-GVHD(輸血後移植片対宿主病)などの副作用を防ぐことができます。
さらに献血された血液を遠心分離することによって、赤血球、血小板および血漿に分けた成分輸血製剤が作成されるので、これを使用することによって、1人の献血者からの血液を複数の患者(受血者)への輸血に用いることが可能となります。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
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[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版