点滴静脈内注射の注入速度は決まっているの?

 

『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は点滴静脈内注射に関するQ&Aです。

 

江口正信
公立福生病院診療部部長

 

点滴静脈内注射の注入速度は決まっているの?

 

通常、大人では約2mL/kg/時間が薬液注入速度の基本値とされています。

 

〈目次〉

 

点滴静脈内注射の注入速度は

点滴静脈内注射の注入速度は、症例によって異なることはもちろんですが、一般的には大人で約2mL/kg/時間程度が標準値とされています。

 

静脈内与薬セットはmL当たりの特定滴下数を放出するようにつくられています。これを滴下係数とよび、セットの包装に記載されています(1mLあたり20滴、1mLあたり60滴)。

 

1分間の滴下数

1mL=20滴の場合の1分間の滴下数

 

 → 1mLの滴下数(20滴)×指示総量(mL)÷指定時間(時間)×60(分)

 

1mL=60滴の場合の1分間の滴下数

 

 → 1mLの滴下数(60滴)×指示総量(mL)÷指定時間(時間)×60(分)

 

注入速度による身体への影響は

先に述べた標準値は1つの目安であり、たとえば出血性ショックなどで循環血液量が減少している場合は、急速な注入が必要となります。

 

そのほか注入速度は注入量とも関係があり、注入速度が速すぎると、注入量が多すぎるときと同様の症状、尿量の増加、動悸が起こります。呼吸・循環系への負荷が進むと、呼吸困難、浮腫、血圧低下などの心不全状態に陥ることがあります。

 

また、反対に遅すぎると、必要量に達するまで口渇尿量減少発熱意識レベルの低下などの脱水症状が起こることもあります。

 

滴下速度が変化したときは

点滴静脈内注射の際に、滴下速度が変化したときは、次のような原因が考えられます。

 

  1. 滴下が速すぎる場合
    ①患者がクランプを動かした、②静脈針と輸液チューブの接続が外れている、③患者の体位変化や血圧の変化、④針先位置が一定していない。
  2. 滴下が遅すぎる場合
    ①静脈の攣縮(穿刺刺激など)や閉塞、②輸液残量の減少、③輸液ボトルと患者の静脈確保部との高低差が少ない、④血圧の上昇。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版

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