薬物の服用時間は食前、食間、食後、時間ごとなどいろいろあるのはなぜ?

『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は薬物の服用時間に関するQ&Aです。

 

江口正信
公立福生病院診療部部長

 

薬物の服用時間は食前、食間、食後、時間ごとなどいろいろあるのはなぜ?

 

(口から飲んだ)薬物の、腸での吸収の善し悪しを考え、有効な血中薬物濃度を保ち、薬の効き過ぎや、逆に効かなかったりするのを防ぐためです。

 

〈目次〉

 

服用時間による薬の効果の違いは

口から飲んだ薬物は、胃や腸で吸収されますが、胃の中に食物がたまっている状態と逆に空腹状態とでは、同じ薬でも吸収のされ方が異なります。

 

血中薬物濃度が一定でないと、結果として、薬の効果も異なってきます。つまり薬の効き過ぎによる副作用の発生や、逆に有効な結果を得ることができなくなります。

 

「アドヒアランスが良好」とは?

医師より病気に対する説明を受け、患者自身が自分の病気を受け入れ、薬のことも理解してきちんと飲んでいると病気の経過もよくなります。そのことをアドヒアランスが良好であるといいます。

 

医療者との関係性が悪かったり、薬も自分で飲んだり止めたりしていると、病気の経過も悪くなります。

 

最近では、薬剤師からもどのような処方をされているか、どんな作用や副作用に注意するのかなどの説明がなされます。

 

薬剤師は外来・入院の場面を問わず、介入しています。薬の剤形が飲みにくさと関係している場合なども、主治医と連携をとり、剤形の変更をすることでアドヒアランスを高める介入をしています。また、他の医療機関との処方の重複を防ぐためにも、「お薬手帳」が活用されています。

 

入院中で自己管理が難しい患者の場合は、看護師が管理します。しかし、退院が近づいてくるにつれ、自己管理が必要になってきます。その際には、服用時間がわかるような「配薬(内服)ボックス」などを利用して自己管理ができるように支援します(図1)。

 

図1さまざまな配薬(内服)ボックス

 

また、痛み止めに関しては、個人の生活スタイルに合わせた使用方法が必要となります。いつの時間帯の使用が効果的なのかについても患者さんと話し合うようにしましょう。

 

1日3回服用の薬とは

一般に1日3回服用とある薬は、食後30分以内に飲むようになっています。

 

これは胃に内容物がない状態で薬を飲むと、薬の刺激によって胃粘膜が障害を受け、胃炎あるいはびらん、潰瘍といった病変を生ずる可能性が高くなるからです。

 

時間服用の薬とは

逆に、時間ごとに服用(たとえば6時間おきに服用)と指定された薬でも、自宅で療養しているような特別重症でない患者では、真夜中に無理して薬を飲む必要はなく、数時間のずれであれば、あまり問題にはなりません。

 

要は有効な血中薬物濃度の範囲を越えたり、逆にそれ以下になったりしないように、薬の飲み方を自分の生活リズムのなかに取り入れられればよいわけです。毎食後服用というのは、飲み忘れを防ぐ意味でも合理的な薬の飲み方といえるようです。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版

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