鉄剤服用前後1時間は、お茶を飲んではいけないのですか?
『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は鉄剤服用に関するQ&Aです。
江口正信
公立福生病院診療部部長
鉄剤服用前後1時間は、お茶を飲んではいけないのですか?
鉄剤をお茶で服用しても大丈夫です。
〈目次〉
お茶を飲んでよい時間は
以前は、お茶に含まれるタンニン酸が鉄と結合して沈殿してしまい、鉄吸収が障害され、造血作用が減じてしまうため、鉄剤服用前後1時間はお茶を飲んではいけないとされていました。
お茶に含まれるタンニン酸による鉄吸収の障害作用はありますが、現在では鉄剤内の鉄の量が通常吸収される鉄の量に比べてはるかに多いことと、鉄欠乏性審決では、腸管からの鉄の吸収が亢進していることなどから、鉄剤をお茶で飲んでもあまり影響はありません。
水またはぬるま湯と飲むのは
薬を服用するときは、水またはぬるま湯と一緒に飲むのがよいとされ、とくに水の量もできるだけ多いほうがよいといわれています。これは、食後30分以内に服用する薬が多いのと同じ原理で、薬の刺激による胃粘膜の障害を防止する役目があるということです。
また、食道を通過するときに、違和感を感じるといった多分に精神的な意味での防止と、現実に食道の通過をよくして、食道粘膜障害を防ぐ意味もあるからです。
薬物服用時は
薬物服用時には、水またはぬるま湯と一緒に飲むのがよいわけですが、実際には、苦い薬を飲むときや、小児で薬の服用を嫌がるときは薄めのジュースなどと飲んでも、大きな問題はないようです。
ただし、水以外の成分が薬の変質を起こしたり、相互作用を起こす可能性があることも、一応頭に入れておく必要があります。とくにアルコールは薬の効果を極度に強めたり、減じたりすることがありますので、服薬後のアルコール摂取はやめるべきです。
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版