聴診器の使い方|基礎編(2)
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聴診器を使用する際のコツや、疾患ごとの聴診音のポイントについて、呼吸器内科専門医が解説します。
構成は、聴診器の使い方から呼吸器の構造を解説した【基礎編】と、疾患の解説と筆者が臨床で遭遇した症例の聴診音を解説した【実践編】の2部に分かれています。基礎編は全8回にまとめましたので、初学者はまずはここからスタートしてください。
[前回の内容]
第2回目は、「聴診器の使い方」についてのお話です。
皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授)
聴診器を耳に装着する正しい手順や方法は知っていますか?
イヤーチップを耳に入れて、患者さんの音を聴いたら良いだけじゃないんですか?
うぅ~~~ん。聴診器を耳に装着する時は、ちゃんと耳管部を両手で持たないと故障の原因になりますよ。
すみません。いつもドタバタしてて、ついつい片手で持ったりしてました。
器具は大事に扱いましょうね。
ここでは、聴診器の扱い方をしっかりと覚えましょう。
〈目次〉
聴診器の装着方法
チェストピースの目安は恥骨の辺り
聴診器を装着する際、聴診器には適切な長さがあります。ドクター用の聴診器は、耳にイヤーチップを装着した際に、チェストピースがへその高さにくる長さに設定されている場合が多いです。
一方、ナース用の聴診器はドクター用よりもチューブ部分が長く、耳にイヤーチップを装着した際に、チェストピースが恥骨の辺りまでくる長さに設定されている場合が多いです(図1)。これは、血圧の測定時など、患者さんとの距離を保ちやすくするため、ドクター用より少し長く作られているんです。
図1聴診器の長さ
チューブ部分が長いため、聴診中に、自分自身や患者さんにチューブ部分が接触しないように気をつけましょう。チューブ部分が接触していることに気づかず聴診をしてしまうと、雑音が入ったり、正確な音が聴こえなくなってしまいます。
装着時は必ず両手で持つ
聴診器を装着する際は、必ず両手で耳管部を持ちましょう。片手で持ったりすると、耳管部が曲がってしまったり、壊れる原因になります。聴診器は両手で持つということを、しっかりと覚えておきましょう。
聴診器を装着する順序は、図2のように行います。
図2聴診器の装着手順
聴診器は上から下へ、左右対称に当てる
聴診を行う際は、聴診したい位置に聴診器を一定の力で密着させるように当てます。
聴診器を当てる位置は、頸部から順番に聴取し、尾側に下がっていくことが基本です。この際、前胸部と背部では左右対称に行いましょう。基本的に、頭側から4段階の高さ(合計8箇所ずつ)に分けて聴くことがポイントです(図3)。
呼吸音を聴診する場合は、左肺と右肺の音を比較して、聴き比べながら行うことが基本です。
図3聴診器を当てる位置と順番
チェストピースは手で温めておく
急に聴診器を患者さんの皮膚に当てると、チェストピースが冷たくて、患者さんが不快な思いを抱く可能性があります。そのため、聴診器を当てる前に、必ずチェストピースの部分を手などで温めて、「これから聴診をします」と声をかけることが重要です。
- 聴診器の適切な長さは、聴診器を耳に装着した際、ナース用はチェストピースが恥骨の辺りにくる長さ、ドクター用はへそ付近の長さというように異なる。
- 聴診器を装着する際には、真上から見て「ハ」の字になるように、必ず両手で持つ。
- まずは頸部から音を聴き、尾側へ移動していく。その際、必ず左右対称に聴いて音を比較する。
- 患者さんに聴診器を当てる際には、事前にチェストピース部分を温めておく。
[次回]
[執筆者]
皿谷 健
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授
[監 修](50音順)
喜舎場朝雄
沖縄県立中部病院呼吸器内科部長
工藤翔二
公益財団法人結核予防会理事長、日本医科大学名誉教授、肺音(呼吸音)研究会会長
滝澤 始
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科教授
Illustration:田中博志