聴診器の仕組み|基礎編(1)
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聴診器を使用する際のコツや、疾患ごとの聴診音のポイントについて、呼吸器内科専門医が解説します。
構成は、聴診器の使い方から呼吸器の構造を解説した【基礎編】と、疾患の解説と筆者が臨床で遭遇した症例の聴診音を解説した【実践編】の2部に分かれています。基礎編は全8回にまとめましたので、初学者はまずはここからスタートしてください。
第1回目は、「聴診器の仕組み」についてのお話です。
皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授)
普段、外来や病棟で患者さんに聴診器を使っていると思うけど、聴診器はちゃんと使いこなせていますか?
はい。聴診って、音を聴けば良いだけだから簡単ですよね。
聴診器を使っていると、医療従事者って実感が湧きます。
とんでもない! 聴診はバイタルサインを確認する上でとても大切だし、聴診で気付く病気もあるぐらい重要な医療行為なんですよ。
え! そんなに大事なことだったんですか!?
学校ではあんまり習わないからわからないかもね。
でも、臨床現場ではとても大切なことだから、一人前の看護師になるためには、ちゃんとマスターして欲しいですね。
まずは、聴診器の基本的な仕組みから見ていきましょう。
〈目次〉
- 聴診器の構造
- ・聴診器は3つの部分からできている
- ・チェストピースにはベル型と膜型がある
- 聴診器の面の使い分け方
- ・呼吸音の聴診では膜型を使用する
- ・心音の聴診では膜型とベル型を使い分ける
- Check Point
聴診器の構造
聴診器は3つの部分からできている
聴診器は、患者さんの体内で発生する音を聴いて診察や、患者さんの状態を把握するための医療器具です。聴診器の構造は、チェストピース、チューブ(導管)、耳管部の3つの部分からできています(図1)。チューブが「太く」「硬い」もののほうが、雑音が入らず、呼吸音が伝わりやすくなります。
図1一般的な聴診器の構造
チェストピースにはベル型と膜型がある
チェストピースの形状には、ベル型(ベル面)と膜型(ダイヤフラム面)の2種類があり(図2、図3)、形も全く違います。
図2チェストピースの形状の比較
図3チェストピースの内部構造
ベル型の面では低音を、膜型の面では高音を聴取します。それぞれの面で聴取できる音が異なるため、聴取したい音に合わせて、使用する聴診器の面を選択しましょう。
聴診器の面の使い分け方
聴診器にはベル型と膜型の面がありますが、聴診したい部位によって使用する面を使い分ける必要があります。
呼吸音の聴診では膜型を使用する
呼吸音には正常音と異常音(ラ音)がありますが、呼吸音を聴診する場合は、聴診器の膜型を使用します。高齢で痩せている患者さんには、チェストピースが大きすぎて胸壁にフィットしない場合がありますが、その場合には小児用の小さな聴診器を使用すると良いでしょう。
心音の聴診では膜型とベル型を使い分ける
心音を聴診する場合は、聴診器の膜型でⅠ音とII音を、ベル型で低調性雑音の過剰心音(III音、IV音)を聴取します。呼吸音の聴診では膜型しか使用しませんでしたが、心音の場合は膜型、ベル型ともに使用します。
memo技術的に進歩した電子聴診器
聴診器には、一般的な聴診器のほかに、電子聴診器と呼ばれるものもあります(図4)。なお、聴診の行い方は、聴診器が異なっても同じです。
図4筆者が使用している電子聴診器
機種によっては、液晶の表示があったり、BluetoothTMでパソコンとリアルタイムで聴診音のデータ通信が可能なものもあります。また、パソコン上で、聴診音を録音・保存・再生などもできます。
- 聴診器は体内の音を聴くための医療器具で、チェストピース、チューブ、耳管部の3つからできている。
- 呼吸音を聴く際は、膜型のみを使用する。
- 心音を聴く際は、Ⅰ音とⅡ音は膜型で、過剰心音(Ⅲ音・Ⅳ音など)はベル型を使用する。
[次回]
[執筆者]
皿谷 健
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授
[監 修](50音順)
喜舎場朝雄
沖縄県立中部病院呼吸器内科部長
工藤翔二
公益財団法人結核予防会理事長、日本医科大学名誉教授、肺音(呼吸音)研究会会長
滝澤 始
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科教授
Illustration:田中博志
Photo:kuma*
協力:翼工業株式会社