呼吸音の分析に役立つ聴診アプリ
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聴診器を使用する際のコツや、疾患ごとの聴診音のポイントについて、呼吸器内科専門医が解説している『聴診スキル講座』ですが、ここでちょっと一息。
ここでは、本編とは別に、聴診に関する豆知識やグッズを紹介します。
コラムの第1話は、「呼吸音の分析に役立つ聴診アプリ」の紹介です。
『聴診スキル講座』では、本アプリを使用して聴診音を解説しています。眼と耳をフル活用して、聴診スキルのトレーニングをしてください。
皿谷 健
(杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授)
〈目次〉
聴診器とスマートフォン端末を接続
図1は、株式会社JVCケンウッドが開発している『呼吸音分析アプリ(仮)』(2016年6月現在)(1)をインストールしたスマートフォン端末(タブレット端末)を、聴診器にセットしたものです。
図1呼吸音分析アプリのセッティング方法
これは、筆者が使用しているものですが、教育用聴診器(二人用)の片方のチューブ部分を切り落とし、専用の部品でチューブとチェストピースを接続し、市販されているマイク端子を挿入しています。
大きな3つの特徴
本アプリの主な特徴は、3つあります。
呼吸音が録音できる
聴診をする際、録音ボタンを押すと、聴診音を録音することができます(図2)。また、録音した呼吸音は繰り返し聴けるため、患者さんの病態や治療の経過を比較することができます。
図2アプリ画面(録音モード)
副雑音を自動で検出し、表示する
断続性ラ音や連続性ラ音などの副雑音を自動で検出することができます。さらに、実際に聴こえた音の特徴が一目でわかるように、グラフで表示されます(図3)。
図3アプリ画面(聴診結果)
グラフの見方
グラフの横軸は、時間(秒)を表しています。
ピンク色の波形は笛音やいびき音などの連続性ラ音が聴こえた場合に、緑色の波形は水泡音や捻髪音などの断続性ラ音が聴こえた場合に表示されます。
なお、グラフの縦軸は、連続性ラ音(ピンク色)では音の高さを、断続性ラ音(緑色)では音の大きさを表しています。
メール送信機能で聴診所見を共有できる
聴診した呼吸音の音声ファイルと、分析結果の画像ファイルを、指定したアドレスへ送信することができます。
在宅や遠隔医療で聴診音を共有
このように、聴診のスキルアップのために役立つ、とても実用的なアプリです。将来的には、在宅医療や遠隔医療などで聴診音を共有できるシステムの構築を目指していますが、現時点(2016年6月)では、開発段階のため、スマートフォン用のアプリとしてはまだ販売されていません。
アプリが販売されると、市販の教育用聴診器にマイクを埋め込むと利用することができます。チューブを切って、マイク端子を挿入するなど、聴診器に手を加える必要がある点が、ハードルが高く感じられるかもしれません。将来的にはより利用しやすく改善されると思います。
本アプリは、耳だけでなく、視覚的に副雑音を判別できることが大きなポイントです。
現在、このアプリは開発中のため、心音や腹部の音については未対応ですが、今後の改良に期待大です。
『聴診スキル講座』の実践編では、本アプリを使って聴診音を解説しています。
[執筆者]
皿谷 健
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科臨床教授
[監 修](50音順)
喜舎場朝雄
沖縄県立中部病院呼吸器内科部長
工藤翔二
公益財団法人結核予防会理事長、日本医科大学名誉教授、肺音(呼吸音)研究会会長
滝澤 始
杏林大学医学部付属病院呼吸器内科教授
協力:株式会社JVCケンウッド