激しい運動後などは、呼吸が速く、深くなるのはなぜ?
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『根拠から学ぶ基礎看護技術』より転載。
今回は呼吸運動の調節に関するQ&Aです。
江口正信
公立福生病院診療部部長
〈目次〉
呼吸を増加させる因子は
安静時の体内酸素消費量は1分間に約300mLですが、運動時にはその10倍以上になります。運動初期には呼吸中枢が強く刺激されないために、他の組織から動員された酸素が補うことになります(酸素負債)。
しかし、筋運動が強くなり、酸素消費量が増加すると、他の組織からの酸素動員が追いつかず、血液中の酸素濃度が低下します。また、筋肉中の乳酸が分解され、血液のpHが増加し、間接的に呼吸中枢を刺激することになります。
そのほか、筋および関節からの神経反射や、体温上昇による呼気からの熱放散の上昇なども呼吸数を増加する因子となります。
これらの呼吸中枢刺激により、呼吸数が増加し、また呼吸の深さも増大します。
呼吸運動の調節は
呼吸運動の調節を簡単に説明します。
中枢性化学性調節
呼吸運動の調節は中枢を流れる血液の温度、成分によって影響され、血液の温度上昇、二酸化炭素の増加、pHの減少によって中枢が興奮し、呼吸運動が促進されますが、中枢は二酸化炭素に対する感受性が最も強いと考えられます(図1参照)。
末梢性化学性調節
頚動脈球など、血液中の二酸化炭素の増加および酸素の減少に対して感受性を有する化学受容体による呼吸運動の調節(図1参照)。
肺迷走神経反射〔へーリング・ブロイアー(Hering Breuer)反射〕
肺には伸展あるいは収縮によって興奮する2種の張力受容器があります。1つは、肺がある程度伸展すると興奮する受容器であり、ここからの刺激が呼吸中枢に伝えられると、吸息中枢の興奮を中止させて呼息を起こさせます。もう1つは、肺が安静吸息時よりも2倍以上拡容したとき、および過度に収縮したときに興奮する受容器で、ここからの刺激は吸息中枢の興奮性を高めるように働きます。
頚動脈洞および大動脈弓反射
頚動脈洞および大動脈弓には血圧に対する圧受容体があります。血圧が上昇すると呼吸運動は抑制され、下降すると呼吸運動は促進されますが、生理的範囲の血圧変動では効果は少なく、主として循環系の調節を行なっています。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 根拠から学ぶ基礎看護技術』 (編著)江口正信/2015年3月刊行/ サイオ出版