発熱|体温とその調節
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、発熱について解説します。
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
〈目次〉
Summary
- 1. 発熱は、発熱物質の作用でセットポイントが正常体温より高くなることに起因する。
- 2. 発熱初期の悪寒は、現象として運動初期の酸素不足と似ている。
- 3. 回復期の発汗は、現象として運動終了後の酸素負債と似ている。
発熱の起因
発熱(fever、pyrexia)は、発熱物質(pyrogen)の作用でセットポイントが正常体温より高くなることに起因する。
図1のように体温調節のセットポイントが上昇したときに実際の核心温はすぐには追随できないので時間遅れが生じる。これは運動初期に、その運動に必要な酸素消費量(oxygen consumption)に実際の酸素摂取量 (oxygen uptake)が追いつかないため、酸素不足(oxygen deficiency)が生じる現象に似ている。
図1“熱負債”と酸素負債の比較
酸素不足は解糖系(glycolysis)などの嫌気的(anaerobic)ATP産生系によりO2不足を補う。発熱の場合も視床下部(hypothalamus)で設定されたセットポイントまで実際の体温を上げるために皮膚血管収縮で熱放散を抑制し、ふるえで熱産生を亢進させる。これが風邪の引きはじめに経験する悪寒(chill)である。
熱型
発熱は、日内あるいは日間の変動のパターンにより熱型に分類される。発熱を伴う疾患のなかには、次のような特有の熱型を示すものがある。
①弛張熱(remittent fever)
最高体温および最低体温の日内差(日差)が1°C以上あり、最低体温も37°C以上の発熱。敗血症(sepsis)や結核 (tuberculosi)の末期でみられる。
②持続(稽留)熱(continued fever)
体温が38°Cを超える値で持続して、日差は1°C未満の発熱。腸チフス(typhoid fever)の極期に認められることが多い。
③周期熱(periodict fever)
無熱期と有熱期が一定の間隔をおいて規則的な周期で現れる発熱。代表的な疾患としてマラリア(malaria)がある。
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発熱物質が除去されると、体温調節のセットポイントが正常値まで下がる。このとき実際の体温は急に下がるわけではないので、皮膚血管拡張で熱放散を亢進させたり、発汗が起こる。汗をかくと風邪が治るとよくいわれるが、実際には風邪が治って、体温調節のセットポイントが正常に戻り、実際の体温をそこまで下げるために汗をかくのである。すなわち、風邪が治ったから汗をかくのである。
※編集部注※
当記事は、2016年11月20日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
[次回]
高熱|体温とその調節
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『図解ワンポイント 生理学 第2版』 (著者)片野由美、内田勝雄/2024年7月刊行/ サイオ出版