下垂体前葉ホルモン|内分泌
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
今回は、下垂体前葉ホルモンについて解説します。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
〈目次〉
下垂体前葉ホルモン
下垂体前葉ホルモンには、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、性腺刺激ホルモン(FSH、LH)、成長ホルモン(GH)およびプロラクチン(PRL)の5つがある。これらのなかでTSH、ACTH、FSHおよびLHは刺激ホルモンであり、直接的な生理作用は示さない。
これらは内分泌腺(甲状腺、副腎皮質、卵巣、精巣)を刺激して、それぞれ甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン、卵巣ホルモン、精巣ホルモンを分泌させる。GHおよびPRLは、刺激ホルモンではなく、それ自身が生理作用を発揮する最終的なホルモンである。このようなホルモンを効果器ホルモン effector hormone という。GHはソマトトロピン somatotropin ともよばれる。
ホルモンの名称
刺激ホルモンの語尾の tropin は、 trop + in の合成語である。 trop は、ギリシャ語の trope を語源とし、「・・・を向くもの」という意味がある。 in は、ラテン語で「促進させる物質」の語尾に付く(例えば、 insulin)。ホルモンには in で終わる語が多いが、これらみな促進させる物質という意味をもつ( on で終わる語は、逆に抑制する物質という意味がある)。
adrenocorticotropic hormone (ACTH)の語源は、ギリシャ語でadが近くの、reno が腎臓、cortico が皮質を意味する。gonado は、ギリシャ語で性腺の意味である。proは、ギリシャ語で「・・・に賛成」という意味がある。lact は乳、 in は促進させる物質の意味なので prolactin は、乳汁の射出を促進させる物質である。
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版