腎臓の基本的機能|尿の生成と排泄
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、腎臓の基本的機能について解説します。
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
Summary
- 1. 糸球体では生体にとって要不要の別なく、濾過できるものは濾過する。
- 2. 生体に必要なものは尿細管で再吸収する。
- 3. 生体に不要なものは尿細管の周囲毛細血管から尿細管に分泌する。
〈目次〉
腎臓の基本的機能
尿の生成に関する腎臓の基本的機能は、以下の3点に要約される(図1)。
1)糸球体での濾過(filtration)
2)尿細管での再吸収(reabsorption)
3)尿細管への分泌 (secretion)
図1尿の生成の基本的機能
糸球体ではサイズ・バリア(size barrier)およびチャージ・バリア(charge barrier)をクリアする(すなわち、分子量約70,000以下でマイナス電荷をもたない)物質ならば、生体にとって要不要の別なく濾過する。そして必要なものならば尿細管で再吸収する。また、不要なものならば尿細管の周囲毛細血管から尿細管に分泌する。
原尿とは
糸球体で血漿を濾過してできる糸球体濾液(glomerular filtrate)を原尿という。
原尿は1日あたり約150Lつくられるが、そのうちの99%は尿細管で再吸収を受け、尿として排泄されるのは1%程度である。したがって、1日の尿量は約1.5Lである。糸球体の単位時間あたりの濾過量(mL/分)を糸球体濾過値(glomerular filtration rate、GFR)という。GFR は、濾過はされるが再吸収も分泌もされないイヌリンなどの物質のクリアランス(clearance)として測定される(「クリアランス」参照)。
不可避的尿量とは
体内で生じた不必要な水溶性代謝産物を尿中に排泄するために必要な最小限の尿量を不可避的尿量(obligatory urine volume)という。健康成人で1日約400mLである。
このとき、尿は最大限に濃縮されており、尿の浸透圧は 1,200mOsm/kgH2Oにまで達する。尿量が400mL以下のときを乏尿という。
Nursing Eye無尿、乏尿、多尿
1日の尿量が50~100mLのときを無尿(anuria)、400mL以下のときを乏尿(oliguria)、2,000mL以上のときを多尿(polyuria)という。
糸球体で濾過した原尿の99%を再吸収するというのはいかにも効率が悪い。しかし、これは濾過の段階で要不要の選別をしていたら、迅速に不要(有害)な物質を排泄できなくなるからである。
※編集部注※
当記事は、2016年12月9日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
[次回]
クリアランス|尿の生成と排泄
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『図解ワンポイント 生理学 第2版』 (著者)片野由美、内田勝雄/2024年7月刊行/ サイオ出版