最大努力呼出曲線と閉塞性肺疾患・拘束性肺疾患|呼吸
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、最大努力呼出曲線と閉塞性肺疾患・拘束性肺疾患について解説します。
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
Summary
- 1. 最大吸気からできるだけ速く、できるだけ大きく呼出したときの換気量を、時間に対してグラフ化したものが最大努力呼出曲線で、ティフノー(Tiffeneau)曲線ともよばれる。
- 2. 最大努力呼出曲線の測定は呼吸器臨床検査の最も基本的なもので、この測定から1秒率、%肺活量などが分かる。
〈目次〉
スパイロメトリー
最大吸気位から努力呼出曲線を測定する検査をスパイロメトリー(spirometry)という。
使用する機器をスパイロメーター(spirometer)というが、最近は水を使わない電子スパイロメーターが一般的である。電子スパイロメーターでは、フロー・ボリューム曲線(flow-volume curve)も自動的に得られる。
最大吸気時の肺容量をV0とし、呼出によって肺内の容量が指数的に減少すると想定したときの時刻tにおける肺容量V(t)は、V(t)=V0〔1-exp(-t/RC)〕のように表される*(図1)。
図1最大努力呼出曲線(ティフノー曲線)
RCは時定数なので、RまたはCの増大によりV(t)の変化は緩やかになる(呼出に時間がかかる)。
*exp
exp(-t/RC)=e(-t/RC)
1秒率と閉塞性肺疾患
最大吸気から呼出を開始して1秒間に呼出した量(FEV1.0)が、呼出全量(努力性肺活量 forced vital capacity、FVC)の何%にあたるかを示した値を1秒率〔ratio of forced expiratoryvolume (1 second) to forced vital capacity〕といい、1秒率 = (FEV1.0/FVC)×100(%)で表される。70%以上を正常とする。
呼出曲線は指数関数に近似しているとみなせるので、1秒率は時定数RCを用いて、1秒率 =〔1 - exp(-1 /RC)×100%と表せる。RおよびCの基準値〔それぞれ1.5(cmH2O/L)・s および0.2 L/cmH2O〕を使って計算すると1秒率の値が約96%となる。
時定数RCが大きいほど1秒率は小さくなる。喘息(asthma)、慢性気管支炎(chronic bronchitis)などではRが大きくなり、肺気腫(pulmonary emphysema)ではCが大きくなる。これらの疾患は、閉塞性肺疾患 (obstructive lung disease)とよばれる(図2)。
図2閉塞性肺疾患の例(肺気腫)
慢性気管支炎および肺気腫は、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease、COPD)とよばれる。
%肺活量と拘束性肺疾患
実測のFVCが予測肺活量の何%にあたるかを示した値を%肺活量(%vital capacity)といい、%肺活量=(FVC/ 予測肺活量)×100(%)で表される。80%以上を正常とする。
予測肺活量は、身長および年齢から下記のように計算される。
男性:VC(mL)=〔27.63-(0.112×年齢)〕×身長(cm)
女性:VC(mL)=〔21.78-(0.101×年齢)〕×身長(cm)
ここで、年齢は歳、身長はcmで、VCはmLで与えられる。VCが年齢とともに減少するのは大きく呼出するための内肋間筋の収縮力が衰えるためであり、身長が高いほどVCが大きいのは胸腔の容積が大きくなるからである。
間質性肺炎(interstitial pneumonia)では線維性結合組織の増殖が起こり、肺組織の硬化と萎縮をきたすので%肺活量が低下する。間質性肺炎のような疾患を拘束性肺疾患(restrictivelung disease)という(図3)。
図3拘束性肺疾患の例(間質性肺炎)
NursingEye
間質性肺炎が進行すると、肺線維症(pulmonary fibrosis)とよばれる病態になる。肺線維症や肺がんでは、ばち状指がみられることがある。
※編集部注※
当記事は、2016年9月4日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
[次回]
⇒この〔連載記事一覧〕を見る
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版