房室ブロックの特徴

看護師のための心電図の解説書『モニター心電図なんて恐くない』より。

 

[前回の内容]

高度房室ブロック

 

今回は、房室ブロックの特徴について解説します。

 

田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長

 

〈目次〉

 

房室ブロックの特徴

房室関係は男女関係に似てなくもありません。心房と心室のカップルと思ってください。

 

1度房室ブロックは心が少し離れていますが、定期的なデートは欠かしません。

 

2度房室ブロックは、2回以上続けてデートしてくれますが、たまにすっぽかされるもので、これには2種類あります。2度房室ブロックの1つウェンケバッハ型は徐々につれなくなって、数回に1回はデートをすっぽかされます。次にはリフレッシュして関係が回復しますが、また同じことの繰り返しです。

 

もう1つのモビッツⅡ型は、いままでアツアツだと思っていても、なんの前触れもなくデートをすっぽかされます。

 

完全房室ブロックは、会ってもくれません。

 

高度房室ブロックは、2回以上続けてデートしてくれませんが、2日に1回、3日に1回とごくたまにデートしてくれる関係です。

 

この関係のなかで危険なのはどれでしょう。

 

1度房室ブロックはまだ大丈夫です。ウェンケバッハ型もだんだん離れていくのがわかるので、心の準備もできます。

 

モビッツⅡ型と高度房室ブロックは危険です。別れのとき(完全房室ブロック)が近づいています。もう(モビッツ)(advanced:高度)かん(完全)、“もうあかん”と覚えましょう。

 

表1房室ブロックの特徴

房室ブロックの特徴

 

房室ブロックの原因

房室間の伝導経路の異常により発生します。1度房室ブロックおよび2度房室ブロック(ウェンケバッハ型)は、自律神経などの生理的な状態でも起こりえますが、“もうあかん”のモビッツⅡ型以上のブロックは、すべて病的と理解してください。

 

1度およびウェンケバッハ型は房室内の問題で、モビッツⅡ型以上の“もうあかん”は、ヒス束以下の障害です。主な原因を次に列挙します。

 

  • 生理的(1度とウェンケバッハ型)→睡眠時や若年者によく見られる・薬剤の影響→ジギタリスなどの房室伝導を抑制するもの
  • 電解質異常→とくに高カリウム血症
  • 心筋梗塞など虚血による房室伝導路の障害
  • 加齢や全身疾患(サルコイドーシスなど)に伴う房室伝導路の変性
  • 原因不明の場合もある

 

房室ブロックの対処

1度房室ブロックおよび2度房室ブロック(ウェンケバッハ型)は、生理的な場合が多いので、あわてる必要はありません。

 

モビッツⅡ型以上の“もうあかん”の場合は、徐脈や心停止をきたすこともあります。補充収縮が安定していないときは、緊急で体外式ペースメーカーを挿入することがありますので、すぐに医師に報告します。

 

心臓が不安定な患者さん”はどうするんでしたっけ。

 

そう、「オーツー、ライン、モニター」ですね。報告とともに準備しましょう。もしも処置中に、心肺停止や、患者さんの意識がなくなってしまったら、どうします。

 

そうです。心肺停止の一次ABCDサーベイですよ。意識確認。反応がなければ三種の神器(応援・救急カート・除細動器)、そしてA・B・Cでモニターを確認して、VF(心室細動)かVT(心室頻拍)(この場合は意識がないですから無脈性のはずです)ならば、D:除細動の適応です。

 

最後に房室ブロックの復習を表2にまとめておきます。

 

表2房室ブロックの分類

房室ブロックの分類

 

一目瞭然ですが、2度房室ブロックのウェンケバッハ型とモビッツⅡ型の間に決定的で本質的な差があります。モビッツⅡ型より重大な房室ブロックは、なんらかの病的な障害をもっています。

 

 

[次回]

副伝導路|PQ間隔が短い心電図

 

⇒〔モニター心電図なんて恐くない〕記事一覧を見る

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 モニター心電図なんて恐くない』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版

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