上室性期外収縮の出現の仕方による分類|洞性P波から読み解く不整脈(7)
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[前回の内容]
今回は、上室性期外収縮についての3回目、上室性期外収縮の出現の仕方による分類について解説します。
田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長
〈目次〉
上室性期外収縮の出現の仕方による分類
図1の心電図を見ましょう。
1・2拍は、洞性P波で、PP間隔は20コマ(0.04×20=0.8秒)です。つまり洞周期0.8秒ですね。PQ間隔、QRS波の幅も問題ありません。
その後、3個目のP波から形の違うP波が洞周期より早いタイミングで6個連続して見られます。正体は上室性期外収縮の連続です。
心室には最初のP′波は伝導、2個目のP′波は非伝導、3拍目は延長して伝導していてQRS波の出現前に心電図では次のP′波が見られます。このQRS波直前の4個目のP′波は非伝導、5個目のP′波も非伝導、6個目のP′波は伝導していますね。
つまり、1、2、6個目のP′波が心室に伝導していてその他は房室結節の不応期で伝導されていません。
このように、上室性期外収縮が連続して出現する場合を“連発”といいます。
2連続なら2連発、3連続は3連発です。3連発以上の連続出現をショートランということもあります。この場合は6連発で、上室性期外収縮のショートランともいいます。
では、図2の心電図はいかがでしょうか。
上向きのP波が洞性P波ですね。洞性P波が連続しているところがないので、洞周期はわかりませんが、2、4、6拍目のP波は形が違うので、上室性期外収縮ですね。
このように洞調律と上室性期外収縮が交互にみられ、繰り返す場合を2段脈といいます。洞調律が2拍続いた後、上室性期外収縮、その後同様に洞調律2連続後に上室性期外収縮のというサイクルを繰り返す場合は3段脈です。
では、洞調律3連続後に上室性期外収縮、というセットを繰り返す場合は、そう4段脈ですね。
上室性期外収縮の出現の原因と対処
まず理解していただきたいのは、健康な状態でも上室性期外収縮は見られるということです。健康体でも24時間心電図を記録すれば、いくらかの上室性期外収縮はありますし、連発や段脈が見られることだってあります。
基本的には上室性期外収縮自体は治療の対象になりませんが、電解質異常や心疾患などの上室性期外収縮の背景があればその因子を治療します。ただし、症状が強い場合は薬剤を用いて上室性期外収縮を抑制する場合もあります。
次に、上室性の不整脈の究極は心房筋の痙攣つまり心房細動であるということです。心房は電位が出なくなる“停止”という状態には通常なりませんが、心房細動はよく見られる不整脈です(詳細は後述します)。
心房細動になると、血栓予防を含め対応が必要です。心房細動の発症メカニズムはまだはっきりしていませんが、上室性期外収縮がその引き金であることは間違いありません。
連発や頻度の増加があって、心房細動になる恐れがある場合は、背景疾患に対する治療とともに、抗不整脈薬を用いて上室性期外収縮を抑え込もうとすることもあります。いずれにしても、いままでなかった上室性期外収縮が出現した、あるいは増加した場合や、連発を繰り返す場合は、心房細動に移行する前触れかもしれませんので報告が必要です。
上室性期外収縮の出現の仕方による分類のまとめ
- 期外収縮が連続して出現する場合を連発といい、3連発以上をショートランということがある。
- 洞調律と期外収縮が交互に出現する場合を2段脈、洞調律2連続の後に期外収縮というサイクルを繰り返す場合を3段脈、洞調律3連続後、4拍目に期外収縮が入るパターンを繰り返すものを4段脈という。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 モニター心電図なんて恐くない』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版