異所性調律|異所性調律から読み解く心電図(1)
【大好評】看護roo!オンラインセミナー
看護師のための心電図の解説書『モニター心電図なんて恐くない』より。
[前回の内容]
今回は、異所性調律について解説します。
田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長
〈目次〉
異所性調律
図1の心電図はいかがですか。
全体に規則正しいようですね。では、P波を探してください。Ⅰ誘導では陽性P波ですが、Ⅱ誘導、aVFでは下向きのP波ですね。Ⅱ誘導は右上から左下、aVFは下向きのベクトルをプラスに描出しますので、この心房興奮はそれとは逆、つまり左下から右上、下から上に興奮が向かっていることになりますね。洞結節は心房の右上にあって、そこから出た信号は左下方向に伝導しますので、この心房興奮は洞結節からの信号ではないといえます。PP間隔は約20コマ(0.04×20=0.8秒)、心拍数に直すと1500÷20=75回/分で正常です。
PQ間隔、QRS幅とも問題なくP波以外は正常です。このように洞結節以外の部位で調律される場合を異所性調律(ectopic rhythm)といいます。洞結節以外の調律をすべてまとめて“異所性”とよびますが、多いものは、冠静脈洞調律(coronary sinus rhythm)です。これは右心房の内側下方にある心臓の静脈が右心房に流れ込む冠静脈洞付近の調律です。心房は上から下、右から左に興奮が伝導するので、Ⅰ誘導で陽性、Ⅱ誘導、Ⅲ誘導、aVFでは陰性のP波となります(図2)。
発生学的に、もともとは洞結節になる可能性のあった心筋細胞が冠静脈洞付近にあるといわれていて、ときに洞結節の自動能を超えてペースメーカーの役割をするといわれています。他にも左心房調律や接合部調律などがあります。
***
「日本列島新聞配達物語」に例えると、洞結節宗谷岬よりもリーダーシップの強い心房北海道内(たとえば冠静脈洞新聞社)が、毎朝新聞を発行しています。房室接合部トンネル、心室本州は、新聞さえもらえば通常どおり配達します。
***
洞結節以外の部位からの調律でも、身体の生理的な要求に反応して心拍数が増減するならば、とくに処置は不要ですし、何かの拍子に洞調律に戻るかもしれません。
異所性調律の対処
どんな原因であれ、150回/分以上の頻脈は報告しましょう。
異所性調律のまとめ
- 洞調律以外の調律を異所性調律という。
[次回]
⇒〔「モニター心電図なんて恐くない」〕記事一覧を見る
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 モニター心電図なんて恐くない』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版