洞性徐脈|洞性P波から読み解く不整脈(3)
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看護師のための心電図の解説書『モニター心電図なんて恐くない』より。
[前回の内容]
今回は、洞性徐脈について解説します。
田中喜美夫
田中循環器内科クリニック院長
〈目次〉
洞性徐脈とは
図1の心電図をざっとチェックしてみましょう。
波形の数が少ないですね。P波は陽性で規則正しく、洞性のものですね。PP間隔はどうですか。32コマで、30コマよりも長くなっていてこれは異常です。
心房心拍数は、1500÷32=47回/分、50未満ですから徐脈ですね。PQ間隔は5コマ以内、QRS幅も3コマ以内ですね。PQ間隔が一定なので心房心拍数=心拍数で、47回/分の徐脈です。
この徐脈は、PP間隔の延長によるもので、規則正しく洞性P波の出現頻度が減っていることから、洞結節の信号発生頻度の減少が本質です。これを洞性徐脈(sinus bradycardia:サイナス ブラディーカルディア)といいます。
洞性徐脈は、生理的なものと、病的なものの2つに分けましょう。この両者の境界は症状の有無です。徐脈に起因する症状があれば病的、なければ生理的と考えてよいでしょう。
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「日本列島新聞配達物語」に例えると、宗谷岬の新聞発刊周期が長くなって、心室本州での配達間隔が長くなっている状態です。
洞性徐脈の原因と対処
生理的な洞性徐脈は、迷走神経が亢進している状態、アスリート心、個人差としての洞性徐脈があります。運動選手、とくに長距離選手は洞性徐脈を呈することも多く、また、とくに運動をしていなくても洞性徐脈の人もいます。もちろん徐脈による症状はありませんから、特別な処置は必要ありません。
迷走神経は副交感神経であり、交感神経と逆の働きをし、この両者がバランスをとりながら、身体の状態、循環の調整をしています。
迷走神経が優位になると、洞結節機能は抑制され、洞周期が延長して洞性徐脈となります。夜間睡眠中、リラックスしているときは迷走神経が優位です。もちろん生理的な状態で、なんの症状もないはずですから処置は不要です。
洞性徐脈のまとめ
- 洞性P波のPP間隔が30コマ(1.2秒)以上に延長、PQ間隔、QRS幅は正常なのが洞性徐脈
- 生理的で、無症状であれば処置は不要
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 モニター心電図なんて恐くない』 (著者)田中喜美夫/2014年3月刊行/ サイオ出版