人ごとじゃない。先進国で唯一エイズ患者が増えつづける国、日本の現状とは

12月1日は世界エイズデーです。

実は、先進国のなかでエイズ(AIDS)患者が増加し続けているのは、日本だけというのはご存じでしょうか。

 

国連合同エイズ計画(UNAIDS)の推計では、2011年時点で世界中に3400万人のAIDS患者・感染者がいます。年間の新規感染者数はおよそ250万人、死亡者数は170万人。AIDSはいまだに、マラリア、結核を超える、最大の感染症として猛威を振るっています。

 

HIVと共に生きている人々の2011年末時点での世界的分布状況―厚生労働科学研究エイズ対策研究班による

地域別に分布をみると、感染者の大半はアフリカ南部に集中しています。一方で、増加率をみると、東アジアが10年前と比べて113%と伸びていて、新規感染者が増えているのがわかります。

 

検査を受けないまま発症する患者が3割

先進諸国を見てみると、多剤併用療法(HAART療法)の普及によって、1990年代半ば以降、AIDS発症が抑えられるようになり、患者報告数は大きく減りましした。21世紀に入り、人々の関心が薄くなってきたり、多剤併用療法による楽観視などから、再びHIV感染の再流行という課題に直面してはいるものの、AIDSの発症や死亡者数は大きく減少しています。

 

これに対して先進諸国で唯一、AIDS患者数が増え続けているのが日本です。AIDSの根本治療薬はまだ存在しません。患者を減らすには、HIV感染を早期に発見し、すみやかに治療をスタートして発症を抑えるしかありません。しかし、日本ではこの「早期発見」「早期治療」が十分に行われていないのです。

 

主要先進国におけるAIDS患者報告数の動向―厚生労働省科学研究エイズ対策事業研究班による

 

日本ではHIV検査数は頭打ちで、検査体制も不十分。検査を受けないままにAIDSを発症する人が3割にも上るといわれています。欧米のような患者数の激減は、日本ではおきていません。

 

日本エイズ学会でHIV認定看護師制度がスタート

こうした中で、HIV/AIDS医療のスペシャリストを育成しようとする動きが、学会を中心に始まっています。

 

日本エイズ学会では、2012年から「認定HIV感染症看護師・HIV感染症指導看護師制度」をスタートしました。開始から約2年で、まだ認定者は少ないですが、それでもHIV感染症指導看護師が14人、認定看護師が46人登録されています(2014年6月時点)。

 

HIV感染看護師に休職要請した病院―医療者でも根強い偏見

今年8月には、福岡県でHIVに感染した看護師が、職場である病院から休職を強要されたことを不服として訴えた裁判がありました。結果として、HIVの感染は解雇の理由にならないとして、病院側に損害賠償が命じられました。

この裁判では、検査を実施した大学病院が、看護師の勤務先の病院に無断で検査結果を知らせるという言語道断の行為も行われていました。

 

このように、医療従事者の中でもHIVに関する偏見が根強く残っているのが現状です。医療従事者であるからこそ、正しい知識を持って世界最大の感染症であるHIVの根絶にあたって欲しいと願います。

 

(出典)厚生労働省 AIDS/STIデータベース
http://www.aidssti.com/index.html

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