看護師と介護福祉士のダブルライセンスとは?資格取得のメリットや受験方法を解説

看護師が取りたい資格図鑑の「介護福祉士」のMV

介護福祉士は、介護についての一定の知識や技術を持ち、介護を必要とする方の日々の生活を支援する資格です。介護職の中で唯一の国家資格であり、看護師さんの中でも資格取得を目指す方がいます。

 

この記事では、介護福祉士の仕事内容や資格取得のメリット、介護福祉士になる方法を解説するほか、試験内容、合格率、難易度などについて紹介します。

 

 

介護福祉士とは

介護福祉士は、高齢者や1人で日常生活を送るのが困難な方の、身辺の介護から日々の健康管理まで、さまざまな生活の支援を行う資格です。

 

看護師との役割の違いや、介護福祉士の仕事内容について解説します。

 

 

介護福祉士と看護師との違いは?

介護福祉士と看護師の一番大きな違いは、担っている目的・役割、資格の分野です。

 

看護師が「医療職」であるのに対し、介護福祉士は日常生活のサポートを担う「福祉職」の資格です。

 

介護に関する一定の知識や技能を持ち、介護ニーズのある方々の生活に向き合い、生活の維持・向上を支援することを目的としています。

 

 

介護福祉士は医療行為を行える?

介護福祉士は喀痰吸引と経管栄養のみ、医師や看護師の指示の下で行うことができます

 

一方で、採血や注射、点滴の管理などは看護師の対応範囲となり、介護福祉士は行えません。

 

そのため、看護師と介護福祉士の2つのライセンスを持つ場合、介護の現場では幅広い役割を任せてもらえる可能性が高まります

 

 

介護福祉士の仕事内容は?

身体障害のある方や高齢者など、介護を必要をする人の生活支援が主な業務です。また要介護者の家族へのアドバイスや、時には介護現場のリーダーとしての役割を担う場合もあります。

 

具体的な5つの仕事内容を紹介します。

 

 

1身体介護

介護福祉士が行うケアとして、食事・入浴・排泄・着替えの介助、体位変換、移乗・移動介助、通院・外出の介助、服薬介助などがあります。

 

体に直接触れてサポートする介助のほか、自立支援のためのサポートなども含まれる場合があります。

 

 

2生活援助

日常の援助を行うのも役割の1つです。例えば掃除やゴミ出し、洗濯、食事の調理、日用品の買い物、薬の受け取りなどがあります。

 

 

3相談窓口・助言

要介護者やその家族を対象に、介護や生活に関する相談を受け、アドバイスを行います。

 

具体的には、要介護認定についての相談、介護サービスや施設に関する案内、福祉用具の案内、人間関係に関する悩みへの助言などがあります。

 

 

4社会活動支援

社会とのつながりが薄くなりがちな要介護者が孤立してしまわないように、就労支援や地域活動の情報提供、社会参加支援などを行うのも介護福祉士の仕事です。

 

 

5マネジメント

介護福祉士は介護関連の資格の中で唯一の国家資格ということで、特に重要な役割を任されることがあるでしょう。

 

介護現場のリーダーとしてスタッフをマネジメントしたり、勤務シフトの作成・調整、研修の企画・運営、業務内容の見直しなど、業務を円滑に進め、サービスを向上させる役割を担います。

 

 

看護師と介護福祉士の給料の違いは?

看護師と介護福祉士の月給は、約2万円ほどの違いがあります。

 

厚生労働省のデータによると、看護師の平均月収が351,600円であるのに対し、介護福祉士の平均月収は331,690円

 

月々の給与に加え、職場によって賞与や手当が支給されますが、看護師は夜勤手当などが支給されるケースが多いほか、ボーナス額も介護職より高めの傾向があるため、介護福祉士の年収と大きな違いになるポイントでもあります。

 

出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」(看護師)、厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」(介護福祉士)

 

 

看護師と介護福祉士のダブルライセンスのメリット

看護師と介護福祉士の両方の資格を持っていると、仕事の幅を広げられたり、自分の成長を加速させたりと、さまざまなメリットがあります。

 

看護師・介護福祉士のダブルライセンスのメリットを解説した図版。1)患者さんの生活や健康を総合的にサポートできる。2)キャリアアップにつながる、3)転職の選択肢や可能性が広がる

 

1患者さんの生活や健康を総合的にサポートできる

医療の知識と介護の知識を生かした質の高いサポートが可能となります。

 

看護師が介護福祉士の資格も取ることで、医療面・生活面の2つの視点が持てるようになり、より適切なケアを提供できるでしょう。

 

入院する患者さんの体位変換や、リハビリを必要とする患者さんの移乗・移動介助など、医療現場ではさまざまな介護が必要とされます。そのような時に介護福祉士としての知識や技能があると、業務への理解がさらに高まるでしょう。

 

一方、看護師として介護施設で働く場合も、ダブルライセンスは業務の幅を広げてくれます。

 

医療と介護の両方の視点で利用者さんと向き合うことができ、利用者さんがより必要とするケアを提供できるでしょう。さまざまなニーズに対応できるようになり、利用者さんはもちろん、その家族や周りのスタッフを心強くサポートできるはずです。

 

 

2キャリアアップにつながる

看護現場でも介護現場でも、専門知識やライセンスを持っていることで昇給・昇格の機会が増えるでしょう。

 

中には資格の取得に応じて昇給する制度を取り入れている施設もあり、キャリアアップのチャンスをつかむことができます。

 

また、日々の業務において対応できる領域が広がるため、看護師・介護福祉士としての成長を助けてくれるはずです。

 

 

3転職の選択肢や可能性が広がる

医療機関から介護施設への転職を選択肢に入れやすくなるのはもちろん、看護師もしくは介護福祉士として働ける機会をさらに広げられ、広い視野での転職活動ができます

 

さまざまな業界を悩ませる人手不足は、介護現場でも深刻です。

 

介護と看護の両方の視点を持って働ける人材は重宝されることが多く、別の職場や領域で働くことを視野に入れたときに、ダブルライセンスは武器となるでしょう。

 

 

介護福祉士になるには

介護福祉士になるためには、国家試験に合格することが必須条件です。試験を受けるための受験資格を得る必要があり、次の3つのルートのいずれかを選択しなければいけません

 

 

看護師が受験資格を得る方法は3つ

看護師として、介護福祉士の国家試験受験資格を得るには3つの方法があります。

 

1実務経験ルート

  • 介護業務の実務経験が3年以上」かつ「実務者研修の修了」が受験条件
  • 実務者研修とは、介護に関する実践的な知識と技術の習得を目的とした研修で原則6カ月以上
  • 実務者研修を受けられる施設は、高齢者施設、児童福祉施設、障害者施設などが挙げられる

 

2養成施設ルート

  • 介護福祉士養成施設の卒業により受験資格を得るルート。卒業年度によって受験資格取得の条件が異なる

 

3福祉系高校ルート

  • 福祉系高校に入学し、定められた科目・単位取得と卒業が受験条件

 

すでに看護師として働いている人は高校を卒業していることから、現実的な方法は12のいずれかとなります。

 

毎年、試験受験者の約90%は1実務経験ルートを選択しているというデータも検討材料に、自分に合ったルートを選びましょう。

 

 

介護福祉士試験の内容

介護福祉士の国家試験は年1回、全国に会場が設けられます。会場詳細は社会福祉振興・試験センターの公開情報で確認するようにしましょう。

 

 

1試験の方式

試験内容は筆記試験と実技試験があり、筆記試験の合格者が実技試験を受験できます。

 

ただし、実技試験は受験資格のルートによって免除規定があるため、ほとんどの受験者が筆記試験のみで、実技試験を受ける人はほとんどいません。

 

筆記試験は、5つの選択肢から1つを選ぶマークシート方式が取られています。

 

 

2筆記試験科目

筆記試験の問題数は125問、試験時間は220分です。

 

4領域12科目と、4領域の知識と技術を横断的に問われる総合問題から出題され、偏りのない知識が要求されます。

 

介護福祉士国家試験の筆記試験科目

領域 科目 出題数
人間と社会
  • 人間の尊厳と自立
  • 人間関係とコミュニケーション
  • 社会の理解
18問
こころとからだのしくみ
  • こころとからだのしくみ
  • 発達と老化の理解
  • 認知症の理解
  • 障害の理解
40問
医療的ケア
  • 医療的ケア
5問
介護
  • 介護の基本
  • コミュニケーション技術
  • 生活支援技術
  • 介護過程
50問
総合問題 12問

 

3合格基準

合格基準は筆記試験、実技試験それぞれ正答率60%が基準とされています。さらに筆記試験では以下の条件を満たした場合に合格となります。

 

  1. 1正答率60%以上であること(問題の難易度によって点数が補正される場合あり)
  2. 211の試験科目群のすべてにおいて得点があること

 

 

介護福祉士試験の合格率や難易度

過去5年間(第31〜35回)の平均合格率は74.2%です。

 

合格率は年々上昇する傾向で、2023年の合格率は84.3%でした。試験自体の難易度はそれほど懸念しなくてもよさそうですが、受験資格取得のために介護福祉士養成施設に通うか、もしくは実務経験を3年以上経験する必要があるという点で容易ではありません

 

覚悟を持って資格取得をするからこそ、ダブルライセンスの意味や価値がより高まると言えそうです。

 

 

まとめ

この記事では、介護福祉士の仕事内容、看護師とのダブルライセンスのメリット、資格取得の流れや試験の内容などを具体的に解説しました。

 

看護師が介護福祉士の資格も持つことで、業務の質を向上させ、対応可能な領域を広げる武器となります。またキャリアップやキャリアチェンジを目指す方にとっても心強いものとなるでしょう。

 

患者さんや利用者さんと向き合うときに必要な知識や技能を今まで以上に深められ、看護師としての存在意義を高めてくれるものだと言えます。

 

執筆:看護roo!編集部

 

 

 

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