認知症ケア専門士とは?受験資格や難易度、看護師が取るメリットなどを解説

 

認知症ケア専門士のことを解説する記事のMV

 

認知症ケア専門士は、認知症に関する資格の中で、受験者数も多く、人気の資格です。介護職がよく受験していますが、実は看護師さんの受験も多くなっています。

 

この記事では、認知症ケア専門士とはどんな資格なのか、受験資格難易度看護師が取るメリットなどを解説します。

 

 

認知症ケア専門士とは

認知症ケア専門士は、「日本認知症ケア学会」による民間資格で、認知症の実践的で専門的な知識・ケアのスキルを身につけられる資格です。

 

2005年の制度スタートから、現在までに約6万人の認知症ケア専門士が誕生しています(2022年6月現在)。受験者数も直近では年3000人に上り、認知症関連では人気の高い資格です。

 

認知症ケア専門士の方の職種は、認知症高齢者のケアに携わる介護福祉士やホームヘルパーなど、介護職が多いですが、看護師も4番目に多くなっています

 

認知症ケア専門士の基礎資格の保有数。介護福祉士が16908人、介護支援専門医が12354人、ヘルパーが9231人、4番目に看護師が8895人いる。

出典:日本認知症ケア学会認定 認知症ケア専門士公式サイト 一部抜粋

 

 

認知症ケア専門士は何ができる?

認知症ケア専門士は、認知症ケアのスペシャリストとして、医療施設・介護施設問わず、さまざまな場面で活躍しています。

 

認知症の患者さんとのコミュニケーションや、認知症の行動・心理症状(BPSD)への対応力アップに加え、ご家族へのケアや、同僚・多職種を巻き込んだチームケアなど、認知症ケアの総合的なスキルアップが見込めます。

 

出歩く認知症患者さんに寄り添って歩く看護師さんのイラスト

 

認知症ケア専門士はどこで働く?

認知症ケア専門士は、看護roo!編集部が日本認知症ケア学会に取材したところによると、介護職として、民間病院やクリニック、特別養護老人ホーム、認知症グループホームなど医療・介護の現場を問わず働いていることが多いようです。

 

一方で、看護師として働く方も多くいます。看護師として働く認知症ケア専門士の主な所属先は、以下の通りになっています。

 

看護師として働く認知症ケア専門士の主な所属先

所属先 割合
民間病院・クリニック 32%
公立病院 14%
医療センター 7%
大学病院 6%
介護老人保健施設 5%

出典:看護roo!の日本認知症ケア学会への取材による

 

認知症ケア専門士の資格を持つ看護師さんの多くは、病院やクリニックに勤務しているようです。

 

 

認知症ケア専門士になるには

認知症ケア専門士になるには、日本認知症ケア学会が実施する認定試験に合格する必要があります。認定試験の詳しい内容を紹介します。

 

 

認知症ケア専門士の受験資格

認知症ケア専門士の試験を受けるには、「認知症ケアに関する施設、団体」で3年以上の実務経験が必要です。

 

「認知症ケアに関する施設、団体」とは、病院やクリニック、認知症専門病棟などの施設です。所属が認知症の専門施設である必要はありません

 

 

認知症ケア専門士の取得までの流れ

試験の申請から取得するまでの流れは、以下のようになっています。

 

認知症ケア専門士の取得までの流れを解説した図版。毎年3月~4月に申請、7月上旬に第1次認定試験、8月下旬~9月下旬に第2次認定試験、1月に合格発表、合格後に倫理研修動画を視聴する

参考:日本認知症ケア学会『制度の流れ

 

新型コロナウイルスへの対応で、第1次試験はWEB、第2次試験は郵送での試験方法になりました

 

今後、試験の方法は変更される可能性があります。最新情報については、日本認知症ケア学会の公式サイトを確認しましょう。

 

 

 

認知症ケア専門士の試験の概要

試験は、第1次試験、第2次試験と実施されます。それぞれの試験の詳細は以下の通りです。

 

 

第1次試験

認知症ケア専門士の第1次試験は五者択一式です。試験時間は60分で、50問ずつ、計200問が出題されます。

 

問題は、以下の4分野から出題されます。

 

認知症ケア専門士の試験分野

分野名 内容
認知症ケアの基礎 認知症ケアの理念、認知症の現状の理解、認知症の症状の理解
認知症ケアの実際Ⅰ:総論 コミュニケーション、ケアの方法、家族支援、チームケア、倫理など
認知症ケアの実際Ⅱ:各論 高齢者の疾病や健康管理、BPSDやせん妄の理解、薬物療法、「回想法」などの非薬物療法など
認知症ケアにおける社会資源 社会保障制度、認知症の人の権利擁護、家族・友人などのインフォーマルケアの活用方法など

参考:日本認知症ケア学会『試験概要:第1次試験

 

4つの分野いずれも「正答率70%以上」を取ることが合格基準となります。

 

もしある分野で不合格だった場合、5年以内ならその分野だけ再度試験を受けることができます。

 

 

第2次試験

認知症ケア専門士の第2次試験は論述試験です。

 

論述用紙は第1次試験の合格通知とともに郵送されます。この論述用紙に回答を書き込み、簡易書留で返送する形で行われます。

 

 

認知症ケア専門士は難しい?合格率は?

認知症ケア専門士の合格率は毎年50%前後で推移しています。

 

日本認知症ケア学会への取材によると、看護師の合格率も約50%となっており、看護師以外の受験者の合格率とほぼ変わりませんでした。

 

ちなみに、看護師の第1次試験の合格率は毎年50%前後、第2次試験は98%程度でした。

 

約半数が不合格となっており、しっかり受験対策をして試験に臨む必要があるでしょう。

 

 

認知症ケア専門士の勉強方法は?

認知症ケア専門士の試験問題は、選択式で解答しやすく、公式テキストもあり勉強もしやすいですが、範囲が広いため、計画的に学習するのがおすすめです。

 

以下では、勉強方法について紹介します。

 

 

公式テキストや問題集で勉強する

認知症ケア専門士は、日本認知症ケア学会から公式テキストが発売されています。実際の試験問題も公式テキストから出題されますので、多くの人がこのテキストを活用しています。

 

認知症ケア専門士の公式テキスト(全4巻)を紹介する図版。

 

また、認知症ケア専門士の受験対策書籍は、日本認知症ケア学会以外にも、さまざまな出版社から発売されています。

 

問題集を解き、間違えた部分をテキストで確認するといった方法で勉強すると効率的です。

 

 

公式の受験対策講座を受講する

日本認知症ケア学会が認知症ケア専門士試験を受験する人向けに、Web上で有料の受験対策講座を開催しており、それを活用する方法もあります。

 

受講期間が限られているので、詳しくは公式サイトを確認しましょう。

 

 

看護師が認知症ケア専門士を取るメリット

看護師が認知症ケア専門士の資格を取るメリットは以下の3つが挙げられます。

 

看護師が認知症ケア専門士を取るメリットをまとめた図版。1)患者さんのケアのスキルアップにつながる、2)ご家族のケアのスキルアップにつながる、3)チームの認知症ケアの質を上げられる

 

1患者さんのケアのスキルアップにつながる

「認知症ケア専門士」の資格を取得すると、何よりも患者さんのケアのスキルアップにつながります

 

認知症ケア専門士は認知症ケアについての専門的で幅広い知識が学べるだけでなく、公式テキストに掲載されている多くの事例を通して、応用力を養える実践的な内容となっています。

 

徘徊する患者さんに上手に声かけして、病室に戻ってもらえた

暴れてしまう患者さんの気持ちを理解して、なだめることができた

 

など、患者さんの「BPSD」への対応力がアップすれば、患者さんに穏やかに過ごしていただくことができ、患者さん自身の治療もスムーズに進めることができます。

 

認知症ケアのスキルアップをしたいと考える看護師さんにとって、おすすめの資格です。

 

 

2ご家族のケアのスキルアップにつながる

認知症は本人だけでなく、ご家族にも大きな負担となっています。「ただ話を聞くだけでなく、もっとできることはないか」と歯がゆく思う看護師さんも多いですよね。

 

認知症ケア専門士の資格取得を通じて、ご家族に対する傾聴や共感の方法に加え、本人への接し方の助言方法や、ご家族が活用できる社会制度についてなど、実践的なサポート方法を多く学ぶことができます

 

ご家族に寄り添って、自信を持って助言や提案ができるようになることも、認知症ケア専門士を目指すメリットです。

 

 

3チームの認知症ケアの質を上げられる

認知症ケア専門士の取得で得たスキルは、自分だけではなく、同僚や多職種にも共有できます。

 

病室にご家族の写真を置いたら帰宅願望が抑えられた」「チームで患者さんへの言葉遣いを変えたら、徘徊が少なくなった」など、環境整備や関わり方のコツなどをアドバイスできれば、患者さんのケアの質をよりアップさせることができます。

 

これによりチーム全体の認知症ケアの底上げも期待できます。自分の学びが、チームで行うケアの質を高めることにつながることでやりがいを感じられるでしょう。

 

 

まとめ

高齢化が進み、一般病棟の看護師さんも、認知症高齢者の方と関わる場面は増えています。

 

認知症の患者さんへの対応力がアップすれば、患者さん本人のQOLが改善するだけでなく、周囲の患者さんやチームにも良い影響があるはずです。

 

認知症ケアのスキルアップを考えている看護師さんは、認知症ケア専門士に挑戦してみてもよいかもしれません。

 

 

執筆:看護roo!編集部 鈴木涼太

 

 

 

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