患者さんと一緒に「よっしゃ!」喜ぶ隠岐島の看護師|へき地・離島ナースリレーコラム【9】

へき地・離島で働く看護師リレーコラム。9回目は、島根県の隠岐島で働く“キコ”さん。いきいきと働く地元の看護師さんから改めて学んだ、看護のすばらしさについてお書きいただきました!

 

◆キコさんの今までのコラムはこちら

島根・隠岐島で憧れの離島ナースに

汽笛で目覚める!?海に癒やされる隠岐島の休日

 

(寄稿協力:特定非営利活動法人ジャパンハート)

 

とにかくマルチな看護師ばかり!

私が働く隠岐島前病院の看護師さんたちを一言で言い表すなら、「パワフル」。その一言につきます。平均年齢は40歳以上ですが、ビックリするほどみんな元気です。

 

隠岐島前病院は3つの島の中で唯一の有床病院です。急性期から慢性期、小児医療から老年まであらゆる分野に対応しなければなりません。

 

隠岐島に来る前は、“緩やかな時間が流れていそう…”なんて思っていたけど、緊急入院患者が次々運ばれてドタバタ、なんてことも珍しくありません。それでも地元の看護師さんたちは「救急車の音が鳴ったらうちしかないから!」と、マルチに対応しています。

 

病院内のドタバタとは裏腹に、穏やかな姿をみせる隠岐の海

 

病院の中だけにとどまらないパワー

パワフルな地元の看護師さんですが、そのパワーは病院内だけに留まりません。

 

あるご夫婦が入院していました。旦那さんは生まれつき下肢に麻痺があり歩けない状態、そこに肺炎を発症しての入院でした。奥さんは認知症。家に一人でいれずに夫と共に入院です。ご夫婦は旦那さんの状態がよくなったので、家に帰りたいと言われたのですが、家に介護者はいません。

 

この話を聞いたとき私は、“家に帰るのは絶対無理。施設だろうな”と思っていました。しかし施設は入りたくない、家に帰りたいと言うご夫婦。

 

そこで病棟の担当看護師さんが実際にご夫婦の家まで行き調査しました。とても散らかっていて、すぐに住める状態ではなかったそうです。

 

どうにかして家に帰れる方法を探すため、ケアマネ、医師、そのほかの職種の方と何度も話し合いを重ねました。その結果、自宅へ戻るという方針が決まったのです。

 

患者さんのために、クリスマス会ではハンドベルを披露

 

患者さんと一緒に「よっしゃ!」

どうやって自宅へ戻ることを実現したのかというと…

 

担当看護師が、病院から何度もご夫婦と一緒に自宅へ外出し、一緒に家の掃除をしたり、トイレへの移動を実施したりしたのです。

 

担当看護師だけでなく病棟看護師が一丸となって、最善策を考え実際に行い、ご夫婦の念願叶って自宅へ帰れることになりました。

 

患者さんの希望を最大限に尊重したいという熱い思い。それを諦めない努力。

 

そして患者さんの退院が決まれば「よっしゃ!」と自分のことのように喜ぶ地元の看護しさんたちを見て、「看護の原点を見た」と思いました。患者さんに寄り添う看護がここにはあります。

 

いきいきと働くパワフルな看護師さんたち。そんな地元の看護師さんたちと一緒に働いていると、改めて看護の楽しさに気づきます。やっぱり看護ってすばらしい!!

 

ドクターの釣りの成果を確認する地元の先輩看護師さん

 

次回は、長崎県の対馬で働く“雪見”さんにお話いただきます。

 

 

■寄稿協力

特定非営利活動法人 ジャパンハート

 

2004年に代表の吉岡秀人医師が設立した国際医療ボランティア団体。今回紹介したへき地離島への医療研修は国際看護長期研修の一つで、ミャンマーでの医療研修も含め1年間のプログラムとなっている。ほかにもカンボジア、ラオスでの医療支援や医療者育成支援など、さまざまな支援活動を行っている。医療者が参加できる活動として、子どもや貧しい人々のために巡回診療や手術を行う、3日~7日程度の休暇で参加が可能な国際医療短期ボランティアなどがある。

 

ジャパンハート公式サイト

国際看護長期研修専用サイト

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