新人看護師の「仕事できない…しんどい」どうしたら?|1年目の「ツラい」がラクになる少しのヒント(2)
新人看護師は、わからないことやできないことばかりで混乱したり怒られたり、
「私、全然仕事できない…」
「頑張ってるのにうまくいかない…」
と落ち込むことも多いものです。
でも、心配しなくても大丈夫。先輩ナースたちも同じように悩み、もがきながら成長してきました。
新人看護師によくある仕事のお悩みとアドバイスを紹介します。
目次
【お悩み1】「報連相」ができなくて怒られてばかり…
毎日のように「ちゃんとわかるように報告・連絡・相談して!」と怒られる…。
「今伝えなくちゃいけないこと」と「後でもいいこと」の判断が難しく、いつ先輩に話しかけたらいいかわからない~!
「報連相は大事!」って頭では理解はしていても、実際にやってみると難しいですよね。
話しているうちに、だんだん何を言いたかったのかわからなくなってしまったり、忙しそうな先輩に話しかけられずにいたら「報告はまだ?」「どうして相談しなかったの?」と怒られたり…。
でも、誰だって初めはうまくできないもの。次の2つのポイントを意識しながら、徐々に慣れていけば大丈夫なので、安心してくださいね。
1話す順番を工夫して伝える
報連相をするときは、報告を受ける先輩がパッと状況を理解できるような順番で伝える工夫をしてみましょう。
起きた通りの順番でただ伝えるだけだと「何を言いたいのかわからない報告」になりがち。
必要なことをわかりやすく相手に伝えるには、次の“I-SBAR”と言われる5つの順番を意識してみると良いですよ。
I : Identify「報告者、対象者の同定」
→報告者・対象者が誰なのか
S : Situation「状況、状態」
→今何が起きているか、患者さんの状態はどうか
B : Background「背景、経過」
→どんな経過でその状況になったのか、患者さんの既往歴や前兆はあったか
A : Assessment「評価」
→患者さんの状態に対してどのように考えているのか
R : Recommendation 「依頼、要請」
→応援要請や、医師の診察依頼をするか、何を求めているのか
-
I-SBARについて詳しくは「何のためにその報告をしているのか?」を考える|新人ナースのホウレンソウ[4]
2タイミングを確認する言葉を足す
「優先度が高い内容かどうか」「先輩が報告を聞ける状態なのか」も判断しないといけないのが報連相の難しいところ。
日々の実践でコツをつかんでいくのが一番の近道ですが、たとえば、次のような「話しても良い状況かを確認する言葉」を足してみましょう。
- ◯◯についてご相談したいのですが、いまお時間よろしいでしょうか?
- 5号室の佐藤さんが△△なのですが、それについて今、ご報告してもいいでしょうか?
このとき「すみません、いまお時間よろしいですか?」から話し始めると、「ちょっと待ってて!」と言われてしまって、内容を伝えられないままになってしまうことも。
まずはじめに「患者さんについての報告である」ことを明確に伝えると、先輩が一緒に優先度を考えてくれたり、報連相を聞くタイミングの指示をくれたりします。
何度か繰り返すうちに、話しても良い状況か判断するスキルが身に付いていきますよ。
ただ、タイミングを気にしすぎて報告が遅れないように、自分だけで状況判断できないときは、すぐに先輩に伝えてくださいね。
【お悩み2】患者さんとうまくコミュニケーションがとれず、情報収集ができない…
先輩みたいに、さりげない会話から情報を取りたいけど、うまくいかず苦戦。
治療や看護に必要な情報を、患者さんとのコミュニケーションから引き出せない…
ケアや処置をしながら、短い時間の中で的確に情報収集をするのは、思った以上に大変ですよね。
患者さんとのコミュニケーションに苦手意識を持つ人もいますが、一問一答のような会話から始めてもいいですし、それほど気に病まなくても大丈夫!
それ以上に、情報収集で大切なのは「患者さんのことを知りたい」という気持ち。
「うまく話さなくちゃ」「自分で全部の情報を取らないと」と焦る気持ちはいったん置いて、まずは「患者さんを知ること」に集中してみましょう。
「◯◯さん、今日は体調いかがですか?」のような、よくある声かけから話を広げてもいいですし、
「今後の治療に生かすために、いくつかお聞きしたいことがあるのですが、よろしいですか?」と、まっすぐ聞いてみるのもいいかもしれません。
先輩の会話をマネをしてみるのも、もちろんOK。
患者さんを知り、その上で「何が必要か」と考えながらコミュニケーションを重ねるうちに、自然と情報収集のスキルは身に付いていくはずです。
また、新人の場合、取った情報を整理できていない・うまく報告できないせいで「情報収集できない」と思ってしまっているケースもあります。
お悩み1の報連相のポイントを参考にしてみてくださいね。
【お悩み3】なかなか自立が進まない、同期と比べて劣等感…
技術の自立、重症度の高い患者さんの受け持ちなど、クリアしなくちゃいけないことがたくさんあるけど、全然進まない…!
同期はどんどんできることが増えていくのに、自分だけできてない気がする。
思ったように技術が自立できなかったり、うまくいかない状況が続いたりすると、焦りや不安が膨らんでいきますよね。
一緒にスタートを切ったはずの同期がどんどん進んでいく姿を目にして「みんなはできるのに、自分は全然できてない…」と比較して凹んでしまう人も多いかもしれません。
でも、成長のスピードも、得意・不得意も人それぞれ。ひとつひとつ、自分のペースで進んでいくことが大切です。
周りの同期と比べて焦ってしまったときは、「過去の自分」と比べてみましょう。
以前よりできる技術も増えて、これまでの業務で学んだことを生かした看護ができるようになっているはずです。
もし「できないことばかりが目についてどうしようもない…!」と出口が見えなくなってしまったら、まずは「できること・できないこと」を手順ごとに分けて整理して考えるようにしてみましょう。
その上で、先輩に「◯◯の手順はできるのですが、△△の手順でつまずいてしまいます」など具体的に相談しながら実践してみると、ポイントが明確になって「できないこと」を「できること」にしていくことができますよ。
【お悩み4】優先順位がつけられず、残業ばかり…
1日のスケジュールをちゃんと立てても、その通りに進められず、いつも業務が終わらない~!
優先順位がつけられなくて、いつもバタバタ。自分がどんな状況なのかも把握できない…。
「予定通りに進まない!」「優先順位がコロコロ変わって混乱する(泣)」と焦るのは、新人ナースみんなが通ってきた道。
多重・割り込み業務が多いからこそ、とにかく常に自分の状況を先輩に相談することが大切です。
「そんな相談していいの?」「何度も相談して怒られないかな…」と思うかもしれませんが、勇気を持って先輩に声をかけましょう。
先輩たちは、安全でスムーズな看護のために「メンバーの状況を把握しておきたい」「新人さんから相談してくれると助かる」と思っています。
スケジュール通りにいかず困ったら、1人で抱え込まずにすぐにSOSを出しましょう。
また、1人では難しそうな業務や、初めてで不安な技術があるとき、勤務開始前のミーティングなどで相談しておくことも大事。そうすることで、先輩も適切にサポートができるので、安心して業務ができますよ。
【お悩み5】夜勤に慣れず、身体的・精神的にしんどい…
夜勤のリズムに慣れなくて、常に疲れている感じ。夜勤中ずっと眠かったり、家に帰ると逆に眠れなかったり、身体がキツい。
夜勤はいつも緊張する…。仮眠も寝た気がしないし、精神的にしんどくなってきた。
「夜勤は徐々に慣れていくもの」とわかっていても、心身ともにツラいですよね。
少しずつ「自分に合った夜勤の日の過ごし方」を見つけることが、夜勤のリズムをつかむ近道! 先輩ナースがどうやって過ごしているのかを参考にしてみるのもおすすめです。
また、夜勤中の仮眠の質をよくするために
- 遮音できる耳栓
- ホットアイマスク
- 汗拭きシート
- 湯たんぽ
などの自分に合ったグッズを準備しておくのも良いでしょう。
生活リズムを調整するのはなかなか難しいものですが、慣れてくると夜勤前・夜勤明けの時間も上手に使えるようになってきます。
「休日も休んだ気がせず、疲労感が強い」「勤務中にぼーっとして集中できない」というときは、先輩や上司に相談して、勤務調整をしてもらいましょう。健康に元気に働けるように、力になってくれるはずです。
【お悩み6】インシデントを起こして落ち込む…看護師に向いてないのかも
ミスしないように確認していたつもりなのに、インシデントを起こしてしまった…。患者さんに申し訳なくて、ツラい。
同じインシデントを何度も繰り返してしまう。看護師に向いてないのかも…。
インシデントを起こすと、ミスをした自分を強く責めて、落ち込んでしまいますよね。インシデントレポートを書くことで責められているような気持ちになったりすることもあるかもしれません。
でも、どんなに気をつけていても、どんなにベテランの先輩ナースでも、間違えることはあります。反省は必要ですが、大事なのは、その経験を次に生かすことです。
インシデントを共有する目的は「誰もが起こすリスクがあることを認識して、再発を防止するため」ということを忘れないようにしましょう。
どうしても「こんなミスをするなんて…」「ダメなヤツだと思われたかもしれない…」と思いがちですが、そんなときは、自分の気持ちだけに目が向いてしまっているのかも。
深呼吸して、その目を患者さんに向けてみてください。
「患者さんのために何をすべきか」と考えられれば、振り返りをして再発防止策を立てるなど、やるべきことが見えてきます。
立てた対策は、きちんと実践できているか自分で評価したり、周りの先輩にフィードバックをしてもらうことで、同じインシデントを繰り返さないように意識できるでしょう。
インシデントはツラくてこわいものだけど、成長につなげていけるといいですね。
おわりに
新人看護師は慣れないことが多くて、仕事の悩みは尽きないものです。
時には、
「忙しすぎて、患者さんをちゃんと看護できてるのかな」
と心にぽっかり穴が空いてしまうことも。
でも、そんなふうに思うことも、ナースとしての成長のひとつなのかもしれません。
もし、ツラくて苦しくなりそうなときは、1人で抱え込まず、勇気を出して先輩ナースに相談してみてくださいね。
同じ気持ちを経験してきた先輩ナースが、きっと力になってくれるはずです。
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川崎市立多摩病院(指定管理者 聖マリアンナ医科大学)教育担当副部長上村美穂
看護師。集中ケア認定看護師。1996年に聖マリアンナ医科大学東横病院に入職。2017年より川崎市立多摩病院で教育担当師長、2019年より教育担当副部長として看護師の教育・育成に携わる。
看護roo!編集部 小園 知恵(看護師)
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