看護師の仕事、結婚・育児と両立できる?|「結婚・出産後の働き方に関するアンケート」結果

【日経メディカルAナーシング Pick up!】

 

石川奈々子=医療・看護エディター

 

 

看護職が資格を生かして長く働くには、結婚や育児と仕事との両立が欠かせない。

 

看護職は一般にライフスタイルに合わせて働きやすいというイメージがあるが、その実情はどうなのだろうか。

 

Aナーシングでは看護職会員を対象に、結婚・出産後の働き方に関する調査を実施。

 

同調査は2019年6月10~23日にウェブ上で行い、246人が回答した。

 

回答者のうち既婚者(事実婚を含む)は77.6%、子どもがいる人の割合は75.2%だった。

 

 

「職場の風土」「勤務体制」「家族のサポート」のあり方が両立しやすさを左右

まず、看護師の仕事と結婚・出産との両立のしやすさについて、「両立しやすい」「両立しにくい」「どちらともいえない」という3つの選択肢を示し、最も自分の考えに近いものを選んでもらった。

 

その結果、「どちらともいえない」との回答が最多(43.8%)で、続いて「両立しにくい」が40.6%、「両立しやすい」という回答は15.6%だった(図1)。

 

図1「看護師の仕事は、結婚や育児と両立しやすいと思いますか?」

「看護師の仕事は、結婚や育児と両立しやすいと思いますか?」(n=246)/両立しやすい:15.6%、両立しにくい:40.6%、どちらともいえない:43.8%

 

両立についての回答を選んだ理由を尋ねると、「両立しやすい」と答えた理由では、

 

「職場復帰がしやすい」

「子どもの行事に合わせて勤務を調整しやすい」

「比較的時間に融通がきく職場を選べる」

「仕事にこだわらなければ、ライフステージに応じた働き方ができる」

 

など、ワーク・ライフ・バランス重視の働き方が可能な点を挙げた回答が多かった。

 

一方、「両立しにくい」と答えた理由としては、

 

「夜勤がある」

「残業がある」

「急な休みがとりにくい」

「家族のサポートが必要」

「精神的・肉体的ストレス

 

などが多かった。

 

これらの意見を総合すると、

 

「職場(上司・同僚)の理解やサポートがある」

「夜勤や残業がない(あっても融通がきく)」

「勤務希望が通りやすい(時間帯、休暇など)」

「家族(配偶者・祖父母など)のサポートがある」

 

などが、仕事と家庭とを両立しやすい条件となることがうかがえた。

 

「両立しやすい」と答えた理由


・保育園を併設している病院もあり、出産後、職場復帰がしやすい。(30歳代看護師、病院、独身、子どもなし)

 

・シフト制なので、学校行事などにも勤務希望を出すと参加できる。(30歳代准看護師、診療所・クリニック、既婚、子ども3人以上)

 

・看護師免許があると病院以外に保健所やデイサービス訪問看護ステーションなど、比較的時間に融通がきく職場でも働ける。(30歳代看護師、教育・研究機関、既婚、子ども2人)

 

・臨床勤務や正社員にこだわらなければ、ライフステージに応じた働き方が可能だと思うし、一度離れてもやる気さえあれば採用されやすい職種だと思う。(40歳代看護師、その他、既婚、子ども2人)

 

「両立しにくい」と答えた理由


・正職員は残業や夜勤・土日勤務必須のため、急変などで保育園や学童の迎えに間に合わないし、子どもが病気でも休めない。夜勤やシフトの相談で師長に常に謝り続けて肩身が狭い。(40歳代看護師、介護系施設・事業所、既婚、子ども1人)

 

・時間どおりには業務が終わらず、会議や勉強会などで時間をとられる。(30歳代看護師、診療所・クリニック、独身、子どもなし)

 

・交代要員を確保できていないと急な休暇取得、早退・遅刻が難しい。事務仕事のように先取りや後回しができない。(50歳代看護師、介護系施設・事業所、既婚、子ども1人)

 

・夜勤を伴うことがほとんどであり、夫・家族のサポートが必要。融通がききやすい実両親のサポートなどがなければ、結局は妻(母)のワンオペになってしまう(50代看護師、病院、既婚、子ども3人以上)

 

妊娠したときの勤務軽減など考慮されておらず、切迫早産・流産などを起こす人が多いように感じる。(40歳代看護師、その他、既婚、子どもなし)

 

・業務内容も多岐にわたり精神的・肉体的ストレスも多い。(40歳代看護師、病院、既婚、子ども1人)

 

「どちらともいえない」と答えた理由


・結婚・子育てに理解のある上司や同僚がいるかどうか。(50歳代看護師、その他、既婚、子ども2人)

 

・遅くなる日が前もって予想・対応できるか、協力し合う雰囲気があるか。部署によると思う。(40歳代看護師、診療所・クリニック、既婚、子ども3人以上)

 

・働く時間帯が選べるのはよいが、突発的に休みにくい。(50歳代看護師、病院、既婚、子ども2人)

 

・パートナーの理解と協力が得られれば、勤務時間や休暇の取り方などに有利な点も多く、経済的にもゆとりができてよい。得られなければ、お互いに負担と不満が大きい。(50歳代看護師、病院、既婚、子ども2人)

 

・結婚との両立は可能。育児との両立は勤務先や社会資源の利用状況による。平日日勤だけであれば、保育園や学童保育などを活用すれば大きな問題はない。(50歳代看護師、中病院、既婚、子どもなし)

 

・「今やりたい」ことを優先しなければ両立できる勤務条件はあるが、仕事の満足度は下がる。(40歳代看護師、診療所・クリニック、既婚、子ども2人)

 

 

 

「経済的な理由」に次いで「キャリア・スキルの維持」が継続の理由

結婚・出産後の働き方について選択肢を示して尋ねたところ、最も多かった回答は「結婚・出産後も常勤で働きたい(働いている)」で45.1%を占めた。

 

次いで「出産後は勤務時間を減らして働きたい(働いている)」30.1%、「結婚後は勤務時間を減らして働きたい(働いている)」13.8%と、約9割がなんらかの形で「働きたい(働いている)」と回答した(図2)。

 

図2「結婚・出産後の働き方について、あなたの考えに最も近いものはどれですか?」

「結婚・出産後の働き方について、あなたの考えに最も近いものはどれですか?」(n=246)/結婚・出産後も常勤で働きたい(働いている):45.1%、結婚後は勤務時間を減らして働きたい(働いている):13.8%、出産後は勤務時間を減らして働きたい(働いている):30.1%、出産後は仕事をやめたい(やめた):7.7%、結婚後は仕事をやめたい(やめた):3.3%

 

「常勤で働きたい(働いている)」との回答が約半数(45.1%)で、その理由としては「経済的にAYA世代の収入では、共働きでないと出産・育児ができず、老後も安心できない」(30歳代看護師、病院、既婚、子ども1人)などの「経済的理由」に次いで、「子育てが終わったときに看護師としてのキャリアやスキルのダウンにがくぜんとしたくない」(50歳代看護師、病院、既婚、子ども1人)など「キャリア・スキルの維持」が多かったほか、「母親としての役割だけでなく、社会においての役割を担いたい」(40歳代保健師、自治体・公共団体、既婚、子ども2人)など「社会的な責任」という理由も挙がった。

 

「勤務時間を減らして働きたい(働いている)」との選択肢では、そのタイミングを結婚後(13.8%)とする人よりも出産後(30.1%)とした人が多く、家事・育児の優先度によって、「子どもが小さく家事・育児に時間がかかるため、時短勤務(日勤帯のみ)を利用している」(30歳代看護師、病院、既婚、子ども3人以上)、「子どもが就学後は親(特に母親)の出番が多くなるため、時間の融通をつけやすいパートに変更した」(50歳代看護師、病院、既婚、子ども1人)のように「時短勤務の選択」「常勤から非常勤・パートへの移行」などによって仕事の負担を減らすとの回答が多かった。

 

また、「出産後,融通がききやすい訪問看護ステーションに転職した」(40代看護師、訪問看護ステーション、既婚、子ども1人)など「両立しやすい職場への転職」といった回答もみられた。

 

一定期間、仕事よりも結婚・育児との両立を優先するという条件下ではあるのかもしれないが、キャリアを完全には断ち切らず、ライフステージに応じて職場や働き方を選びながら結婚・育児と両立できることは、看護職の強みであろう。

 

現状として多くの看護職が、世代にかかわらず、それぞれ創意工夫をしながらなんらかの形で働き続け、結果、両立を遂げている実情が浮かび上がった。

 

調査概要

 

日経メディカルAナーシング看護職会員を対象にウェブアンケートを実施。

 

期間は2019年6月10~23日。回答者数は246人。

 

内訳は、看護師92.3%、准看護師3.7%、保健師2.4%、助産師1.6%。

 

年代は20歳代5.7%、30歳代26.1%、40歳代42.9%、50歳代24.5%、60歳以上0.8%。

 

独身が22.4%、既婚が77.6%。子どもなしが24.8%、子ども1人が21.9%、子ども2人が35.4%、子ども3人以上が17.9%。

 

勤務先は病院が54.5%(20~99床5.3%、100~499床28.1%、500床以上21.1%)、診療所・クリニックが12.6%、訪問看護ステーションが8.1%、介護系施設・事務所が5.7%、教育・研究機関が6.5%、自治体・公共団体が2.4%、その他7.8%、働いていないが2.4%だった。

 

 


 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

Aナーシングは、医学メディアとして40年の歴史を持つ「日経メディカル」がプロデュースする看護師向け情報サイト。会員登録(無料)すると、臨床からキャリアまで、多くのニュースやコラムをご覧いただけます。Aナーシングサイトはこちら

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