時間外の軽症者、クレーマー…どんな患者なら診療を拒める?|看護roo!ニュース

 

「いつ、どんなときでも患者の求めに応じて診療しなければならない」という医師の応召義務

 

この応召義務があまりに強い意味を持ちすぎて、医師をはじめとする医療者の長時間労働につながっていることが指摘されています。

 

どんなケースだったら、医師・医療機関は、診療に応じなくても「正当」とされるのでしょうか

 

医師の働き方改革に関連して、厚生労働省の研究班が、応召義務の考え方を見直しました。看護師にも深くかかわる応召義務のポイントを確認します。

 

 

「トラブルのない患者さんか」もポイント

「今の時代」という背景も考慮して、研究班が整理したポイントは次の3つ。

 

1)その患者は緊急対応が必要かどうか(症状の深刻度)

 

2)診療時間内・勤務時間内かどうか

 

3)患者トラブルなどがないか(患者と医療機関・医師の信頼関係)

※夜間休日の救急受け入れを行う救急医療機関の場合、夜間休日の救急対応は「診療時間内」に当たります

 

この3つのポイントを基準に、

「診療を拒否できない」

「診療に応じなくても正当化される」

を判断するというわけです。

 

 

時間外の軽症患者は翌日受診で問題なし

研究班の報告書から具体的なケースを見ていきましょう。

 

◆緊急対応が必要なケース

緊急対応が必要な場合、もちろん診療に応じるのが大原則です。

 

医師の専門性や能力からみて診療できそうにない、この患者を診る設備が整っていない、近隣に診てもらえる医療機関があるなどの状況を総合的に考えて「事実上、診療が不可能」と言える場合に限り、時間内でも診療しないことが正当化されます。

 

とは言っても、該当するケースはかなり限定されると考えたほうがよさそうです。

緊急対応が必要なケースの説明イラスト

 

一方、緊急対応が必要な患者であっても、時間外だと少し事情が変わります。

 

時間外の緊急対応は「倫理上、応急的に必要な処置は取るべきだが、原則、責任を問われることはない」とのこと。必要な処置も心肺蘇生法の実施などで、「求められる対応の程度は低い」と研究班は示しています。

 

 

◆緊急対応が必要ないケース

緊急対応が必要ないケースの説明イラスト

 

緊急対応が必要ないケースは、時間外にすぐに対応する必要はなく、「診療しないことに問題はない」と、研究班はきっぱり言い切っています。

 

そのうえで、翌日の時間内に受診することを勧めたり、ほかに診療可能な医療機関を紹介したりといった対応が望ましい、と報告書には付け加えられています。

 

 

クレーマー患者は診ない…○か✕か

緊急性が低い場合は、時間内であっても、診療に応じるべきかどうかの判断がやや緩くなります。

たとえば、次のようなケースです。

 

◆患者の迷惑行為

クレーマー患者のケースの説明イラスト

 

妥当性のないクレームを繰り返している患者さんなど、診療に必要な信頼関係が失われているような場合、医療機関側が「今後の診療を行わない」としても正当化されます。

 

看護師に暴力・ハラスメント行為を繰り返すケースも「信頼関係が喪失した」に当てはまりますね。

 

 

◆医療費の不払い

医療費の不払いがあるケースの説明イラスト

 

過去に医療費の不払いがあったり、保険未加入で支払い能力が不明だったりする患者さんもいますが、それだけを理由に診療しないのは認められません。

 

けれども、支払い能力があるのに悪意をもって支払わない、特に理由もなく、未払いが積み重なっているといったケースでは、診療しなくても正当化されます。

 

また、自由診療で医学的な治療が必要ない場合は、支払い能力のない患者さんを断わるのも正当と判断されます。

 

 

◆差別的な取り扱い

言葉が通じない外国人患者のケースの説明イラスト

 

患者の年齢や性別、人種・国籍、宗教などを理由として診療を拒否するのは差別に当たり、原則として認められません

 

ただし、言葉が通じなかったり、宗教上の理由があったりして、結果的に医療を提供すること自体が非常に難しいようなケースでは、「この限りではない」と研究班はしています。

 

最近は外国人の患者さんが増え、言葉の壁は医療現場の大きな課題です。

 

報告書でも「言語以外の情報も総合して、可能な範囲で必要な診療を提供すべき」という姿勢が原則としているものの、現場の実情を汲んだ考え方が示されたと言えます。

 

 

応召義務は重く考えられすぎている

今の時代に合わせて整理された応召義務のポイントや具体例。こうしてあらためて見てみると、当たり前といえば当たり前なことばかりだったかもしれません。

 

ですが、医療機関の診療拒否から民事訴訟になった例もあり、応召義務が過度に重くとらえられている中、あらためて「これは対応できなくてもやむなし」と、はっきり線引きされたインパクトは小さくないでしょう。

 

厚労省は、この研究班の報告書を踏まえ、今後、応召義務の考え方について全国に通知する考えです。

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

 

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(参考)

社会保障審議会医療部会(2019年7月18日)(厚生労働省)

医療を取り巻く状況の変化等を踏まえた医師法の応召義務の解釈に関する研究について(厚生労働省)

 

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