全国の病院に聞きました「看護師の採用、増やす?減らす?」

病院看護師の採用イメージイラスト

病院は、全国どこも看護師不足。

 

スタッフが足りずに夜勤の回数が多くなり、「早く人を増やして!」と祈ったことのある人も多いのでは。その半面、どこに行っても引く手あまたで「転職に強い」のは、看護師として働くメリットでもありますよね。

 

ただ、このごろは、「医療費削減で急性期病院のベッドが減らされていき、病院は、いずれ看護師余りの時代が来る」という話もチラホラ…。

 

病院ナースの数や採用、これから一体どうなるの???

 

日本看護協会から少し気になる調査結果が公表されたので見てみましょう。

 

 

看護師の採用「現状維持」「増やす」が圧倒的多数

2018年 病院看護実態調査」では、全国の病院に「看護職員の採用は増やすか、減らすか」を尋ねています(※)

 

※全国の病院8361施設を対象に調査票を郵送(2018年10月1~15日)。3634施設から有効回答を得た(有効回収率43.5%)。看護職員の採用については2018年度を基準に、2019年度の増減予定を尋ねた。

 

その結果、「増やす」が34.5%、「同じくらい」が53.7%だった一方、「減らす」とした病院は、わずか3.2%にとどまりました。

 

あなたの病院では看護師を増やす?減らす?調査結果グラフ

やはりと言うか、看護師を減らそうと考えている病院は、現状では少数派のようですね。

 

2025年に向けた「病院から在宅へ」の流れを受けて、これからは病床数を削減したり、急性期から回復期に転換したりする病院が出てくる、とされています。

 

そうなれば、病院に必要な看護師の数もおのずと少なくなると見込まれますが、その影響は、まだ現場には現れていないようです。

 

 

大病院は「減らす予定」も…?

ただし、調査結果を病床規模別に見ると、ちょっと気になる傾向が…。

 

400床以上の、いわゆる「大病院」では「減らす予定」がほかより目立っているのがわかるでしょうか。

 

病床規模別で見る看護職員の増減予定の棒グラフ。99床以下は増やす31.0%、同じくらい53.5%、減らす1.2%。100~199床以下は増やす36.5%、同じくらい53.4%、減らす2.5%。200~299床以下は増やす36.3%、同じくらい54.0%、減らす2.9%。300~399床以下は増やす35.9%、同じくらい54.4%、減らす5.4%。400~499床以下は増やす32.5%、同じくらい55.2%、減らす8.5%。500床以上は増やす36.7%、同じくらい53.1%、減らす5.9%

 

ここ数年、診療報酬改定のたびに、入院に占める重症患者の割合など、「7対1の急性期病院が7対1であり続けるためのハードル」は上がってきています。

 

また、それぞれの病院が担う機能をはっきり分けて、地域内で役割分担しようという流れも加速しています。

 

「大病院」の診療報酬上の基準が500床以上から400床以上に引き下げられたことも、その一つ。

 

以前は500床以上の病院向けだった報酬やペナルティーが400床以上でも対象になるなど、400床以上の病院は高度な医療に特化するように誘導されているのです。

 

「400~499床」で看護師の採用を減らす予定が目立つのは、こうした流れを背景に、7対1の看護配置をやめるなど、病床の数・機能の見直しを始めた病院が出てきている――という可能性がありそうです。

 

今回の調査結果が一過性のものなのか、これからの動きに要注意です。

 

 

「増やしたい」トップ3は病棟、退院支援、外来

では、病院はどの部門の看護師を増やしたいと考えているのでしょうか。

 

その結果はこちら。

 

部門別の看護職員増減予定の棒グラフ。病棟は増やす37.8%、同じくらい50.9%、減らす3.2%。手術は増やす14.5%、同じくらい36.7%、減らす2.0%。救急は増やす9.4%、同じくらい24.8%、減らす0.4%。外来は増やす17.6%、同じくらい60.9%、減らす6.0%。訪問看護は増やす17.3%、同じくらい19.0%、減らす0.1%。退院支援・地域連携は増やす26.9%、同じくらい36.2%、減らす0.3%。該当部門がない・未定・無回答などは省略

やはり「病棟」が最も人員を増やしたい部門になっています。

 

注目なのは、増やすとする回答が2番目に多かった「退院支援・地域連携」

 

病院医療において、入院日数の短縮化や在宅復帰がかなり重要なポイントになっていて、入院前を含めた早期からの退院支援がますます評価されるようになっています。そのためには、地域の多職種とのスムーズな連携も求められ、こうした役割を担える看護師のニーズは明らかに増えてきています。

 

同じように、時代の流れが来ている「訪問看護」のニーズが「外来」と同程度にまで高まっている点も見逃せないですね。

 

 

離職率は横ばい

最後に看護職員の離職率を見てみます。

 

最新の2017年度の離職率は新卒が7.5%、全体が10.9%で、例年と同水準でした。

 

病院看護職員の離職率の折れ線グラフ。新卒の離職率は2013年7.5%、2014年7.5%。2015年7.8%、2016年7.6%、2017年7.5%。看護師全体の離職率は2013年11.0%、2014年10.8%。2015年10.9%、2016年10.9%、2017年10.9%

※離職率には定年退職を含む

 

離職率の高低は、採用の増減に影響しますが、全体的な動向としては横ばいが続いていますね。

 

 

現場への影響はまだない、けれど…

今回の日看協の調査は、あくまで「2019年度の採用予定」を病院に尋ねたもので、5年後、10年後を見通した採用計画とイコールではありません。

 

これから2025年に向けて、二次医療圏ごとにどの病床が過剰・不足かを決める「地域医療構想」の話し合いが進んでいたり、7対1病床を減らしたい国が診療報酬を厳しくしたりと、病院をめぐる状況は変化しています。

 

今回の結果からは「まだ現場への影響はない」ことが読み取ましたが、長期的には少しずつ看護師の採用事情も変わっていくでしょう。その兆しがいつごろ現場に現れてくるのか、注意しておきたいところです。

 

看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko

 

 

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(参考)

2018年 病院看護実態調査日本看護協会

「大病院」って、ベッドが何床以上?…診療報酬改定で基準下げ(ヨミドクター)

 

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