仕事なんだから、無理に仲良くなる必要はないよ|ナースのお悩み処方箋【24】

「仕事なんだから、無理に仲良くなる必要はないよ」


やっと仕事を覚え始めた頃の話です。

 

少しずつ看護という仕事の面白さが垣間見えて、患者さんとコミュニケーションすることが楽しくなってきました。
楽しいことには、人は時間を忘れてのめり込みます。

 

あの頃、担当になった患者さんについては何でも知りたくて、その人の持つ疾患だけでなく、どういう生い立ちをしてきたのか、ご家族とどんな関係を築いてきたのか、など調べては、看護記録に残していました。

患者さんも面倒臭い看護師が担当になったなぁと呆れていたと思います。

 

そんな時、どうしてもちゃんとコミュニケーションが取れない患者さんの担当になりました。

話しかけても無視か生返事。
答えてもらったとしても、ものすごく面倒臭そうにぶっきらぼう。

 

へこみました。
だって、ほかの看護師とは笑顔で会話してるんです。
ねぇ、私、あなたに何かしましたか?
そう質問したくなったくらいです。

(後に先輩看護師が質問したところによると、昔、彼女を苛めた人に顔が似ているから腹が立ったとのことです。そんなの、私、関係ないじゃん!)

 

上手く関係を築けないのはその患者さんとだけで、他の患者さんとは上手く行っていたのですが……ダメですね、順風満帆の時って、ひとつの停滞が許せなくなるんです。
上手く行かないことに気を取られて、他の患者さんとの関係もギクシャクしてきました。
こうなると、負のスパイラルです。
だんだん仕事が面白くなくなってきました。

 

楽しい仕事をしたい。
でも、状況がそれを許さない。

 

日に日に元気がなくなってゆく私を見かねて、先輩看護師たちが心配して、いろいろアドバイスをくれますが、状況は何ら変わりません。
だって、その患者さんは私のことが嫌いなんだから。

 

ある日のこと、師長に別室に呼び出され、盛大に叱られました。
「プロなら自分の感情に振り回されるな!」と。

 

「患者さんと仲良くなっておいた方が仕事はスムーズに進みやすくなるけど、仲良くなれないことで仕事のやる気をなくすなんて、本末転倒でしょ!」

 

そして、お決まりの『患者さんは友達じゃないのよ』というコトバ。
新人時代、にタコができるほど聞かされていましたが、仕事に慣れてきた油断から忘れていたんですね。

 

患者さんは友達じゃない、というコトバは、普通は、必要以上に患者さんと仲良くなりすぎる看護師への制止のコトバで使われることが多いと思います。
が、仲良くなれなくてもいいんだよ、という意味でも使えるんですね。
目から鱗でした。

 

これを読んでいる看護師さんたちの中にも、他の看護師さんのように、患者さんと仲良くなれなくて……と悩んでいる人もいると思います。
そんな人には、このコトバ。

 

「無理に仲良くなろうとする必要はないんですよ」

 

ね、少しは気が楽になったでしょう?
のびのびと、あなたらしい看護サービスを提供してくださいね。

 

 


 【岡田久美】 兵庫県出身。看護書籍の編集とゲームシナリオライターを本業に、フリーの看護師として活躍中。いつでもどこでもどんなところでも勤務できるオールマイティな看護師を目指し、これまでの勤務職場は病院、クリニックなど30以上。

著書に「看護師の流した涙」(ぶんか社)がある。

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