その仕事、誰のための仕事?|ナースのお悩み処方箋【25】

 

「その仕事、誰のための仕事?」


仕事が面白くないと思っている人、これを読んでいる方の中にも沢山いると思います。
でも大丈夫。
仕事の仕組みを理解すると、どんどん仕事が楽しく面白くなってゆくものです。

 

先輩看護師にお手伝いをお願いされて、やっと私も戦力として見てもらえるようになったんだなぁと実感したり。
患者さんからちょっと重要な頼まれごとをされて、患者さんに信頼される気持ちよさを覚えたり。
仕事をする自分、デキるようになってきた自分。
そういうものに酔いそうになってきちゃうんですね。

 

そんな中、患者さんのおつかいをこなし、感謝のコトバと共に、意気揚々と詰所に戻ってきた私に、先輩看護師がピシャリと投げつけるように言ったのが、冒頭のコトバです。

 

いい気持ちで戻ってきたのに、一気に不機嫌になりました。
「誰のための仕事、って……そりゃ、患者さんのためでしょう?」
私はそう反論しました。
だって、心底、そう思っていましたから。
でも、先輩看護師は、私を馬鹿にしたような顔で、溜め息をついたのです。

 

「基本的に、私たち看護師が何かをすることには、賃金が発生してるの、わかってる?
看護師はサービス業で、専門技術職なの。
患者さんの買い物は、この病院の看護師であるあなたがしなければならないことなわけ?
特定の患者さんの私用をこなすことが、病院からの給料に入ってるって思うの?」

 

私は更に反論します。
「でも、患者さんは困ってました!」
「看護師が入院患者さん全員の私的な買い物を引き受けてたらキリがないでしょ。
通常の業務をしながら、そんなことできるの?」
「全員の分は無理ですけど……困ってる患者さんの買い物くらい……」
「困ってる困ってないの線引きは誰がするの?
あなたが勝手に決めて、他の患者さんから公平じゃないってクレームつけられたら、どう責任取るつもり?」
私は答えられませんでした。

 

「患者さんに何かをしてあげて、お礼を言ってもらうと気持ちいいよね、役に立てたって思えるよね。
でもね、それはただの自己満足なんだよ。
おむつ交換をしたり、食事介助をしたりしてお礼を言われることとは、全く違うの。
自己満足の仕事は、自分のための仕事で、患者さんのための仕事じゃないの」

 

正直、へこみました。
先輩看護師が根気強く説明してくれたけど、その時は実はよくわかってなかったんですね。

 

でも、私にも後輩ができた時、その子が同じようなことをしていて、初めてわかったんです。
仕事に対して、誰のためにやるのかという意味をしっかり考える。

 

この先輩のコトバがあったからこそ、今、患者さんの都合に振り回されず、看護師として、公平に適切なサービスを提供できるようになったと思っています。
……とはいえ、患者さんに「これくらい、やってくれてもいいじゃないか」とケチ呼ばわりされると切なくなるんですけどね。

 

 


 【岡田久美】 兵庫県出身。看護書籍の編集とゲームシナリオライターを本業に、フリーの看護師として活躍中。いつでもどこでもどんなところでも勤務できるオールマイティな看護師を目指し、これまでの勤務職場は病院、クリニックなど30以上。

著書に「看護師の流した涙」(ぶんか社)がある。

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