オープンベッド |いまさら聞けない!ナースの常識【20】
毎日の業務の中で触れているけど、『いまさら聞けない』ことってありませんか?
知っているつもりで実は説明できない基礎知識や、ちょっと気になるけど調べるほどでもないな、なんてこと。
そんな看護師の素朴な疑問を、元看護師ライターがこっそり教えます。
Vol.20 オープンベッド
地域医療連携の1つのスタイルとして確立されているオープンベッド(開放型病床、厚生労働省では共同利用型病床ともいう)制度。地域全体で患者の病態に合わせた治療を行い、医療サービスの向上を図るシステムだ。
オープンベッドとは何か
実はこの診療方式は、昭和の時代から「共同利用型施設」として一部の限られた医療機関で行われていた。しかし1997( 平成9 )年の第三次医療法改正において、地域医療連携病院の立場が明確となった。「地域医療連携支援病院」と名乗れる条件として、原則として200 床以上の病床を持つ病院で、以下の機能を有することなどが必要となる。
① ネットワーク機能( 紹介患者への医療提供、施設・設備の共同利用及びオープン化)
② 救命救急機能
③ 臨床研修機能
(平成23年6月現在の統計では、全国で396医療機関が地域医療連携支援病院として認可されている)
患者がオープンベッドを使用する場合、かかりつけ医は日中の決められた時間に必要な手続き(地域連携室にいって白衣と名札をもらう、とか)を踏めば、比較的自由に患者の診察が行えるようになっている。
病院内での診察の記録は3枚複写などになっており、1枚を自院に持ち帰ってカルテに貼り付けることもできる。病院側もかかりつけ医の診察や指示があったことを記録し、記載した内容を診療録として保存する。1人の患者に対し、同じ日時のカルテ記載内容が、公的な記録として2つ存在することになる。
つまり、 同じ診療情報を複数の医療機関で共有するので、タイムラグなく患者情報を共有できる。また一度に記録したものを2か所で保存することで、サマリー化された情報ではなく、全情報が記録・閲覧できることになる。
オープンベッド制度の目的は?
目的は、「地域における患者サービスや医療水準の向上」とされている。
つまり、患者がうける医療サービスのレベルについて、中核病院と地域の病院・診療所間での格差を無くし、ひいては地域間での格差も減らしていこう、という考え方なのである。
それぞれの立場でのメリット・デメリット
地域医療連携支援病院側のメリットは?
地域の病院・診療所の立場で考えれば、患者にスムーズに入院してもらえるというだけでなく、それぞれ独立した地域の病院・診療所を組織化することで、オープンベッドをプライマリーケアの拠点として、地域内の病院が連携して治療にあたることができる。
【具体的には…】
●CTやMRIなどの医療機器の回転率が上がる
●紹介・逆紹介による患者数増
などがある。
また、かかりつけ医が副担当医などになることで、これまでの経過や既往歴なども把握しやすく、治療内容に反映することが出来るだろう。
この制度を利用する患者さんにとってメリットは?
オープンベッドを利用して入院した場合、入院している病院での入院・治療費の他に、かかりつけ医が診察にくると、その分の保険点数も開業医側で算定できることになっている。つまり、その日だけは2つの医療機関から医療費を請求されることになるのだ。
と言うと、一見、患者側のメリットはないようにもみえる。
しかし、ちょっと具合が悪い時にいつも診てくれていた顔見知りの先生が、他の病院に入院しても診察してくれたり、大がかりな検査や手術に立ち会ってくれたりすることは、大きな安心感となるだろう。
看護師の仕事は変わるのか
では、私たち看護師はどうだろう。オープンベッドを担当する場合、看護師の業務は何が変わるのだろうか。
一般の入院患者を担当する際と大きく違うのは、普段はあまり見慣れない医師からの指示を受けるということだ。オープンベッドに入院中の患者に対し、基本的には入院先(地域医療連携支援病院)の医師が担当医となることが多い。
しかし、かかりつけ医は受付などの手順を踏めば比較的自由に出入りでき、患者を診察しすることができる。その際に必要と思えば投薬や処置などの指示を病棟看護師に対して出していく。
もし、その指示内容に疑問・質問がある場合はどうするか。基本的に主担当医は院内の医師なので、そちらに確認すれば良い。しかしどうしても必要な場合は開業医に連絡を取ることもある。
図1 オープンベッドに対する医師と看護師の関係性
オープンベッドを利用しているとはいえ、あくまで自分の勤務先に入院している患者なので、患者に対する看護行為に大きな違いはない。検温もするし、熱があればクーリングもするし、指示があれば点滴もする。CTやMRIなどの医療機器を使用した検査目的の場合もあるが、それならば検査前後の看護ケアもある。手術が必要なら術前術後の看護ケアもあるし、入院から退院までは概ねクリティカルパスに則った流れになるだろう。
逆に、入院までの経過や既往歴については、開業医側からの情報により、自分が聴取する問診よりも詳細に知ることが出来そうだ。
オープンベッドのシステムが患者にとって「安心して医療を受ける」という最大のメリットがあるのであれば、良い面がさらに発展し、実現可能な医療機関(地域)が増えることを願う。
【岡部美由紀】