レーザー光線の仕組み |いまさら聞けない!ナースの常識【21】

毎日の業務の中で触れているけど、『いまさら聞けない』ことってありませんか?

知っているつもりで実は説明できない基礎知識や、ちょっと気になるけど調べるほどでもないな、なんてこと。

そんな看護師の素朴な疑問を、元看護師ライターがこっそり教えます。

 

Vol.21 レーザー光線の仕組み

 

今や様々な医療現場で活用されているレーザー光線。アナタも看護師業務の中で一度はお目にかかったことがあるかもしれない。しかしその仕組みや使用上の注意点についてはどうだろうか。ここでは医療用レーザーの種類と、レーザー光線の仕組みについておさらいしてみる。

 

 

医療分野でのレーザーいろいろ

医療分野でのレーザーと聞くと、シミ・ソバカスの除去や永久脱毛など、主に美容整形分野では馴染みが深いかもしれない。しかし実は、他にも様々な分野で治療に使われている。

 

(1)PDT(光線力学的療法)

Photodynamic Therapyの頭文字をとってPDTと呼ばれるがんの治療法。予め患者に腫瘍親和性光感受性物質を静注し、48~72時間後(がん組織と正常組織間での薬品濃度差が最大となる時間帯)に、薬品の励起波長と一致する波長のレーザー光を照射する。

 

すると、がん細胞に取り込まれた薬品が励起され、薬品の持つエネルギーはがん組織中の酵素に乗り移って活性酵素を生成する。この活性酵素の殺細胞性によってがん組織を壊死させるが、正常細胞にはほとんどダメージを与えない

 

(2)眼科におけるレーザー

眼球は光に対して特殊な性質をもつ構造になっており、レーザー治療の有効性が高い。角膜切除屈折手術、虹彩切除術、強膜切除術、眼底組織凝固術などがある。

 

現在では角膜屈折矯正手術として、

角膜切除術(photorefractive keratectomy、PRK)

上皮細胞屈折矯正術(laser epithelial keratomileusis、LASEK)

角膜内切削形成術(laser in situ keratomileusis、LASIK)

 

の3種類があり、中でもLASEK(レーシック)が徐々に主流となってきている。

 

(3)レーザー砕石術

外科的手術における新しいレーザー治療として、ホルミウムレーザーを使用した破砕術がある。レーザーの生み出すエネルギーが光ファイバーと結石の間にある水を蒸発させて気泡を形成し、またエネルギーを結石に伝えることで結石を粉末状に破壊する。膀胱結石の治療によく用いられている。

 

医療用レーザーはこの他にも、椎間板ヘルニアいびき・無呼吸、前立腺肥大症、アレルギー(花粉症)、下肢静脈瘤などの治療にも応用されている。

 

レーザー使用上の注意点

レーザー光線を生み出すためには、媒体となる物質が必要となる。これらの物資の持つ性質などにより、生み出されるレーザー光線の波長が変わり、名称も変わる。

 

レーザー光線を使用する際のリスクを軽減するために、まず、波長の種類によって仕様用途が異なることを知っておこう。これを間違えてしまうと必要な治療ができないし、場合によっては重大な医療事故に繋がることもあるので注意が必要だ。

 

例えば、皮膚用レーザー1つをとっても、宝石のルビーを媒体とするルビーレーザーは主にシミやアザの治療に使用されるが、ダイオードを媒体とするダイオードレーザーは脱毛に使用される。

 

図1 レーザー光線の種類と波長のちがい

 

さらに間違った使い方による事故もある。取り扱う者の不注意によってレーザーポインターの光を目に直接浴びてしまい、網膜の障害を負った事故が実際に起きているのだ。

 

それ以外に、レーザー光線の照射で対象物が熱を帯びることによる事故の可能性もある。例えば、喉頭気管周囲のレーザー手術では、気管内チューブへの誤照射による発火損傷事故が実際に起きている。

 

もちろん、レーザーへの耐性をもった気管内チューブはあるのだが、使い方を間違えると気道熱傷という重大な事故を起こす可能性もあるのだ。

 

治療のために実際にレーザー光線を取り扱うのは医師かもしれないが、準備や介助を行う看護師は、つねに患者の安全を考えて行動する必要があるだろう。

 

【岡部美由紀】

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