「7対1」の病院が減る?|2018年度診療報酬改定

2年ごとに「医療の価格」を決める診療報酬改定。

2018年4月に控えた次回の診療報酬改定は、かなり大きな見直しが予想されています。

 

中でも目玉となるのが、入院医療の評価に関する抜本改革。

一部では、「看護職員の配置が手薄になるかも…!?」と懸念されているのです。

 

 

「7対1」と「10対1」が一つになる日

一般病棟の入院基本料は現在、入院患者7人に対して看護師1人を配置する「7対1」、患者10人に対して看護師1人の「10対1」など、医療の内容に応じて異なる看護職員の数によって、病院に支払われる報酬が決まっています。

 

次回の改定で、厚生労働省は、「7対1」と「10対1」を再編・統合しようという案を示しています。

 

7対1、10対1入院基本料の再編案、基本部分と診療実績に応じて段階的に評価される実績部分の組み合わせになる

中央社会保険医療協議会(2017年12月6日)資料をもとに編集部作成

 

この案によると、病院に支払われる報酬は、「基本部分」「診療実績に応じた評価部分(実績部分)」の組み合わせになります。

 

このうち「基本部分」は、現在の「10対1」に相当する条件(看護配置、平均在院日数21日以内など)をクリアした病院に支払われるもの。さらに、重症患者の受け入れ割合などに応じた「実績部分」を段階的に設定し、基本部分に上乗せしようという考えです。

 

現在の「7対1」に相当する報酬は、「実績部分」の最高評価を上乗せすることで確保される見通しです。

 

 

国は「7対1」を減らしたい

「7対1」と「10対1」は、急性期医療を担う看護体制ですが、厚労省は、「高齢化によって今後、急性期医療のニーズは減少する」としています。

 

特に、診療報酬が高く、「ベッド数が増えすぎ」とも指摘される「7対1」の病床を削減したいのが本音です。次回改定で持ち上がっている病床の再編・統合案も、「10対1以上7対1未満」の評価を設けることで、「7対1」から「10対1」への移行を誘導する狙いがあります。

 

 

「十分な数の看護師を配置できない」

こうした流れに対して、「看護職員の配置が手薄になる懸念がある」と警戒しているのが、日本看護協会(日看協)です。

 

日看協は、「重症患者を受け入れる高度急性期・急性期の病院を評価するために、基本部分に7対1を追加するべきだ」と要望しています。

 

その根拠は主に次の2つ。

  • 高齢化によって疾病構造が変わったとしても、がんや心疾患、脳血管疾患などの重症患者が一定程度いることは変わらない
  • 重症患者に対応するには、7対1以上の手厚い看護配置がそもそも必須

 

重症度の高い入院患者がいるにもかかわらず、基本部分が「10対1」の報酬だけでは、十分な数の看護師を配置できないと指摘しています。

 

そうなれば、

  • 医療安全上のリスクが高まる
  • ケアの質と量が低下する
  • 身体拘束が増える
  • 現場の看護職員の負担が増え、勤務環境がさらに悪化する

-といった事態も懸念されます。

 

 

2025年へ、最後の大改革になる2018年度診療報酬改定

そもそも次の診療報酬改定で大改革が見込まれているのには、2つの背景があります。

 

1つは、2018年度の改定が介護報酬とのダブル改定(同時改定)であること。

 

3年に1回、見直しがある介護報酬と、2年に1回の診療報酬。

ということは、この2つが同時に改定のタイミングを迎えるのは、「6年に1回」となります。

高齢化で医療と介護の連携がますます重視されている中、6年に1度の同時改定は、一体的な見直しをするチャンスなのです。

 

もう1つの背景は、2025年問題が関係しています。

 

団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者となり、日本が本格的な超高齢社会に突入する2025年。医療費は増え、医療・介護サービスの担い手となる現役世代は極端に不足します。サービス提供の仕組みも、今あるものから大きく変えていかなければなりません。

 

そのチャンスが、6年に1度の同時改定。2024年度にも同時改定はやってきますが、そこで大改革をしていたのでは間に合いません。実質、次回の2018年度同時改定が「最後のチャンス」だというわけです。

 

 

入院料見直しの流れは止まらない

入院料の大幅見直しについて、日看協は、「現場への影響が大きい変更なのに、十分に議論されていない」として先送りするよう求めています。

 

ですが、この流れが止まったり、大きく方向転換したりすることはまずないでしょう。

 

具体的な変更内容は年明け以降、明らかになっていきますが、病棟看護師の業務負担にも直結するだけに、見直しの行方が気になるところです。

 

【烏美紀子(看護roo!編集部)】

 

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(参考)

一般病棟入院基本料(7対1、10対1)に関する要望書・PDF(日本看護協会、2017年12月13日)

中央社会保険医療協議会総会(第376回)資料・入院医療(その8)について・PDF(厚生労働省)

 

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