夜勤の健康被害は深刻。看護師はどう対策すればいいのか?

前回は、3交代正循環のシフトによって休日が十分にとれない可能性についてお伝えしました。

シフトについては、「しっかり休めるのか」「夜勤後、体のペースを戻せるのか」だけでなく、夜勤の健康被害も重要な問題です。

夜勤が看護師の体にもたらす影響について解説します。

【文:白石弓夏(看護師)】

 

夜勤の健康被害は深刻。看護師はどう対策すればいいのか?

 

◆目次

 

 

夜勤が看護師の体にもたらす影響

何時間の夜勤が1番健康被害が少ないのか―。

現在、日本看護協会では、各国の研究論文を精査する作業を進めています。

2017年5月18日に行われた会合で、その一端が報告されたので、お伝えします。

 

 

【1】乳がんと前立腺がんのリスク

夜勤者は長時間照明にあたることにより、抗酸化作用や抗腫瘍作用があるメラトニンがより抑制されます。

メラトニン抑制は、エストロゲンを介して、乳がん(男性の場合は前立腺がん)に罹患する可能性が高くなります。

 

(脚注)

 

特に夜勤時に仮眠がない場合は、メラトニンがさらに抑制される傾向にあるとされています(Bracciら、2013)。

 

 

【2】メタボリック症候群のリスク

夜勤従事者は日勤者に比べて総コレステロール、トリグリセリド、体脂肪率などが上昇する傾向にあります。

そのため、メタボリック症候群のリスクが高くなるという報告があります(Biggiら、2008)。

 

 

 

【3】睡眠障害のリスク

看護師の夜勤従事者において、睡眠薬の服用率は3交代よりも2交代の方が多いという報告があります。

2交代では11.5%、3交代は6.6%の割合で服用しているという結果です(Futenmaら、2015)。

 

 

交代制勤務により体内時計に反する睡眠パターンが多くなり、勤務中に強い眠気や就寝時に眠れないなどの睡眠障害が起こることは、交代勤務睡眠障害(SWD)として定義されています。

 

私が2交代で勤務していたときには、夜中に2時間の仮眠がありましたが、ベッドに入ってもすぐには眠れないことも多く、せいぜい1時間ぐらいしか眠れませんでした。

 

その仮眠さえも、忙しいと入れない場合があります。

そうなると、0時~5時ころまでは常に眠い状態です。

そして、朝に眠気のピークがきて、栄養ドリンクやコーヒーを飲んでやる気を出していました。

 

3交代の場合は、夜中の3時頃から自宅で眠っていました。

昼過ぎに起きて、夜は0時頃に布団に入りますが、昼過ぎまで寝ていると、寝付きが悪く睡眠薬を使ったこともありました。

 

夜勤は、勤務中も大変ですが、夜勤明けから次のシフトまでの時間で、睡眠をとり疲労回復をし、体のペースを戻さなくてはいけないこともつらいです。

 

 

夜勤4日目は事故のリスクが36倍

夜勤の事故は4日連続の場合、1日だけの勤務の36倍に増えるという報告があります(FolkardとTucker,2003)。

 

 

私が深夜勤をしていた頃、0時過ぎに出勤するときは、まだそこまで眠くはないのですが、1~2時くらいに最初の眠気の波がやってきていました。

 

忙しければ、あっという間に朝になるのですが、これが落ち着いていると時間が遅く感じるので、2~5時くらいまではかなり眠いです。

 

5時過ぎになると朝の点滴や採血、起床した患者さんのナースコールなど対応することが増えてくるため、朝食時間くらいまではバタバタ過ぎていきます。

 

落ち着いているときの眠気も、忙しいときの眠気も事故のリスクになります。

これが4日続くと考えると、36倍というのは納得の数字です。

 

 

看護師はどう対策すればいいのか

日本看護協会や、厚生労働省を中心に、夜勤のリスクを減らすためのさまざまな取り組みがなされています。

しかし、実際に現場レベルで変化を実感できることはまだ少ないようです。

 

2017年5月の会合では、「夜勤にはベストはないがベターはある」と結論づけられました。

できるかぎり、看護師の健康が守られ、生活に支障なく、安全に勤務が遂行できるよう、管理者とスタッフとのコミュニケーションを十分にとることが対策になるということです。

 

働いている看護師にも個性があるように、独身の看護師や子どもがいる看護師、親の介護が必要な看護師によって、働きやすいシフトは人それぞれです。

 

さらに、病院などでは大勢のスタッフが働いているため、全員同じシフト勤務というのは難しいでしょう。

 

勤務を選択制にできるなど、ある程度自分でスケジュールを立てられるような体制が構築されれば、今よりも働きやすい労働環境になるのではないでしょうか。

 

***

次回は、月の夜勤時間72時間以内の規制と、看護師の離職率の関係についてお伝えします。

 

(脚注)

記事中の図は、2017年5月18日(木)に行われた「平成29年度 都道府県看護協会 看護労働担当者会議」配布資料を基に編集部にて作成しました。

 

(参考)

「平成29年度 都道府県看護協会 看護労働担当者会議」配布資料(日本看護協会

交替勤務者の睡眠障害要因(時計遺伝子多型)の研究(谷山ゆかり、他)

 

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