中心静脈穿刺合併症に関する死亡事例で9つの再発防止策
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中心静脈穿刺合併症に関する死亡事例で9つの再発防止策
制度スタートから1年半が経過した医療事故調査制度について、第三者機関である医療事故調査・支援センターはこのほど、初となる再発防止策を提言した。テーマとなったのは、院内調査報告書の中でも最も報告件数が多かった「中心静脈穿刺合併症に係る死亡」。センターとして指定されている日本医療安全調査機構が4月5日に公表した。
満武 里奈=日経メディカル
制度開始から2016年12月までの1年3カ月の期間で、医療事故調査・支援センターに報告された院内調査結果報告書226件のうち、「中心静脈穿刺合併症に係る死亡」事例は10例。この10例を分析対象とし、再発防止策として9つの提言を示した。
10例中6例は「超音波ガイド法」による事例
分析対象となった10例中6例は、中心静脈穿刺を「超音波ガイド法」で行った事例だった。超音波ガイド法は従来法(ランドマーク法)に比べて穿刺成功率が高く、合併症の発生が低いとされる手法。そのため、今回示した再発防止策の中ではこの手技を中心に解説を行い、「超音波ガイド法の習得に向けて」と題する動画も併せて公開している((動画「超音波ガイド法の習得に向けて」)。
日本医療安全調査機構常任理事の木村壯介氏は日経メディカルの取材に対し、「中心静脈穿刺に係わる合併症等に対しては、これまでも多くのガイドラインで手技上の防止策の検討がされてきた。それにもかかわらず、2016年の12月までの報告内容の中で最も件数が多く、問題として指摘されたのがこの『中心静脈穿刺に係わる死亡事例』だった。さらに報告例を分析する中で、内頸静脈穿刺の際に超音波ガイド下に行っている例が多いことが判明した。超音波ガイド下で行っていても誤穿刺(動脈穿刺、気胸など)が起き、死亡に至っていることから、超音波装置を使用する際の注意点、超音波ガイドを正しく使用するためのトレーニングの重要性について、動画も含めて防止策として提示した」とコメントしている。
提言された9つの再発防止策は、以下のとおり。
【適応】
提言1 中心静脈穿刺は、致死的合併症が生じ得るリスクの高い医療行為(危険手技)であるとの認識を持つことが最も重要である。血液凝固障害、血管内脱水のある患者は、特に致命的となるリスクが高く、中心静脈カテーテル挿入の適応については、末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)による代替を含め、合議で慎重に決定する。
【説明と納得】
提言2 中心静脈カテーテル挿入時には、その必要性及び患者個別のリスクを書面で説明する。特にハイリスク患者で、死亡する危険を考慮しても挿入が必要と判断される場合は、その旨を十分に説明し、患者あるいは家族の納得を得ることが重要である。
【穿刺手技】
提言3 内頚静脈穿刺前に、超音波で静脈の性状(太さ、虚脱の有無)、深さ、動脈との位置関係を確認するためのプレスキャンを行うことを推奨する。
提言4 リアルタイム超音波ガイド下穿刺は、超音波の特性とピットフォール(盲点)を理解した上で使用しなければ誤穿刺となり得る。術者はあらかじめシミュレーショントレーニングを受けることを推奨する。
提言5 中心静脈カテーテルセットの穿刺針は、内頚静脈の深さに比較し長いことが多いため、内頚静脈穿刺の場合、特にるい痩患者では、深く刺しすぎないことに留意する。
提言6 穿刺手技時、ガイドワイヤーが目的とする静脈内にあることを超音波やX 線透視で確認する。特に内頚静脈穿刺の場合、ガイドワイヤーによる不整脈や静脈壁損傷を減らすために、ガイドワイヤーは20cm 以上挿入しない。
【カテーテルの位置確認】
提言7 留置したカテーテルから十分な逆血を確認することができない場合は、そのカテーテルは原則使用しない。特に透析用留置カテーテルの場合は、致死的合併症となる可能性が高いため、カテーテルの位置確認を確実に行う必要がある。
【患者管理】
提言8 中心静脈カテーテル挿入後の管理においては、致死的合併症の発生も念頭において注意深い観察が必要である。血圧低下や息苦しさ、不穏症状などの患者の変化や、輸液ラインの不自然な逆流を認めた場合は、血胸・気胸・気道狭窄、カテーテル先端の位置異常を積極的に疑い、迅速に検査し診断する必要がある。また、穿刺時にトラブルがあった場合などを含め、医師と看護師はこれらの情報を共有し、患者の状態を観察する。
提言9 中心静脈穿刺合併症出現時に迅速に対応できるよう、他科との連携や、他院への転院を含めたマニュアルを整備しておく。
センターは今後、「『肺血栓塞栓症』『アナフィラキシー』の順で再発防止策を示す予定」(木村氏)だという。
医療事故調査制度は、「医療に起因する予期せぬ死亡」が発生した場合、第三者機関である医療事故調査・支援センターに報告した上で院内調査を行うことを全国の病医院に義務付けるもの。2015年10月にスタートした。医療事故調査・支援センターは、病医院から予期せぬ死亡事例が発生した際の報告を受けるほか、各病医院からの求めに応じて助言を行う機能も持つ。そのほか、院内事故調査結果を各病医院から受け取り、複数の事例を集めた上で分析を行ったり、病医院や遺族から調査を依頼された場合は、調査を実施する<関連記事:スタート間近! 医療事故調って何だっけ? (全文を読むためには「日経メディカル」へのログインが必要です)>。
■関連サイト(日本医療安全調査機構)
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