ツアーナースに必須のスキルって何だろう?|ツアーナースのつれづれ日誌【3】
前回、ツアーナースの同行先選びのコツについてお話しました。
今回は、ツアーナースとして同行するにあたり私が必須と考えているスキル・あれば役立つスキルについてお伝えします。
(ツアーナースの仕事内容【まとめ】は▶こちら)
ツアーナースのつれづれ日誌【3】
ツアーナースに必須のスキルって何だろう?
目次
- はじめに
-
◆必須のスキル
-
◆あれば役立つスキル
-
◆今週のつれづれ看護実践
はじめに
一般的なツアーナースの募集要件には特に必要なスキルなどは記載されていないことがほとんどです。
では、「看護師なら誰でもできるのか?」と言われると、私はそうは思いません。仲の良い看護師の友だちに「楽しいからやってみなよ〜」と軽々しくは言えません。
それは、ツアーナースの責任の重さを身に沁みて感じているからです。
ツアーナースをやるにあたって、責任ある職務をこなしながらも、楽しんで仕事をしてもらうために、知っていてほしい知識や技術をお伝えします。
ツアーナースをやるうえで、必須と考えているスキルは以下のものです。
- 判断力・行動力・体力
- コミュニケーション能力
このほかに、“あれば役立つ”ものは、このようになります。
- 小児科経験
- 一般外科・内科、整形外科、救急外来などの経験
また、海外旅行の添乗では、英会話のスキルが必要となる場合があります。
それぞれについて具体的に解説していきますね。
スキル【1】判断力・行動力・体力
◆判断力・行動力
重症・重傷の子どもが出てしまった緊急時に、迅速に判断し、先生たちやツアー会社、宿のスタッフなどに指示を出さなければならない場面があります。
医療職は看護師だけであり、病院での急変時のように、周囲がスムーズに動いてくれるわけではありません。
状態を詳しく調べる機器もありません。
子どもたちがパニックになる可能性もあります。
それを上手く落ち着かせる人、病院や救急車を手配する人、看護師と一緒に手当てを手伝う人など、役割分担が必要です。
ツアーナースには、判断のうえで指示を出し、自らも行動していく力が求められます。
◆体力
行程によっては、登山やハイキングなどが含まれます。
弱音を吐く子どもを励ましながら、軍手を使用し、ロープを伝って本格的に山登りしたこともありました。
ツアーナースには、体力も必須です。
スキル【2】コミュニケーション能力
普段、病院では医師やリハビリスタッフ、医療事務や検査技師などの医療職チームがあります。
ツアーナースでも同様に、「学校の先生」「ツアー会社のスタッフ」「バス会社のスタッフ」「宿や行程先でのスタッフ」などのチームワークが求められます。
具合の悪い子がいれば、すぐに担任の先生に報告し、相談します。
行程中でも宿で休まなければならない場合は、宿のスタッフに相談するなど、連携が必須です。
子どもとの関係も大切です。
子どもは初めて会う看護師に対して、きちんと症状を伝えられず、悪化するまで我慢してしまう子もいます。
症状を早期に発見するためにも、学校の先生や子どもとうまくコミュニケーションをとる力が必要です。
スキル【3】小児科経験
ツアーナースで起こる健康トラブルは、擦り傷などの小さな怪我だけではありません。
小児科特有の病気を発症する子ども多いです。
そのため、それらの疾患に対応できる力が必要になります。
表1小児科特有の疾患の例
- アレルギー疾患
- 気管支喘息
- 痙攣発作
- 発熱、頭痛
- 嘔吐、下痢
- 腹痛
- 打撲、骨折
- 擦り傷、切り傷
アナフィラキシーショックを起こした子どもに、エピペンを使用したり、気管支喘息の小発作と中発作の判断しなければならない場面もありました。
小児科経験は必須ではありませんが、事前に勉強しておくなどの準備は必要です。
スキル【4】一般外科・内科、整形外科、救急外来などの経験
これらの科目の経験があると役立つのは、子どもに多い症状や病気で、関連性があるからです。
特に救急外来では、まず看護師がバイタルを測り、ある程度緊急度や状態を判断することを経験するかと思います。
実際のツアーナースでも観察や判断力は重要なスキルとなり、役に立つ場面があります。
【今週のつれづれ看護実践】「校長先生、担架で運ばれる」
夏休み中の部活合宿でのことでした。
野球部やサッカー部、バスケ部やバレー部、剣道や柔道…複数の部活が合同で合宿を行っていたのですが、そういった場合、看護師は保健室で待機していることが多いです。
そんなとき、保健室近くの廊下を「ドタドタ」と走ってくる音が聞こえ、1人の先生が「看護師さん!こ、こ、校長先生が…野球グラウンドで…倒れてしまって…」と息を切らしてやってきました。
「校長先生」「倒れてしまって」という言葉に、すぐさま「心臓発作!?脳梗塞・脳出血!?」という緊急事態を想定しました。
頭の中でJCS(ジャパン・コーマ・スケール)を思い浮かべ、先生に「意識はありました?」などと確認すると、「いえ、そんな大怪我ではないと思います。『足が痛い!』といって倒れてしまって、起き上がれなくなってしまって…」とのこと。
50歳代後半の校長先生は学生時代に野球部だったようで、久しぶりに野球部の練習に付き合ったそうです。
そこで軽くスライディングをしたら、足を痛めて動けなくなってしまった様子。
救護バックや車椅子を持参し現場に到着すると、校長先生はベース近くでそのまま倒れこんだまま、大腿あたりを押さえていました。
持病や、抗血栓薬など薬を飲んでいるか確認(骨折の場合、内出血が止まりにくいことも)、痛みの箇所や知覚の左右差、足趾のしびれを確認し、骨折の可能性は低いと判断しました。
大腿部周囲の靭帯損傷や筋断裂(肉離れ)などの可能性は否定できないため、大腿部を動かさないよう担架で保健室へ。
患部を冷やし、弾性包帯で固定。
トイレへは松葉杖で、患足は荷重をかけないように説明しました。
問題は病院受診するかですが、少し様子をみてから、状態を判断することにしました。
3時間ほど経過し、痛みはかなり和らいできたとのこと。
患部の内出血や腫れなどはみられなかったため、校長先生本人と相談し、翌日学校へ帰ってから病院受診することに決めました。
こういったようにツアーナースでは子どもの健康管理ばかりに意識を取られてしまいがちですが、実は先生たちの怪我や病気も少なからずあります。
校長先生が倒れたときには、私もさすがに心臓が止まりそうになりました…。
突発的なことに臨機応変に対応できるよう、普段から今回ご紹介したスキルを磨いていこうと改めて考えた出来事でした。
【白石 弓夏(しらいし ゆみか)】
2008年より看護師として総合病院勤務。
小児科、整形外科・泌尿器科・内科の混合病棟、スポーツ整形外科を経験。
その後、派遣でクリニックや検診、ツアーナース、保健室業務、保育園、看護学校臨時教員などさまざまな働き方をし、現在フリーランスナースとして臨床にあたっている。
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