小児科ナースが保育園を立ち上げ!末永美紀子さん(前編)|憧れナースに会ってきた!

看護師をしていると、退院後の患者さんの生活が気になることってありますよね。

ご家族による24時間看護の苦労をにして「何か良い仕組みがあったらいいのに」とため息を覚えることも多いのでは?

“憧れナースに会いに行く”第4回は、小児科にいた頃のそんな漠然とした想いをカタチにして、自ら保育園を立ち上げた末永美紀子さんをご紹介します。

 

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末永美紀子さん

NPO法人こどもコミュニティケア代表。ナースオブザイヤー2012『インディペンデントナース賞』受賞。

大学卒業後、内科病棟・小児科病棟を経験し、出産を機に退職。2004年、1歳の子を抱えながら自宅を一部開放して「ちっちゃな保育所」をオープン、その後場所を移して「ちっちゃなこども園にじいろ」に。健康に不安が無い子も医療的ケアが必要な子も、共に育ち合える保育園として運営を続けている。


 

訪問したのは兵庫県神戸市中心部から電車・バスを乗り継いで約40分の閑静な住宅街にある「ちっちゃなこども園にじいろ」。

家庭的な保育園とは聞いていましたが、まさにご近所のお宅のような空間。カウンターキッチンでテキパキ動きながら、リビングで過ごす子どもたちの様子をうかがう保育士さん達の様子は、本当のお母さん方のようです。

 

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子どもたちのはしゃぎ声に癒されながら、さっそく気になっていた質問をしてみました。

小児科勤務=子ども好き?=保育園?と単純に連想してしまいますが、それなら普通の保育園や病時保育室に看護師として勤めるという選択肢もあったはず。どうして、あえてハードルの高そうな開業の道を選んだのでしょうか?

 

「看護師=子どもができたら辞めざるをえない」を何とかしたかった。

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「看護師や女医さんが安心して子どもを預けられる保育園があったらいいな、と思ったのがきっかけです。

病院に勤めていた時に、優秀な先輩たちが妊娠を機にやめていく姿を見て、もったいないと言うか後輩として『ホントに困る、お願いだから辞めないで!』という気持ちが強かったんです。小児科って教科書に載ってないような症例もたくさんあるでしょう?頼りにしていた先輩たちが辞めていくのは本当に心細くて。どんな形でもいいから残って欲しいって思ってましたね。」

 

しかし当時(約10年前)は夜勤免除の制度もなく、仮に日勤だけとしても時間通りに終わらないことも多く、保育園に子どもを預けながら病棟勤務を続けることはかなり困難だったそう。

 

それで『無いなら作っちゃえ!』と?

 

「はい(笑)。ちょうど自分の子も生まれたので、うちで預かって一緒に育てればいいじゃん!ってスタートしました。」

 

 

また小児科を退院していく子ども達を預けられる一時保育の場がないという実態も末永さんの背中を押したとか。

 

「せっかく症状が安定して退院できたのに、障害があったり医療的ケアが必要だとどこも預かってくれないんですよ。

療育園など障害のある子専用の施設はあっても、そこは母児同伴が原則で。結局、お母さんは子どもにつきっきりで、気の休まる時間が無いんです。『おばあちゃんだって何かあったら怖いと言って預かってくれない』って親御さん同士が話してるのを耳にしたことがあって。それも自分でやろうと思ったきっかけのひとつですね。」

 

病気や障害の有無に関わらず一緒に育てる環境を。

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『にじいろ』の特徴として、健康上の不安の無い子も病気や障害があって医療的ケアの必要な子も一緒に過ごしているという点がありますね?

 

「どんな子でも子ども社会に参加する権利があるって考えてるからです。

 

小児科で子どもたちに接していると、例えば病気や障害で体がすごく小さい子でも、成長する力や感情の豊かさを持っているのがよく分かるんです。どんな子でも子どもたちの中で一緒に育つことが大切で、それは人間としての権利だと思うんです。

 

病気や障がいは大事なその子の一側面ではあるけれど、でもその前に『◯◯ちゃん』というひとりの子どもであることが大事なんです。でも、世間からの見られ方って違いますよね。チューブをつけてるとそれだけで特別な目で見られてしまう。」

 

日頃、お互いに接する機会が少ないこともその一因と考えられそうですね。

 

「そう。同じような障がいや病気を持っている子ども同士で集まれる場も確かに必要だけど、地域の子どもたちの1人として育つ場も絶対必要だって思ったんです。だからそんな環境をうちで提供したかったんです。」

 

看護師ならではの発想

末永さんによると、保育業界という医療から少し離れたところに身をおくことで、自分のもつ“看護師ならではの発想”がよく分かってきたそう。

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「例えば、学校や保育園という行政が主導しているものって、なかなかレアケースには対応してくれないし、親御さんが『たとえ何があっても責任は問いませんから』とお願いしても参加を認めてくれないことが珍しくないんです。

 

でも病院って全く逆でしょう?家庭じゃケアできないからこそ、病院で何とかしよう。レアケースなんかはいつものことで、その度にどうしよう?って皆で知恵を絞って対応する。」

 

この「じゃあ、どうしよう?どうやったら実現できる?」という看護師ならではのスタンス・考え方こそが末永さんの原動力と言えそうです。

 

こうした末永さんの理想と信念のつまった保育園は多くの利用者から好意的な評価が寄せられる一方で、運営面では苦労の連続だったそう。

後編では、保育園運営を軌道に乗せるまでの苦労やこれからの課題、看護師さんへのメッセージをお伺いします!

 


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