准看護師は師長をやっていいの?|師長とのイザコザ解決策【7】
こんにちは。看護の悩み請負人のサトです。
私は元看護師ですが、今はナースからの悩み相談を仕事にしています。
さて、今日のお悩みは?
師長とのイザコザ解決策【7】
准看護師は師長をやっていいの?
◆ナースのお悩み
介護施設で働いている看護師です。
高齢者の看護が好きなので介護施設も経験してみたいと思って転職しました。
そうしたら…!
師長(管理職)が准看護師だったんです。
私の感覚としては、驚いてしまって…。
施設長に、「准看護師が管理職をしてもいいのですか?」と聞きました。
すると施設長は、「彼女はベテランなので、管理職を任せている」という回答でした。
実際、師長は経験豊富で頼りになります。
優しく、質問すると丁寧に答えてくれます。
でも、この体制にほんとうに問題がないのか気になってしまって…。
介護の業界では准看護師でも役職につくのは当たり前ですか??
モヤモヤしたままでは、一緒に働いていけません。
どうしたらいいのでしょうか?
◆目次◆
准看護師の上司にはこのように伝える
「管理職と看護スタッフの責任範囲を教えていただけますか?」
准看護師の上司にはこう伝えてみましょう。
ポイントは、管理の仕事(マネジメント)と、看護の仕事の役割分担を明確にして、互いに確認することです。
でも、そもそも看護師の上司を准看がすることはできるのでしょうか?
答えとしては「可能」なのですが、看護師として注意すべき事柄がいくつかあります。
最初に、今回の前提となる看護師と准看護師の違いを解説しますね。
【看護師と准看護師の違い】「指示を出す」か「指示を受ける」か
(日本看護協会ホームページより作成)
看護師と准看護師の法律上の大きな違いは、「医師・歯科医師または看護師の指示を受けて(中略)行う」と定められている部分です。
つまり、看護師は「指示を出す」役割、准看護師は「指示を受ける」役割、ということです。
これが、「保健師助産師看護師法」(保助看法)に定められています。
【法律上NGなこと】トラブルを防ぐために
看護師と准看護師は教育内容も違います。
准看護師であっても、経験を重ねながら勉強していけば、知識量も増え、実務上の臨床判断も可能になるでしょう。
そのような経験値を評価して、施設長は「彼女はベテランなので」と言っているのだと思います。
しかし、看護師と准看護師は責任範囲が違う資格として法律に定められているので、社会的な責任をとることができない場合があります。
たとえば、何かトラブルが起こったときです。
上記の「保健師助産師看護師法」(保助看法)に定められているのは、違反した場合に罰則のない内容です。
しかし、何かトラブルによって損害を受けた人が、損害賠償を求める民事裁判を起こした場合に、「准看護師が看護師の指示を受けずに行っていた」という違反が施設側にとって不利な証拠になります。
あってはならないことですが、たとえば准看護師が誤薬投与をした(その結果患者さんに不利益があった)という場合に、看護師は指示をしなければならない立場にあったのではないか、などの論点に発展する可能性はあるということです。
このようなケースを避けるために、「管理職と看護スタッフの責任範囲を教えていただけますか?」として、役割分担を明確にしておくことが大切です。
【管理職の役割】スタッフが元気で働くために
管理職の役割を、ここでは大きく2つに分けて説明したいと思います。
1. スタッフの行動の責任をとる役割
2. スタッフが元気に働くために環境を整える役割
かなり大まかですが、ざっくり分けるとこの2つです。
管理職の役割は組織によって異なり、それは職務規定に定められています。
組織によっては、スタッフの行動の責任をとるという役割もあります。
今回の場合は准看護師が管理職なので、ケアの面では法律上は指示系統が逆転しています。
そのため、どちらが責任を取る役割になるのかが曖昧で、スタッフとしては不安が残ります。
しかし、2つめの「スタッフが元気に働くために環境を整える役割」については、資格に関係なく担うことができます。
スタッフが元気に働くために、ヒト・モノ・カネを調整しながら環境を整える役割です。
そのためには、サービスを受ける対象(利用者)に実際にケアをするのは、看護師や介護職に任せるという役割分担が生じます。
2つめの役割を准看護師の上司に担ってもらいたいときには、管理職と看護スタッフの役割分担を明確にして、合意することが重要です。
【解決方法】役割分担を明確にすること
看護師と准看護師は教育内容が違います。
上記の「保助看法」で定められているように、准看護師は看護師の指示のもとに看護をします。
准看護師でも経験を重ねながら勉強をしていけば、知識量も多くなり、さらに臨床判断もできるかもしれません。
しかし、法律で決められている以上は、看護師と同じようにミスをした場合でも責任を取ることはできず、ともすれば、一緒に働いていた看護師の方が責任を負うことになるかもしれません。
そんなことを考えると、看護師が准看護師の部下として働くとき、自分を誰が守ってくれるのかと不安になるでしょう。
だからこそ、責任範囲をはっきりさせ、「看護の責任範囲」と「管理職の業務」の役割分担をすることが大切です。
互いの役割を認識し合うことで、本来の目的である「利用者へのケアの向上」に一緒に取り組むことができます。
ただ、もしあなたが「准看護師の上司」からは学ぶことがなく、「看護師の上司」でなければ学べないことがあると思うのだとしたら、勤務先を考え直さなくてはならないかもしれません。
でも、私自身は准看護師の勤勉さとその能力には感心することが多いと思っています。
資格が違っても、この上司から学びたい・一緒に働きたいと思える要素があるのなら、責任範囲を明確にすることで、トラブルは回避することができます。
優しく話しやすい上司ならなおさらです。
自分がめざす看護は何なのか、明確にしたうえで上司と話し合ってみてください。
(文)
看護の悩み請負人 サト
(イラスト)
香川尚子(ホームページ)
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