自殺率が山で高く、離島で低いワケ-自殺ゼロに「島ナース」が貢献?

9月10日は世界自殺予防デーです。

 

「自殺大国」とも呼ばれるほど自殺率の高い日本

 

傾斜のきつい山間部ほど自殺率が高く、反対に離島では自殺率が低いことがわかりました。

 

また、過去数十年間、自殺者を出していない離島では、医師がいなくても看護師が常駐し、行政と連携して活発に住民の支援体制を整備していることなどもわかりました。

 

自殺大国日本、自殺率は先進国中トップクラス

WHOによる自殺率の国際比較では、第1位がガイアナ、2位が韓国、3位がスリランカと続き、日本は第17位です(2015年)。2015年の国内での自殺者は2万4025人で、4年連続で3万人を下回りました。

 

しかし、先進国の中ではトップクラスの自殺率で、依然として「自殺大国」の汚名を晴らせずにいます。

 

 

山間部より離島で自殺が少ないワケとは?

居住地の傾斜と自殺の関係は、2016年度の「自殺対策白書」で明らかになりました。

 

傾斜度別で比べた自殺度では、傾斜が30度以上ある山間部では、全国平均より30%以上も自殺率が高いことがわかりました。

 

また自治体別では、自殺率が低い上位20の自治体のうち10を離島が占めていて、離島における自殺率の低さがはっきりと表れています。

 

離島も山間部も、過疎化や高齢化など生活環境の厳しさでは変わりはないはずです。

 

しかしこのように大きな差が出ることについて、白書では、住宅に適する土地が少なくて家同士が離れている山間部と比べて、住宅が密集している離島の方が、人々のつながりが強く、自殺防止に役立っていると分析しています。

 

 

若者の死因トップは「自殺」

日本における自殺者の傾向としてもう1つ特徴的なのは、若年層の自殺率の高さです。15~39歳の死亡原因の第1位は自殺です。

 

年齢別の自殺死亡率は40歳代以上で低下傾向にあるものの、若年層での自殺死亡率はあまり減っていません。

出典:自殺対策白書「3 年齢階級別の自殺者数の推移(pdf)」(厚生労働省)

 

 

先進7カ国中トップの異常事態

この状況は国際的にみても日本が特殊で、15~34歳の若年層で死因の第1位が自殺となっているのは、先進7か国中、日本のみです。

 

10万人当たりの自殺者率は、イタリアでは4.4人、イギリス6.7人、ドイツ7.6人、アメリカ12.1人に対して、日本では20.1人と、突出して多くなっています。

 

こうした中、政府は「改正自殺対策基本法」を施行するなど、新たに若者もターゲットにした総合的な自殺対策に取り組んでいます。

 

 

看護師の“観察眼”が自殺を防ぐ

自殺予防を考えた時、患者の身体・精神面を含めた小さな変化も見過ごさない観察力を持つ看護師の役割には大きな期待が持たれています。

 

例えば自殺白書では、過去40年にわたり自殺者の出なかった離島2つを調査し、地域性などの特徴を調べています。

 

 

無医村で、常駐看護師ら活躍

それによれば離島の1つでは診療所に医師は常駐していないものの、看護師が常駐し、村の保健福祉担当者やデイケア職員などと密に連携し、住民の支援体制を検討するケア会議を活発に開催していました。

 

もう1つの離島では、保健師が住民と医師をつなぐ役割を果たすなど、心の健康にも配慮した相談体制を敷いていたことがわかります。

 

これらの事例からも、患者の身近な医療者である看護師が積極的に関わることで、心や体の問題による自殺を防ぐことができるとわかります。

 

経済や心身の要因に左右される中高年の自殺と異なり、理由が多岐にわたりカテゴリーにわけられない若者の自殺――看護師の“患者を見つめる眼“こそが、自殺との瀬戸際にある人を救う最後の一手になるのかもしれません。

 

【ライター:横井 かずえ】

 

(参考)

厚生労働省2016年度自殺対策白書(厚生労働省)

地域と自殺の実態に関する分析-居住地の傾斜度を手掛かりに(抜粋)

 

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