医療保険と介護保険|いまさら聞けない!ナースの常識【9】

毎日の業務の中で触れているけど、『いまさら聞けない』ことってありませんか?

知ってるつもりで実は説明できない基礎知識や、ちょっと気になるけど調べるほどでもないな、なんてこと。

そんな看護師の素朴な疑問を、元看護師ライターがこっそり教えます。 


 

Vol.9 医療保険と介護保険

医療行為に対しては、基本的に診療報酬の点数が決められている。一方の介護には介護保険点数が決められている。病院や介護施設は、自己負担額の他にもこれらの保険からの収入で成り立っており、看護師の給料もここから出されている。しかし場合によっては保険請求ができず、病院や施設の損失となる場合もあり、本来であれば必要とされる医療サービスが十分に提供できないケースもある。適切な看護を提供するためにも、2つの保険制度については知っておきたい。

 

医療保険と介護保険の請求

【看護roo!】看護師専用Webマガジン ステキナース研究所 | いまさら聞けない!ナースの常識【9】医療保険と介護保険

図1 人の健康と保健・医療・福祉は、つねに流動的

 

医療では、その行為の対象者は患者というが、介護の場合は利用者という。

医療のサービスは(もちろん患者さん本人の承諾は必要だが)基本的に医師や看護師などから与えられるものだ。

ところが介護の場合は、どんなサービスを受けるかは、基本的に利用者が決める。ケアマネージャーがその人に合ったケアプランを立案はするが、実際にそのサービスを受けるかどうかは利用者次第だ。今月はこのサービス(や材料)をこの回数(数量)提供したのでこれだけ頂きます、という訳にはいかないのだ。

 

 

保険混在がサービス提供を制限することも

どちらにも保険請求ができないサービスを提供した場合、その費用は利用者に自己負担して頂くか、病院や施設が負担することになる。そのため、本来なら必要な医療サービスが制限されるケースもみられる。

 

例えば訪問看護の場合、医療保険が適用となる場合と介護保険が適用となる場合があり、適用される保険の違いによって訪問回数、滞在できる時間、訪問に対する料金に違いがある。

 

訪問回数を例に取ると、65歳以上、もしくは40歳以上で厚生労働省で決められている16の特定疾病の方の場合は、通常ケアマネージャーが作るケアプランに沿って訪問看護が提供され、介護保険が適用となり、訪問回数は要介護度による利用限度額の範囲になる(通常はその範囲内でケアプランが策定される)。

それ以外は医療保険が適用となり、末期がん、厚生労働大臣が定める疾病等でなければ、訪問は週3回が上限となる。

それ以上の回数で看護を提供すべきと思っても、看護師の判断で訪問することは難しく、自己負担して頂くか、事業所(医療機関)は報酬なしで訪問することになる。

 

 

それから、特養での点滴。実は点滴に使用するチューブ類の費用は、「特別養護老人ホーム等の療養の給付について」(厚生労働省医政局通知)によると、医療と介護のどちらの保険にも請求ができないと解釈されるため、施設が負担することになる。看護師自身が手を抜くのではなく、施設として出費を抑えるならこういう場面から、となる場合があるのが現実なのだ。

しかし、特養などで働く看護師は、自分の提供する看護がどちらの保険を使っているかをじっくり考えながらケアする余裕はない。逆になぜもう少し積極的な治療をしないのだろう?と疑問に思うこともあるかもしれないが、それはこういう事情があるためだ。

 

 

大まかにいえば「病気や怪我を治すため」が医療で、「より人間らしく生きるため」が介護なのだが、それでも矛盾が生じる場合もある。医療と介護が混在する施設などで働いているのなら、自分の提供する看護行為がどちらに該当するのか、一度医療事務さんかケアマネージャーさんに聞いてみよう。この辺の区別を一番分かっているのは、きっと彼らだ。

 

【岡部美由紀】

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