ナースの被災地支援【2】自分の得意を活かす!メディカルアロマセラピー

この連載では、さまざまな形で支援活動を行っているナースにお話を伺い、元精神科ナースのイラストレーター・松鳥むうがご紹介します。

 


 

今回のナース:三好里恵さん(メディカルアロマセラピスト)
平塚共済病院の混合病棟や透析センターに5年勤務。アロマに興味をもち、メディカルアロマセラピストを目指し退職。資格取得後、メディカルスパ西鎌倉と柳川クリニックにてメディカルアロマセラピスト&ナースとして勤務中。

看護師専用Webマガジン ステキナース研究所 | ナースの被災地支援【2】メディカルアロマセラピスト

 


メディカルアロマセラピストとして被災地へ

 

―メディカルアロマセラピスト資格を取得されたきっかけは?

 

もともと、病院勤務時代に、仕事で疲れてアロマトリートメント(アロママッサージのこと。以下、トリートメント)を受けた時に心身ともに癒された経験から、アロマを用いて患者さんの症状をさらに緩和・軽減できるのではと思ったのがきっかけです。
現在、アロマセラピーは医療行為に認められず自由診療のため、アロマセラピストの資格があっても、病院内で行うことはできませんが、今、勤務しているクリニックは自由診療に積極的で、メディカルスパも併設しています。なので、週2日はクリニックで主に消化器内科のナースとして、週3日はメディカルスパでメディカルアロマセラピストとして、両方の資格を活かして勤務しています。

 


―被災地へナースではなくメディカルアロマセラピストとして行かれたのは、なぜ?

 

震災後、「私に何ができるのか」と考えていた時、所属しているIFA(国際アロマセラピスト連盟)から声がかかり、メディカルアロマセラピストとして石巻市の避難所へボランティアに行く機会をいただけました。
訪れたのは8月下旬、実質活動できたのは2日間。その避難所は小学校で、震災から5ヶ月たっても、まだ、避難者も多く、食事も3食お弁当支給の状態。普段の生活とは程遠い環境でした。

 

看護師専用Webマガジン ステキナース研究所 | ナースの被災地支援【2】メディカルアロマセラピスト

避難所の小学校校庭には、自衛隊による「希望の湯」という名のお風呂が!

 


―具体的にはどのような活動を?

 

当初は、避難所のスタッフの疲れを取るためにお邪魔しました。トリートメントは1人につき60分。アロマセラピスト6人で訪れ、2日間で合計約40名の方に施術させていただきました。初日は事前案内がうまくいかず、来室される方も少数でしたが、翌日には避難されている方々にも人づてに伝わり、開始前から予約が殺到!20~80歳代の方々が来室され、男性も半数おられました。

 

元図工室に持参した折りたたみ式のマッサージベッド4台とパーテーションをセットし、タオルは全国のIFA会員から現物寄付されたものを使いました。現地で洗濯はできず、シーツも毎回交換ができないため、不織物を使用し汚れがつきにくくしたり、使い捨ての物を使うなど工夫しました。 

 

看護師専用Webマガジン ステキナース研究所 | ナースの被災地支援【2】メディカルアロマセラピスト

このベッドを避難所に運んでトリートメントを実施。

 

 

肌に触れてケアする大切さ

 

―ナースの基本としてもスキンシップは大切ですが、トリートメントはそれ以上のものがあるように思うのですが……

 

ナースの業務と少し異なるのは、アロマセラピストはトリートメントの間、クライアント(患者さん)から一瞬たりとも手を離しません。常にそばにいるという安心感を与えるために。そして、トリートメントに集中し1対1でその方の心身の状況を感じとります。なので、施術中に身体に触れるだけで、どの部位に疲労がたまり、どれだけのストレスがあるかなど、敏感に感じます。また、呼吸の深さの変化もわかるんです。

 

 

―ナースだと業務に追われ、1人の方にじっくり関わりたくても難しいですよね。触れただけでわかるというのは、やはり、メディカルアロマセラピストとしての経験が大きいのですね!

 

今回も、ひとりひとりに触れるたびに、心身共にどれだけギリギリの中で過ごしておられるのかがものすごく伝わってきて、涙が溢れそうでした。みなさん身体の筋肉はガチガチに固まり、夏なのに足腰を中心に身体が冷えきっておられたんです。


また、トリートメント前にストレス度チェック表に記載をしていただいたのですが、こちらの声かけで、あえてつらい心理面を聞き出すことはしない方針でした。

でも、トリートメントで人の手の温もりが伝わり、心がほころんだのか、施術後に、震災当時の恐怖体験を語る方がとても多かったです。顔だけ水面から出して体は水面下の状態で2日間過ごし救助されたなど、想像がつかない体験ばかり。ただただ受けとめました。

 

直接肌に触れてケアすることで、被災者の方の気持ちが私たちに伝わり、私たちの「少しでも元気になってもらいたい」という気持ちも被災者の方に伝わって、お互いに気持ちのキャッチボールができていたように思います。

歩行介助が必要で足をひきずって来られたおばあちゃんが、トリートメント後に「自分で歩くわ!」と自力歩行でスタスタと戻られたり、予約がいっぱいで60分のトリートメントができず怒っていた年配の方に、10分だけでもと部分トリートメントを行なうと、怒りがおさまり「ありがとう!」とにこやかに帰って行かれたり。

 

気持ちをこめて肌に触れることを、大切にしなければと改めて感じました。

 


―トリートメントは香りの良い精油を使われますが、この香りも効果的なのですか?

 

精油にはたくさんの効能があるんです。血液循環を良くして冷えを解消するもの、筋肉のこりをほぐすもの、浮腫を解消するもの、体の痛みを軽減するもの、悲しみやイライラなど精神面に効くものなど様々です。今回は、被災者の心身の状況を考え、あらかじめブレンドした精油を3種類持参し、トリートメント時にその被災者の方の症状にあった精油、その方の気に入られた香りの精油を使用しました。
また、精油は薬と関連するものも多いんです。たとえば、ジャーマンカモミールの精油にはアズレンという青色の成分が含まれ、抗炎症作用があります。これは、医療現場で使うアズノール軟膏の成分と同じなんです。

 

―え!?薬と同じ作用のものがあるんですね!ナースとしては興味津々です!

 


―他のアロマセラピストの方と違い、ナース資格があることが現地で役立った点は?

 

今回、透析をされている被災者の方がおられたのですが、この場合、シャントの入っている位置や、シャント部分に圧をかけずにトリートメントしないといけないことは、ナースですとわかります。なので、そういう方が来られた際は、私が担当していました。その点では、他のアロマセラピストの方たちにとってもナースがいるという安心感があったと思います。


看護師専用Webマガジン ステキナース研究所 | ナースの被災地支援【2】メディカルアロマセラピスト

 

 

大事なのはこれから継続するということ

 

―今後の被災地への関わりは?

 

被災者のストレスの大きさや、トリートメントをすることでほんのひと時でも笑顔が戻ることを実際に体験し、一時期だけではなく継続していくことが大切だと考えています。

心のケアに関しては、今後、ストレスの原因はどんどん変化していきます。その中で、自分たちにできることはなんだろうと、アロマセラピスト仲間と5年、10年と続けていけるボランティアの形を現在模索中です。大きなことでなくても、さりげなく近くにいることができる……そんな存在になれたらと。

そして、今回のボランティア活動で得たことが、もうひとつ。それは、この震災がなければ出会わなかった全国各地のアロマセラピスト仲間との出会いです。
被災者の方との絆だけではなく、多くの絆ができ、人の輪が広がりました。

 

看護師専用Webマガジン ステキナース研究所 | ナースの被災地支援【2】メディカルアロマセラピスト
4日間、行動をともにしたメンバー。みな、思いはひとつ!

 

 

―最後に、読者のナースへ一言を!

 

ナースとして被災地へ行く自信がないという方も、まず、瓦礫撤去のボランティアなどに、参加してみるという形も良いのではないでしょうか?
私も働きながらですので、長期間はなかなか行けません。なので、1日だけの瓦礫撤去でも被災者の力になるなら参加したいと思っています。

 

―ナースだからと気負わずに、自分のできることからが大切ですね!

 


 

【ナースの被災地支援 その他の記事】

Vol.1 認知症・孤独死防止のパンフ制作―松鳥むうさん(イラストレーター)

Vol.2 自分の得意を活かす!メディカルアロマセラピー―三好里恵さん(メディカルアロマセラピスト)

Vol.3 キャンナスで「自分でできる範囲」の継続支援―在間さとみさん(キャンナス)

 


 

【松鳥むう】元精神科ナース。 精神科病棟に勤務後、イラストレーターに転身。旅・看護・保育系の雑誌を中心に活躍中。

SNSシェア

コメント

0/100

掲示板でいま話題

他の話題を見る

アンケート受付中

他の本音アンケートを見る

今日の看護クイズ

本日の問題

◆看護技術の問題◆痛みを評価するスケールではないものはどれでしょうか?

  1. 数値評価スケール:NRS(Numerical Rating Scale)
  2. 聴覚的評価スケール:HAS(Hearing Analog Scale)
  3. カテゴリースケール:VRS(Verbal Rating Scale)
  4. フェイススケール:FPS(Faces Pain Scale)

9520人が挑戦!

解答してポイントをGET

ナースの給料明細

8972人の年収・手当公開中!

給料明細を検索