ナースのお悩み処方箋【7】インシデントが怖い!

「人はミスをするもの。むやみに怖がるのではなく、

想像力を使いながら、どういう姿勢で取り組むかが大事」

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ヒヤリハットインシデント、医療過誤、医療事故。
もううんざりするほど聞いてきた単語ですね。

看護師が関わるミスにはいろいろな種類のものがあって、患者さんの命に直結します。
だからこそ、看護学校でもクチをすっぱくして教官がいろいろと言ってきたと思いますし、現場に出ても、先輩看護師が強い口調で注意するのです。
ニュースでも、色々取り上げられていますしね。

でも、ちょっと気になるんです。
教官たちや先輩たちの努力のお陰か、若い未経験の看護師(当然、今までミスをしたことはない)が、必要以上にミスを恐れていることに。

人はミスをするもの、です。

間違えてはいけないのは、人はミスをするもの、『だから仕方がない』のではありません。
人はミスをするもの、『だから起こらないように細心の注意を払い、もし起こってしまった場合、どうするかを考え、万が一に備えよう』ということなのです。

新人から少し脱却したかなーという時期に、私はとある患者さんに、別の患者さんの抗生物質を点滴するというミスをしました。
幸い、患者さんの身には特に何事も起こりませんでした。その抗生物質は、以前、その患者さんにも点滴されていたものでしたから。
それでも、患者さんに申し訳ない思いでいっぱいでしたし、うっかりしていた自分が悔しくて悔しくて、本当に言葉が出ませんでした。

インシデントレポートも当然ながら書きました。
もしもその抗生物質が、患者さんにとってアレルギーのあるものだったら?
アナフィラキシーショックを起こしてしまったら?
考えれば考えるほど泣けてきて、なかなか書き進めなかったのを覚えています。

黙っていればわからないことではあったのですが、私は師長にお願いして、謝罪の場をもうけていただき、患者さんとご家族にお詫びをさせていただきました。
患者さん本人は笑って許してくれましたが、ご家族のあの目――犯罪者を見るような目は、未だに忘れることができません。
今でも、点滴のボトルネームとベッドネームはしつこいくらいに確認します。患者さん本人にも確認します。
あの件は、私にとってトラウマになってしまった模様です。

でも、あの一件がなかったら、こんなに真剣に点滴の確認をしていなかったかもしれません。
何度も確認する意味を身をもって知ったからこそ、今、当たり前にミスを防ぐ行動ができているのだと思います。

ミスが怖い、インシデントが怖いのは当たり前。
でも、怖がるあまりに、万が一起こってしまった後のことを想像できていなかったら、ほんの小さなミスが取り返しがつかなくなってしまうほどに大きくなることもあるかもしれません。

教官や先輩たちがくどいほど言うのも、起こってはいけないものだからです。
もし患者さんが亡くなってしまったら、人殺しになってしまいます。

病院によっては謝罪が許されないところもあります。
謝罪をできる・できないはともかく、自分が万が一のことを起こしてしまった時のことを考え、自分だったらどうするかをしっかり考えて、その上で、ミスはなるべくしないようにイメージトレーニングするべきだよなぁと、私は考えています。

 


 【岡田久美】 兵庫県出身。看護書籍の編集とゲームシナリオライターを本業に、フリーの看護師として活躍中。いつでもどこでもどんなところでも勤務できるオールマイティな看護師を目指し、これまでの勤務職場は病院、クリニックなど30以上。

著書に「看護師の流した涙」(ぶんか社)がある。

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