乳がん検診はマンモグラフィが主流に?日本人のメリット・デメリット

多くの人が受けている乳がん検診方法として、医師が目と手でしこりを探す「視触診」に代わり、X線による「マンモグラフィ」が最も多くなっていることがわかりました。

 

背景には厚生労働省のがん検診指針でマンモグラフィを推奨し、視触診については「推奨しない」との改定が行われたことなどがあります。

 

 

前回調査では「視触診」がトップ

東京都が実施する「都民の健康と医療に関する実態と意識」調査(2014年度)によれば、乳がん検診を受けたことがある人のうち最も多かった検査方法は「マンモグラフィ」(70.1%)で、2位の「視触診」(58.5%)より10%以上多くなっていました。

 

前回調査(2009年度)では「視触診」(63.2%)が1位で「マンモグラフィ」(58.0%)が2位だったものが、5年間で順位が入れ替わった格好です。

 

 

厚労省のがん検診指針が改定

背景には今年4月から実施される、厚生労働省による「がん検診実施のための指針」などがあります。新たな指針では、「視触診は推奨しない」ことが明記されました。

 

仮に実施する場合は、「乳房エックス線検査(マンモグラフィ)と併せて実施すること」となったのです。

 

 

早期発見のメリットが被ばくのリスクを上回る

指針のベースとなった、厚生労働省の「がん検診のあり方に関する検討会中間報告書」では、マンモグラフィの有用性について、次のように説明しています。

 

◆マンモグラフィ

 

放射線被ばくのリスクとベネフィットを考慮しても、検診開始年齢が40歳以上であれば、乳がんの予防ベネフィットが被ばくのリスクを上回る

 

・これまではマンモグラフィの検診体制が整っていないため、視触診との併用を推奨してきた。しかし、現在は99%の市町村でマンモグラフィ検診が実施され、体制は整備された

 

・マンモグラフィ単独による乳がん検診は、乳がんの死亡率減少効果があるというデータがある

 

 

マンモグラフィのデメリット、高濃度乳腺ってなに?

マンモグラフィについて、上記のようにメリットを説明しましたが、一方でデメリットもあります。マンモグラフィのデメリットは、「乳腺濃度の高い乳房では診断精度が低下する」ことです。

 

乳腺濃度が高いとはどのようなことでしょうか?

 

X線で撮影すると乳腺は白く写ります。そのため乳腺が濃密に張り巡らされている乳房の場合、乳房全体が白っぽく写ってしまい、石灰化する前の乳がんを見つけやすいというマンモグラフィのメリットが十分に発揮されないのです。

 

 

日本人に多い高濃度乳腺

さらに日本人は、欧米人より高濃度乳腺が多いとされていて、人によってはマンモグラフィに適さない乳房の人もいるのです。

 

ちなみにこれまで主流であった視触診については、医師の手技が標準化されていないことや早期発見に適さないなどとデメリットを説明します。

 

◆視触診

 

・医師の確保が困難であることから、視触診の手技に十分精通していない医師によって行われることがある

 

・早期発見の観点からは、しこりを発見する視触診は最適な検査方法ではない

 

・欧米諸国ではマンモグラフィに視触診を併用しない諸国が多い

 

・マンモグラフィによる検診体制が整った現状を考えると、視触診の必要性は薄れている

 

現状では第一選択肢として推奨されるのはマンモグラフィ検査といえます。ですが乳がんの検診方法については日々、新たな研究成果が発表されています。

 

 

海外でも意見が割れる乳がん検診方法

また、海外に目を向けると、スイス医療委員会やカナダ、米国医師会、米国予防医学作業部会など、マンモグラフィに懐疑的な意見もあります。

 

これに対して米国対がん協会及び米国放射線医学会は反対意見を表明するなど、乳がん検診方法については意見が割れているのが現状です。

 

 

マンモと超音波の併用で発見率1.5倍

例えば昨年11月には東北大学がマンモグラフィに超音波検査を組み合わせると、40代女性のがん発見率が従来の1.5倍に高まるとの研究報告を出しました。

 

これは超音波検査を併用することで、高濃度乳腺に弱いというマンモグラフィのデメリットをおぎなった検査方法ということです。

 

ちなみにマンモグラフィと超音波検査の併用については厚労省も次のように有用性を認めています。

 

◆超音波検査

 

・乳腺濃度が高い乳房では精度が下がるという、マンモグラフィの欠点を補うために、超音波検査を併用すると有用性が高いというデータがある

 

・そのため将来的な導入に向けて、死亡率減少効果の検証や検査方法の標準化など、引き続き検討する必要がある

 

 

乳がん検診率、OECD加盟国中最低レベル

女性のがん罹患率トップを占める乳がん。その割合は年々増えていて、12人に1人となっています。

 

しかし日本の検診率は様々な広報活動をしているにもかかわらず、未だOECD(経済協力開発機構)加盟30か国中最低レベル。検診受診率はアメリカの80%に対して日本は30%です。

 

早期発見で助かるがんであるということについて、さらなる啓発活動が必要です。

 

(参考)

マンモグラフィーは有益でない?乳がん検診での「過剰診断」問題とは

がん検診のあり方に関する検討会中間報告書(PDF)(厚生労働省)

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