「看護師資格さえあれば」と言うけれど|社会人から看護師へ【2】

社会人から看護師へ【2】

「看護師資格さえあれば」と言うけれど

数年前から、仕事の合間に科目等履修生として看護大学の講義を受けていました。

選択する科目の兼ね合いからか、同じように臨床で働きながら履修しているのは病院で看護管理者や臨床指導をしている、という人達が多く、いろいろと面白い話も聞けたのですが、ある日とある病院で師長をしている方がしみじみと

 

「やっぱり、社会人から看護師になろうって人は『それなり』の人なのよねえ…」

 

と言われていて、「それなり」ってどういうことなのかと思って聞いてみると、以前はちゃんとした会社に勤めた経験もあり、そこでのキャリアもあって他にいい条件の仕事もあるのにもかかわらず看護というキツイ仕事を選んだ、いわばやる気のある(悪く言えば物好きな)人が多かったのに、最近は「仕事がなくて」看護師になった、という人が増えている、社会人経験と言ってもたいがいはまともに正社員として働いたこともない、就活をしてもどこからも採用されなかったから、そういう人達が集まってくるので全体のレベルがずいぶん低くなった、というわけです。

 

また、社会人経験を経て看護師資格を取得すると「資格さえあれば」大丈夫だ、どこにでも就職できると安心してしまうせいか、以前なら次の仕事がなかなか見つからないので我慢して職場にしがみついていただろうに、少し思い通りにならないとまだまだ技術も知識も半人前で危なっかしいのにあっさり辞めて別のところに行ってしまう、そういうことを繰り返して未熟なまま経験年数だけ重ねている看護師もいて、結果的に看護の質を落としているのではないか、と。

 

 

おそらく不況と雇用状況の悪化から、仕事に就く、経済的基盤を確保するということが、この数年で切実に変化してきていることが影響しているのではないでしょうか。

 

看護を志す人が増えたのは、かつては(いい仕事とは言われながらも)他に選択肢があるならあえて選ぼうとはしないキツイ仕事の代表だったはずの看護の順位が(選択肢自体がなくなってきたため)相対的に上がってきたからだと思います。

 

 

実際に「レベルが低くなった」のか?

これは専門職、特にまず資格ありきの職業である医師や他のコメディカル業種に限らず、弁護士や会計士などの他の職種にもそういった「資格さえあれば」大丈夫だという考えでいる人は現役生であろうと社会人経験者であろうと関係なく、まんべんなく入り込んでいるものでしょうし、資格取得のために要求される学力水準が高ければ淘汰されて少なくなるかといえば、決してそうでもないとわたしは考えています。

 

ただ人目に付く属性が背景にあれば、個人のあり方まで目立ってしまうだけなのだと思います。それにいざ働きだしてみれば、資格だけではどうにもならないことにすぐ行き当たって愕然とするはずですから。

 

しかし「どこにでも働き口がある」がゴールになってしまっていて、自分が「どこでも働き手たりえる」職業人であろうとすることを忘れてしまっている人も現実の問題として、確かにいるわけです。

でもそれも社会人経験者だから現役だからは関係ないと思うのですが…

 

確かにいくらでも看護師の求人はあります。相当お互いの条件が食い違いでもしない限りまず採用されないということはないので、それで満足してしまうのもわからなくはありません。特に他での「職のなさ」を身をもって経験してきているのなら。

 

 

これからのことを考えると、この「資格さえあれば」は厳しくなってくると思います。

人口減少で単純に患者自体が少なくなるのでまず市場自体が縮小していきますし、これまでは勤務している場所に限定された人事評価だったラダースケールに代わり、看護協会がポータビリティのある個人の「技能評価」として標準化クリニカルラダーを開発しようとしていて、今後はどこへ行っても個人の技量がシビアに問われるようになっていくと思います。

 

資格を持っていることは単なる「最低レベル」の条件であり、たとえ同じ資格の同じ経験年数であっても、同じだけの待遇は保障されなくなるということです。

 

ここに以前からの懸案事項だった准看護師の廃止が現実化すれば、「それなり」の仕事は「それなり」の人に「それなり」の賃金で割り振られる、看護師内での格差ができることは避けられないでしょう。

 

とはいえその准看護師の廃止だって言われだしてから何年経っているのかということを考えると、ここ10年程度で何が変わるわけでもないと思っています。わたしは臨床で働けるのもあと5年程度だろうと見積もっているので、おそらく何かあるとしても個人的には逃げ切れるでしょう、だからといって知らん顔を決め込むわけにもいきません。

 

看護はずっと勉強だ、とはよく言われますし、わたしも看護学生のときにはよく言われましたが、本当に「なってからが正念場」だと思います、そしてこの正念場、いまだに終わりません。

 

 

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えぼり

社会人を経て、看護師になりました。中規模病院で働いたり世界を旅したり国際支援したりしているゆるふわナース15年目です。

 

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