台湾からの帰国は「楽勝!」ではなかった。エスコートナースの仕事録

「インターナショナルクリニック」の看護師で「エスコートナース」でもある山本ルミが、患者さまとのドタバタな日常をお届けします!



空飛ぶナースのお仕事は、飛行機に乗って別の国に移動したと思ったら、次の日にはもう帰国。ですので、東南アジアは時差が少ない分だけちょっと体が楽です。

 

今回の仕事は台湾にいる患者さんを日本へ連れて帰ること。台湾は飛行機で2~3時間程で行けるし、時差もたったの1時間です。患者さんは脚を骨折しましたが、手術が終わってリハビリを開始した状態で、退院して台湾に持っているマンションにいました。患者さん自身がドクターのため「楽勝!」と思っていましたが、これが間違いでした……

 

 

エスコートナースのお願い・機内に持込む荷物は少なく!

空港に着いたら毎回、よほど時間がない時を除いて、患者さんを事前訪問して明日の帰国に向けた確認をします。パスポートの確認、帰国のチケットの確認まではいつもスムーズ。ですが、スーツケースの数や機内に持ち込む荷物などを確認する段階になると、いろいろと問題が発生します。

 

お土産を買いすぎてスーツケースに入らず、2人旅なのにスーツケースは6個、なんてこともありますし、毎回「機内は"食事・映画・寝る・トイレに行く"くらいなので、できるだけ手荷物は少なく」と話すのですが、どうしてもバッグを2つ、3つと機内に持ち込みたい方もいます。

 

たいてい私が持ちますが、“右手に自分の荷物と医療用バッグ、背中に患者さんのバッグパック、左手に残りの患者さんのバッグ2個”という状況を想像していただけますでしょうか。そのうえ機内で使用する松葉杖などがあったりするともう大変!

 

一番重要な仕事・病院への提出物の確認

絶対に確認するのは診断書、レントゲンやCTなどの画像、退院処方(薬)など、帰国してから病院に届ける物です。


いつも驚かされるのは、自分の病名を知らない、何の薬を飲んでいるのかよくわからないという人がたくさんいること。医療用語を詳しく通訳できる人は少ないため、そういうトラブルが起こるのだと思います。私の説明で初めて病名や治療内容を知った方もいました。

 


 

準備している書類が最低限の物だった場合は、病院から今までの血液や検尿の結果ももらいます。しかし、「主治医が居ないので確認できない」と断られたり、もらえても退院のサマリーの内容が充分でなく、日本に到着してから病院の医師に「どんな抗生剤をどれくらい使用して治療したのか書かれて無いけどわかる?」と聞かれたり。

 

患者さんは知らない土地で、言葉も通じない状況でケガや病気をする訳です。おまけに医療の事となればチンプンカンプンでしょう。私がしっかりしなくては、と思うのですが、その国によって考え方ややり方が違うので難しいところです。

 

薬が足りない、血圧上がる、車が遅れる…

今回の患者さんは台湾の滞在が長引いて持ってきた薬が足りなくなり、似たような薬を処方されていました。が、血圧の薬が日本の処方に比べると量も少なく、内容も変更されていました。


海外に行くとまったく同じ薬はないのはよくある話です。クリニックでも外国人の患者さんが同じような薬を求めてよく外来受診していました。微妙に成分が違うため、身体に合わなかったり副作用が出たりということもあるので、気を付けなければいけません。

 


 
事前訪問で血圧はどうですか?と聞くと「ちょっと高いけど大丈夫」とのこと。当日は私がタクシーで患者さんのご自宅に伺い、寝台車に乗って空港に行くということになっていたので、そのスケジュールを確認して私はホテルに行きました。


次の日の朝、早めにホテルをチェックアウトしてお迎えのタクシーを待ったにも関わらず、約束の時間に来ない! 自分の会社に電話すると、散々待たされたあげく「手続きを忘れた!」との返事……。急いでホテルでタクシーを呼んでもらい、なんとかたどり着いて患者さんと寝台車に乗り込みました。

 

エスコートの帰りは患者用ベッドに倒れこむ

無事に空港に到着できたと思ったら、今度は患者さんの血圧が220/120mmHgに!
慌てて会社の担当医(ドイツ人)に指示をあおぎましたが、そのうちに患者さんが「今朝の血圧の薬を飲んだか覚えてないな~」と! とにかく指示通りに薬を飲ませ、飛行機に乗りました……

 

患者さんは私の心配をよそに、座るとすぐに食事のメニューを見て洋食か和食か迷い、おまけにビールまで。「この方本当に医者?」とちょっとあきれましたが、私の到着の遅れが血圧を上げた要因でもあるし、昨夜はよく眠れなかったらしいのでコップ1杯のビールで少しでも眠れればと思いました。


食後はよく寝ていて、起きた時の血圧も140/80mHgでひと安心です。患者さんの家に着いて測ったときも130/70 mmHgと正常。明日にでも内科と整形外科を受診してくださいね~と言ってお別れしました。

 

疲労困憊で、帰りの寝台車の中では患者用ベッドに倒れるように寝てしまいました。とにかく患者さんが無事に帰国できてよかったです。

 

ドタバタな旅のちょっとだけよかったこと

台湾ではずっと行ってみたかった屋台で、名物のカキのオムレツとマンゴーかき氷を食べました。次の日の体調を考えておなか一杯食べられず残念でしたが、この仕事は時間さえあればその土地のおいしいものが味わえるんです!

 

そんな機会は滅多にないですけどね……

 


【山本ルミ】看護師・エスコートナース
大分県出身。93年より六本木のインターナショナルクリニックに勤務。98年よりエスコートナースとしても活躍している。著書に『患者さまは外国人』(山本ルミ・原案 世鳥アスカ・漫画)など。

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