子どもを守る「乳児院」って何?子どもと深く関わり「育てる」看護

乳児院」と聞いて、どんな場所か想像がつくでしょうか?

私は乳児院で看護師として働いていましたが、正直、働くことになるまでは、その実情をあまり知りませんでした。

近年、子どもへの虐待や育児放棄など様々な問題がニュースで日々取り上げられており、児童養護施設についてもドラマの題材にされたり、乳児院の様子が伝えられたりなど注目を集めています。

 

乳児院で看護師として働いていた筆者が、乳児院の実態と看護師の仕事について3回にわたってご紹介します。

 

乳児院看護師の仕事【1】

子どもを守る「乳児院」って何?

子どもを守る「乳児院」って何?子どもと深く関わり「育てる」看護|乳児院看護師の仕事【1】

 

「家庭での養育が困難な乳幼児」が暮らす、その実態

乳児院とは、児童養護施設と同じく、何らかの要因で親との生活が困難である新生児から2歳くらいまでの乳幼児が生活をする施設です。

 

乳児院では、保育士、看護師、管理栄養士、医師などたくさんの職種がチームとなり連携を取りながら、乳児院で過ごしている子どもたちを育てています。

2歳以降はそれぞれ親元へ帰ったり、里親など新しい家庭に引き取られたり、児童養護施設へ入所することになります。

 

乳児院で過ごす子どもの背景には、親の病気や死亡、経済的理由、捨て子、虐待、私生児など家庭での養育が困難となる様々な理由があります。

 

児童養護施設等への入所理由(1)乳児院

 

保育園と同じ機能?いえ、違います。

乳児院では子どもを一時的に預かるという機能も持ち合わせていることから、「乳児院って保育園と同じでしょ?」という声がよく聞かれますが、保育園と乳児院は実は同じではありません。

 

ポイントとして大きな違いは、乳児院は乳児の「生活の場・家庭」となることです。

 

乳児院では、ただ乳幼児を保育するだけではなく、24時間体制で子ども達を「育てていく」ことになります。

親代わりになり、子どもが安心できる一番の場所「家庭」としての機能・役割を持つことが重要です。

 

もちろん、親の出産や病気、入院などで一時的に預かる機能もあるため、全ての子どもを24時間体制で長期的に育てていくというわけではないのですが、実際には乳児院を家庭として過ごしている子どもが大半という現実があります

 

親元に帰れる子どもは3割という現実

私が看護師として働いた乳児院では、0歳から2歳前までの幼い子どもたちが生活を送っていました。

一般的には、乳児院にいる大半の子どもが親元へ帰ると伝えられているのですが、実際のところ親元へ帰ることのできる子どもは全体の30~35%くらいというのが現状です。私が行った乳児院でも、親元へ帰ることができる子どもの方が少数でした。

 

また、乳児院への入所理由については、データと現実がくいちがっている一面もあります。

一昔前までは親の病気や死亡での入所が多かったのに対し、最近では、ニュースでも目にしないことはないと言うほどに取り上げられている「虐待」による入所数が、とても多くなっています。

 

データでは、全国平均で30%くらいの入所乳幼児が虐待を受けている(※)と言われていますが、実際には、約70%の子どもが虐待を受けている状態(または受けていた形跡が認められる状態)で保護されている悲しい現状もあります。

 

虐待を受けて乳児院へ保護された事案の中には、10カ所以上の骨折があった子や複数のやけどの跡があった子、平均体重以下の体重しかなくガリガリに痩せてしまっている子もいました。

 

※上記「第1-5-12図」を参照

一般的に虐待とされる「放任・怠だ」「虐待・酷使」「棄児」「養育拒否」を合計すると、乳児院では27.2%となります。

 

看護師の担う役割も大きい職場

障がいを持つ子がいることも珍しくなく、障がいがあることを受け入れられずに育児放棄や虐待に繋がり乳児院へ入所になるケースも多々あります。

現実はデータとは違い、親の出産や入院などでの一時的な入所というケースはあまりなく、ほとんどが乳児院で長期的に生活を送っている子どもたちでした。

 

子どもにとっては、関わるすべてのスタッフが自分を守り愛してくれる親代わり。

看護師ももちろんその役割の一端を担います。医療的な観点からの関わりだけではなく、乳児院は子どもを育てる一つの家庭であるということを十分に理解し関わっていくことが必要です。

 

 

(参考)

平成25年版 子ども・若者白書(全体版)―内閣府

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