「梅毒」は過去の病気じゃない!?ふたたび猛威を振るう現代の梅毒
“過去の病気”と思われている梅毒。実はふたたび増加していて、2013年には新規患者数が1,000人を超えました。背景には、特に男性の同性間の性行為による感染が増えていることがあるようです。
photo by Anna Leask(from flicler)
主に性行為によって感染する梅毒は、感染が進むと体中に腫瘍ができて最後は脳まで侵されて死に至る病です。
1947年にペニシリンが標準治療となり、多くの先進諸国で感染は下火になっていました。ところがここ数年、じわじわと患者数が増えているのです。
新規患者数1200件超、昨年の1.4倍
2013年の梅毒総報告数は1,226例であり、前年2012年の総報告数875例に対して1.4倍に増加しています。2014年はさらに増え、10月1日の時点で1,275例であることから年間ではさらに増加する見込みです。
患者数が増加する背景には、男性と性交をする男性(Men who have sex with men: MSM)を中心とした感染が広がっていることが挙げられます。
新規患者数の内訳をみると、男性患者が80.7%と多数を占めています。特に20、30代の男性の増加率が目立ちますが、男女ともに昨年より1.3~1.4倍に増えてもいます。
男性患者の感染経路45%が男性同士の性行為
男性患者の感染経路で8割を占めるのが性的接触。特に、男性同士の性行為によるものが45%と半数を占めていて、増加傾向にあります。一方で女性の性的接触では、異性間の性行為が9割を占めました。
梅毒が男性の同性愛者間での蔓延していることは、異性間での感染が多い、性器クラミジア感染や淋菌感染症とは対照的です。なお、同じく同性愛者の間で流行しているHIV感染症とは、疾患同士の報告体制が整っていないため、現在のところ関連は不明ということです。
早期に発見できれば根治が可能な梅毒ですが、発見が遅れれば神経梅毒などを発症して後遺症が残ることもあります。また妊娠可能な年齢の女性が梅毒に感染することで、胎児に感染する小児の先天梅毒が増える危険もあります。
梅毒がふたたび猛威を振るうのを防ぐためには、リスクの高い層への周知徹底、医療従事者による適切な情報提供が求められています。
(参考)
増加しつつある梅毒―感染症発生動向調査からみた梅毒の動向―(国立感染症研究所)
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