より近くで妊婦を支える1つの形|マタニティビクス認定インストラクター

マタニティビクスは妊娠中でも安心して楽しめる妊婦さんのためのトータルフィットネスだそうです。軽快なリズムに合わせたエクササイズは、大きなおなかでもできるようなプログラム。始める前にはメディカルチェックを行い、インストラクターが安全確認をしながら進めるため安心して取り組むことができます。

 

そのマタニティビクスを院内で取り入れ、通院の妊婦さんに勧めているのが、山形県立中央病院産婦人科。ここで、看護師・助産師として働く小野寺宏美さんに、お話を伺いました。

 

マタニティビクス認定インストラクター・小野寺宏美さんインタビュー

 

マタニティビクス認定インストラクター・小野寺宏美さん

 

安全な出産をサポートするため

「妊婦さんは、どうしても運動不足になりがちですが、体重管理や出産をスムーズにするためにも運動はやっておいたほうがいいと思います」と、小野寺さん。運動不足で筋肉が落ちることが、難産の原因の一つといわれていて、そのことからも、いかに運動が重要かということがうかがえます。

 

「妊婦さんの抱える悩みで多いのが浮腫です。軽い運動をすれば血液の流れもよくなって、浮腫の解消にもつながるんですよ」

 

現在、山形県立中央病院では、病棟とMFICUを含め37名の看護師がいて、マタニティビクスのインストラクターの資格を持つのは小野寺さんを含めて6名だそうです。


そもそも、命を看取ることも多い看護師という職業。そんな中で、新しい命の誕生に立ち会う機会を得たいとの思いから、小野寺さんは助産師の資格を取得し、産婦人科への配属を希望しました。

 

ナースと患者さんの距離が近いのが印象的だった

「大学時代にこの病院の産婦人科で実習を受けました。その時に、マタニティビクス卒業生の会に参加させていただいたのですが、とても雰囲気が良くて楽しかったんです。ナースと患者さんがまるでお友達のように親しく話しているのが印象的でした。それで、私もいつかインストラクターの資格を取って、妊婦さんをサポートできたらいいな、と思うようになりました」

 

その後、大学を卒業し、実習先であった山形県立中央病院の産婦人科に入職した小野寺さん。しばし、助産師・看護師として日常の業務に忙殺される中、資格を取得したのは、平成26年のことでした。

 

「実は、もうちょっと経験を積んでから…と思っていたんです。でも、資格を持っている先輩方が院内で異動になったり、退職したりしてしまって。早く取ったほうがいいのかなぁ…と、空気を読みました(笑)」

 

同僚と協力して助産師業務とインストラクターの業務を兼任

同僚と協力して助産師業務とインストラクターの業務を兼任

 

産前産後の体調管理に欠かせない運動

認定インストラクターになるには、日本マタニティフィットネス協会の定める12.5時間の講義講習を受け、さらに27時間のマタニティビクス実技講習会を受講。その後に筆記と実技の認定試験に合格する必要があります。

 

看護師資格がなくとも取得することはできますが、マタニティビクスを行うには妊婦の体調管理も不可欠なため、ステップアップのための資格として目指す産婦人科の看護師・助産師が多いそう。今では全国に約2000名の認定インストラクターがいて、その半数以上が医療系の資格保持者だそうです。

 

小野寺さんにマタニティビクスではどのような動きをするのか伺うと「飛んだり跳ねたりがないだけで、その動きはエアロビクスそのものです。スポーツジムなどで、エアロビクスをしたことがある方ならわかると思いますが、ボックス、グレイプヴァインなどのステップで踊ってもらうんです。お産が近くなると走ったりもしてもらいますよ」と笑顔で語ります。

 

エアロビクスをベースにつくられているマタニティビクスは、お産に向けての体力アップや妊娠中の体重コントロールだけでなく、腰痛や肩こり、便秘、足のつりといった妊娠中の不快な症状の軽減、そしてお産を想定した動きもあることから、出産に自信がもてるようになります。

 

「それにマタニティビクスをしておくと、出産後の体型を戻すのも早くなるんです」と、小野寺さん。どうやら、いいことづくめのようです。

 

「最近では、初産の年齢が上がってきていますよね。特に高齢出産の方は、妊娠中にしっかり動いておかないと、出産時はもちろん、出産後の体力回復の面でも大変になってしまうんです。ですので、もちろんご自身の体調をみながら、医師や看護師と相談の上でぜひ取り入れていただきたいです」

 

レッスンでは妊婦さんに負けないくらいにインストラクターも真剣 

レッスンでは妊婦さんに負けないくらいにインストラクターも真剣

 

マタニティビクスでもっと深く患者さんと繋がれる 

ところで、小野寺さんが資格を取得して、初めてのクラスが間もなく行われるそう。基本的には山形県立中央病院に通院する妊婦が対象で、1クラスは4名程度と少人数制。

 

「とてもワクワクしています。妊婦さん同士も仲良くなれますし、私たちナースや助産師とも打ち解けてもらえると思うんです。実際にマタニティビクスを受けて、いざ出産で入院したときに『すっかり仲良くなった看護師さんがいたから、安心して出産にのぞむことができた』とおっしゃっていた患者さんがいたんですね。

 

それを聞いて、マタニティビクスを通すことで、助産師・看護師としてより深く妊婦さんたちの精神的な支えになれるのかな、と思いました。退院してから1年、2年経ってからも“卒業生”の集まりが続いているのも、こうした精神的な結びつきの強さがあるから。ずっとつながっていけるのがとてもうれしいです」

 

最後に、小野寺さんは「私も女性ですし、いつか子どもを持つ日が来るかもしれません。その時にはマタニティビクスのクラスを受けて、楽しく出産にのぞみたいです」と笑顔をみせてくれました。


 やっぱり新生児と触れ合えるのが一番の幸せ!

やっぱり新生児と触れ合えるのが一番の幸せ!

 


小野寺 宏美(おのでら ひろみ)さん

助産師・マタニティビクス認定インストラクター

看護師・助産師の資格取得後、山形県立中央病院で助産師兼マタニティビクス認定インストラクターとして勤務中。

 

マタニティビクス認定インストラクターについて

一般社団法人日本マタニティフィットネス協会

 

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