インシデント連発で立ち直れない…どう考えたらいい?|バク先生のナースお悩み相談室【7】

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SNSで人気! 精神科専門医バク先生が、ナースのお悩みに答えます!

バク@精神科医

精神科専門医

 

今回のお悩み

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インシデントを立て続けに起こしてしまい、立ち直れません 。

 

看護師3年目なのですが、これまでインシデントらしいインシデントを起こしたことがなかったのに、 短期間で3件も連発してショックを受けています

 

今になってみれば「なんで気づけなかったの?」と自分でも思うようなミスばかりで、それだけに 「またやってしまうのでは…」と怖くて仕方ありません

 

どう乗り越えたらよいでしょうか?

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インシデントを起こした恐怖や落ち込みは、私たち医療者につきものですね。

そんな気持ちから立ち直る「視点や考えの持っていきかた」を知ってください。

 

まずは「アクシデントでなくて良かった」!

まず、 アクシデントでなくて良かったと思いましょう

 

何を言ってるんだと思われそうですが、事前に気づけた、防げたからインシデントなのです。そして「なんで気づけなかったの?」と思うものほどインシデントになりやすい という基本を知ってください。

 

例えば電子カルテ

 

すごく便利ですが、私たち医師が処方しようと思って薬の名前の欄に「あいう・・」と3文字ほど入れると、候補の薬名がズラーっと並びます。 「あいうえを」 という薬と 「あいうえお」 という薬が並んでいても、パッと見て気づきにくい状態です。 処方する医師の側が「あいうえを」と「あいうえお」という薬が存在していることを知っていたら、よく見て事故を事前に防ぐことができるのですが、知らなければウッカリ違う薬の処方をしてしまうかもしれません。

 

本来、ここで医療における事故防止の仕組みがいろいろ働きます。病名がなければエラーが出て処方ができないように電子カルテが対応していたり、規定量以上の処方ならエラーが出たり、内服方法が違っていればエラーが出たり。そのまますんなり処方ができないようにはなっています。ただそれらもすり抜けて、医者が強制的に処方を出したとしましょう。でも、薬剤師の先生が「あれ?」となって疑義照会をしてくれて間一髪……は、たくさんあるインシデントの一つです。

 

普通に「これはミスしそうだなぁ」と日頃から思っているものは、言われなくても各自がかなり神経を使うと思います。

 

だから質問者さんの「なんで?」というインシデ ントは起こるべくして起こったものなので、次回からどうしたらそのインシデントに なるべく早く気づけるか? という方向に考えを持っていくことが大切なんですよね。

 

「価値のあるインシデント」という考え方

確かにインシデント報告を書くのもすごく嫌なことだし、可能なら避けたいですよね。

 

でもその報告書を読んで他の人が「 あ、自分もこういうのやりそうだから気をつけよう」と思えれば、それは非常に価値のあるインシデント です。


インシデントは「してはダメなもの」ではなく、「した場合、どう再発を予防するかを考えるもの」 として考えてください。

 

人は必ずミスをします。ミスをしないで生きてこれた人は今後ミスをすると思っていた方が良いです。

 

どんな分野だって「なんでこんなことが??」というヒューマンエラーがたくさん生じます。そのたびに、どうしたらこのミスが今後生じないか?という議論をするための材料がインシデント報告です。

 

病棟にインシデント報告が回ってきたら絶対読むほうがいいのはそういう理由です。 ただ「へ〜、こんなことあったんだ」ではなく、「自分の立場や業務でも、こういうことが起こりかねないってことなんだろうなぁ。気をつけなきゃ」と自分に置き換えて報告は読みましょう。

 

こんなふうに考えてみよう

ちなみにインシデントを予防するために必要なことは何故それが起こったのか?とい う分析なのですが、SHELモデルというのがあるので各自で当てはめて今後の予防に役立てください。

 

SHELモデル

S:ソフトウェア(Software)
マニュアルなど。この手技や行動でどう動くとミスが出ないかというマニュアルは必須です。
H:ハードウェア(Hardware)
道具や機器など。「この機器は色や形、名前が似ているので取り扱い時に要注意」など。
E:環境(Environment)
ミス防止のために相互で助け合えるか、ミスが発覚した時に報告して理不尽に怒られないかなど。怒ってミスが消えるわけでもないので冷静に対応できる環境は大事です。
L:個人的要素(Liveware)
性格的に人に聞きにくい人もいると思います。そういう場合に聞かずとも実施前のWチェックが当たり前という環境であれば、ミスは減るのではないでしょうか。

 

今回は質問者さんの個人の話からかなり広範囲をターゲットにした話になってしまいましたが、結局のところは

 

「インシデントを起こしたことが悪いのではない」

 

「今まで起こしたことがなかったのは、ただそういう場面に巡り合わなかっただけ (誰でもインシデントは起こす、能力に関係ない)」

 

ということを知ってもらって、 こういうシチュエーションは自分は苦手っぽい(危ない)から、今後は似たような場面では人一倍チェックをしよう!という気持ちでお仕事をされたら良いのではないかと思います。

 

私ももちろんインシデントやったこと、ありますよ。

 

執筆

バク@精神科医

ADHDをはじめとした発達障害持ちの元文系。理転した後無事に医学部に合格。国家試験も何とかクリアしたものの、専攻した内科で適応障害になり休職し、精神科医として無事?復活。精神科でジェンダー外来を通じ自分の性自認が完全に無いことに気付く鈍感さ。そんなアセクシャルながらもご縁があって結婚できた、いろいろぼんやりしている精神科医。
雑誌連載や書籍を出したり、依頼があれば講演会をしたりしながら「生きてみるもんだなぁ」と日々感謝しながら今日も日本のどこかで働いている、はずです。

 

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