悪液質とは・・・
悪液質(あくえきしつ、cachexia、カヘキシー)とは、がんなどの慢性消耗性疾患によって生じる複合的な代謝異常の症候群である。
2011年に発表されたEuropean Palliative Care Research Collaborative(EPCRC)の「がん悪液質に対するガイドライン」では、「がん悪液質とは、従来の栄養サポートで改善することは困難で、進行性の機能障害をもたらし、(脂肪組織の減少の有無にかかわらず)著しい筋組織の減少を特徴とする複合的な代謝障害症候群である。病態生理学的には、経口摂取の減少と代謝異常による負の蛋白、エネルギーバランスを特徴とする」と定義されている。
典型的な症状としては食欲不振、体重減少、全身衰弱などを呈する。飢餓による低栄養とは異なり、単なる栄養補給では改善しない。メカニズムは不明な点も多いが、炎症性サイトカインの活性化などの関与が考えられており、全身の炎症反応による代謝異常により骨格筋の分解、脂質分解などの異化が亢進し、インスリン抵抗性が生じる。そのため、栄養投与を行っても栄養不良の改善は難しく予後は不良である。近年はこうした不可逆的な状態になる前の早期段階から栄養サポートを行うことが重要と考えられている。