代謝拮抗薬とは・・・
代謝拮抗薬(たいしゃきっこうやく、antimetabolite)とは、生物の代謝において代謝物質の利用を阻害・拮抗する物質である。代謝拮抗剤ともいう。
作用
代謝拮抗薬は、一般的に代謝物質と化学構造が類似しており、代謝過程に組み込まれるが正常な機能を果たさないため、代謝を阻害する。代謝拮抗薬の存在は、細胞の成長や分裂を妨げるため、細胞にとって有害となる。この作用を利用し、病原性微生物に対する抗菌薬や、悪性腫瘍(がん)細胞に対する抗悪性腫瘍薬として臨床で用いられている。
抗菌薬
抗菌薬としては、サルファ薬が代表的である。葉酸成生合成系に必要なパラアミノ安息香酸(PABA)に構造が似ており、競合阻害(酵素の活性部位に結合して基質の結合を阻害する)してジヒドロプロテイン酸の合成を妨げる。これにより、プリンとチミジンを新しく合成する機能が停止するため、病原性微生物のDNA合成とRNA合成を阻害し、菌の増殖を抑制して菌を減らすことができる。
抗悪性腫瘍薬
抗悪性腫瘍薬としては、プリン代謝拮抗薬のメルカプトリン、ピリミジン代謝拮抗薬のフルオロウラシル、葉酸代謝拮抗薬のメトトレキサートなどが挙げられる。
プリン・ピリミジン代謝拮抗薬はDNAを構成するプリンやピリミジンを代謝拮抗、葉酸代謝拮抗薬は葉酸を核酸合成に必須な活性型葉酸に還元させる酵素の働きを阻止することで、それぞれDNA生合成を阻害して細胞の成長や分裂を停止させる。これらの薬剤は正常細胞にも作用するが、正常細胞に比して悪性腫瘍細胞は分裂期間が長いため、正常細胞より悪性腫瘍細胞により多く効果を発揮する。