最終更新日 2017/07/18

人工股関節

人工股関節とは・・・

人工股関節(じんこうこかんせつ)とは金属、セラミック、ポリエチレンなどでできた股関節の総称である。

股関節において変形性関節症や関節リウマチによって関節軟骨が摩耗し、保存的な治療でも症状が改善しなくなった場合、人工の股関節に置き換える手術が選択される。人工股関節は骨盤の臼蓋を置換するカップと大腿骨(だいたいこつ)の骨頭(こっとう)から頚部を置換するステムからなる。

人工股関節手術での骨への固定方法は、骨セメントを使用する方法と、骨セメントを使用しない方法がある。また人工股関節を入れた場合、過度の負担を避ける、脱臼しやすい姿勢を避けるなど日常の動作で注意が必要である。

 

使用目的

痛みの軽減

変形性股関節症、関節リウマチ、大骸骨頭壊死、骨折、大腿骨寛骨臼(だいたいこつかんこつきゅう)インピンジメント(大腿骨と寛骨臼の衝突)が原因の痛みを軽減する。

 

歩行能力改善

疼痛を軽減することで歩行能力が改善する。また、下肢の左右の脚長差を人工関節で補正することも、歩行能力の改善に寄与する。

 

可動域制限の改善

人工股関節置換術により、変形に伴う可動域制限を改善することができる。

 

使用上の注意点

人工股関節に負担をかけないため、下記のような動作は極力避ける必要がある。
・頻繁に長い階段を昇り降りすること。
・頻繁に立ち上がること。
・足を組むこと。
・90°以上股関節を曲げる、伸ばす、回転させること。
・重い物(20kg以上)を持つこと。
・走る、ジャンプなどの激しい運動をすること。

 

上記のような動きをした際に一番気をつけなくてはならないことは、脱臼である。人工股関節は骨盤と大腿骨骨頭のかみ合わせが患者自身の股関節よりも浅いため、脱臼症状が起こりやすい。こうした不具合を防ぐためにも人工股関節においては、手術後も定期的に診断を受ける必要がある。定期検診の際に人工関節のゆるみやポリエチレンの摩耗などが認められた場合には再置換術を行う場合もある。

 

人工股関節手術による固定方法

 

骨セメントを使用する固定方法

骨セメントを使用して人工股関節を固定する場合は、人工股関節と骨を骨セメントで固定する。この方法のメリットとして主に以下のものがあげられる。
・術後早期から固定力が強く、術直後の固定性がよい。
・骨セメントに抗生剤を混ぜることで、感染の治療が可能である。
・変形の強い骨、骨欠損に利用しやすい。
・骨に直接打ち込まないため骨折のリスクが少ない。

 

骨セメントを使用しない固定方法

骨セメントを使用せず骨に人工股関節を固定する方法は、骨と人工股関節が直接接する。人工股関節表面には骨が浸潤しやすいよう特殊加工が施されている。手術後数週経過してから、骨と人工股関節が固定される。この方法のメリットとして主に以下のものがあげられる。
・骨との親和性が高くゆるみにくいため、長期に渡って使用できる。
・セメント使用に比べて手術が短時間である。
・手術が短時間のため、感染症のリスクが減る。

 

手術による合併症、副作用

人工股関節の手術により、以下のような合併症、副作用に注意が必要である。
・細菌感染(化膿)
・人工材料に対するアレルギー反応
・肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症
出血
・脱臼
・人工関節の摩耗
・坐骨神経障害
・大腿神経障害

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