脱腸とは・・・
脱腸(だっちょう)とは、腹腔内臓器が脱出することである。
脱腸の分類
脱腸は、腹腔内臓器が腹腔外へ脱出する外ヘルニア(鼠径ヘルニアや閉鎖孔ヘルニアなど)と、腹腔内の間隙にはまり込む内ヘルニア(横隔膜ヘルニアなど)などに分類される。患者数としては外ヘルニアが多く、その中でも鼠径ヘルニアが最も多い。
脱腸の構造
脱腸の構造は、基本的にヘルニア門、ヘルニア嚢、ヘルニア内容で形成される(図1)。
ヘルニア門:臓器が脱出する入り口(腹壁の間隙)
ヘルニア嚢:脱出した内容を包む袋(壁側腹膜)
ヘルニア内容:ヘルニア門から脱出した臓器や組織(小腸、大腸などの腸管や大網)
症状
軽度の脱腸は無症状のことが多い。しかし、脱腸により腸管の圧迫が起こり、消化管内容物(食物など)の通過障害(腸閉塞)が起こることで嘔気、嘔吐、腹痛等が出現したり、嵌頓して血流障害が発生し激痛を伴ったりすることもある。
検査・診断
外ヘルニアに関しては、外見で突出が確認できるため(閉鎖孔ヘルニアなど一部を除く)、患者自身が気づくことで診断に至ることが多い。超音波検査や腹部CTで腸管の脱出を確認することで確定診断に至る。
内ヘルニアに関しては、見た目で気づくことができないため、検診で偶発的に発見される場合や腹痛、嘔吐などの症状が出現した際に見つかることが多い。
治療法
脱腸の治療は、脱出した腸管を元に戻すことである。一部の外ヘルニア(鼠径ヘルニア、臍ヘルニアなど)では用手的に突出部位を圧迫することで元に戻ることもある。
元に戻った場合も再発防止のために待機的な手術が必要になる。用手的に整復困難で腸閉塞の症状が出現している場合や腸管虚血が出現している場合は、緊急手術の適応になる。
図1脱腸の構造