異型性とは・・・
異型性(いけいせい)とは、腫瘍細胞に対して用いられる用語で、正常細胞とは形態に違いがみられることを指す。その違いの程度、すなわち正常細胞からどれだけ形が異なっているかの度合いのことを異型度という。
異型性は、細胞レベルに違いがみられる細胞異型と、細胞の配列の乱れや組織の構築に違いがみられる構造異型とに分けて評価することがある。一般的には、両者を総合的に判定することが多い。
良性腫瘍は一般的に異型性が乏しく、異型度が低い。これに対し悪性腫瘍(癌や肉腫)は一般的に異型性が目立ち、異型度が高い。
【まぎらわしい「異形成」とは】
異型性とまぎらわしい用語に、「異形成」がある。異形成は、がんが発生する前段階で異型度の弱い病変が先行してみられる状態、すなわち「前がん病変」のことを指すことが多い。
「前がん病変」には、良性・悪性の区別が難しく、臨床上もすぐには進行しないような病変が含まれる。例として、子宮頚部に発生する異形成が挙げられる。
子宮頚部の異形成はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が主な原因として知られている。子宮頚部へのHPV感染は通常、性交渉により起こり、感染が生じても、高率にウイルスは自然排除されるが、まれにウイルス感染が持続することがある。この場合ウイルスゲノムが子宮頚部の細胞核に組み込まれ、徐々に、異形成、癌へと進行する経過をとることがある。異形成も初期の段階では、可逆的な病変(元の状態に戻る可能性のある病変)であるため、積極的な治療は行われず、経過観察されるが、程度が強い異形成の場合は腫瘍化しているため、治療の対象となる。